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バルのタパスを海鮮まんじゅうに閉じ込めた
2011年3月11日東日本大震災で太平洋側一帯は壊滅的な被害を受けました。その中の町に三陸海岸に面した釜石市があります。釜石市の漁業関係だけでも人的被害も大変ですが、産業の中核を成す漁業、養殖施設、加工工場だけでも650億円以上の被害が出ました。
復旧から復興の流れの中で、仕事のジャンルを超えて2014年より釜石全体で連携して食の新製品を開発するプラットフォーム構築を目指し、市内に拠点を持つ水産、製菓、酒造等の事業者が集まり、釜石六次化研究会を結成、「釜石オープンキッチンプロジェクト」が立ち上がりました。以前なら別業種の人々が一緒に集いこのような商品開発を行う事はあり得ませんが、このプロジェクトでは「復興応援 キリン絆プロジェクト」からの支援を受ける事が出来たのです。三陸の海産物を中華まんじゅうに仕立てるという発想の元に、地元の食材を活用するために、足掛け2年かけて試行錯誤しながら作ったそうです。
まず、海まんの皮の部分の発酵には津波で流されたがれきの間から咲いた市の花“はまゆり”の酵母を使用しているのです。海まんの具材は3種類で、まず、「泳ぐホタテのアヒージョ」ヤマキイチ商店の泳ぐホタテを釜石産の魚醤に漬け込み、釜石笛吹茸の椎茸、三陸アミエビ(ツノナシオキアミ)を使用。青森産のにんにくをたっぷり効かせた南欧っぽいイメージのスパイシーな中華まんです。この「泳ぐホタテ」は東京の一流フレンチレストランでも使われている評価の高い食材なのです。次に「三陸天然鮭のグラタン」三陸産の天然鮭を塩焼きにして、遠野産の玉ねぎ、人参、釜石笛吹茸の椎茸、三陸アミエビ(ツノナシオキアミ)を入れてクリーミーなグラタン風の仕上げ。
最後に「三陸極鮮炙り鯖のカレー」三陸で採れた新鮮な鯖を網焼きにして旨味を凝縮。青森産のにんにく、岩手遠野産の玉ねぎ、人参などの野菜に、三陸いりや水産のブイヤベーススープをいれて、欧風なカレー味。この3つは中華まんじゅうというよりは、まんじゅうの中にバルのタパスが詰まっている感じでビールや白ワインに合う味なのです。
このプロジェクトは市内の多くの生産者や企業が参加して作り上げたものですが、その中心になったのが、2013年4月に釜石市による外部人材を活用し地域づくりを行う「釜援隊」に参加する形で、東京から釜石に着任した中村博充さんで、違う業種6社の連携を担ったのです。そして、現在「釜石海まん」を発売するKAMAROQ株式会社の代表になったのです。ぐるなびippinで紹介する機会を考えていたのですが、昨年釜石市の食のコンテストで私は審査委員として「海まん」の試作品をはじめて食べたのですが、その時より完成度が格段と上がっていました。そして紹介出来るまでになった「釜石海まん」です。
この商品発表会には、釜石市長や、前復興大臣政務官の小泉進次郎衆議員も出席し、これからの復興のモデルケースにもなります。美味しい商品を食べてご支援お願いいたします。
※掲載情報は 2015/11/24 時点のものとなります。
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キュレーター情報
アートディレクター・食文化研究家
後藤晴彦(お手伝いハルコ)
後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。