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恵まれた自然と絶え間ない工夫が生む、一流店御用達の特別栽培米。
新米の季節がやってきました。日本人に生まれてよかったと思うことは多々ありますが、収穫したばかりの新米の炊きたてご飯を食べるときほど、その思いを強くする瞬間はありません。日本全国で美味しいお米は作られていますが、その中でも私が愛してやまないのが、山形県庄内地方で米作りに励む井上農場のお米です。
山形県のなかでも、日本海に向かって大きく開けた庄内平野は日本有数の米どころ。見渡す限りの田んぼがどこまでも続くこの土地で、代々家族で米作りに励んでいるのが井上さん一家です。美味しいお米作りに欠かせないのは、太陽と水と風と土ですが、庄内はそのすべてに恵まれていると代表の井上馨さんは言います。最上川や赤川がもたらした肥沃な土地、太陽がまんべんなく降り注ぐ開けた平野、月山の豊富な雪解け水に潤される大地、そして日本海からの風は一度山にあたり穏やかな風になって庄内平野を吹き渡ります。美味しいお米を作るための自然条件がすべて揃っているのが庄内平野なんですね。
でも、そうした恵まれた自然環境だけで井上さんの美味しいお米ができるわけではありません。井上さんは、「お米一粒一粒に誇りを持ち、お客様に幸せを感じていただくために米作りをしている」と話します。そのために井上さんのお米作りは、稲刈りが終わった直後、収穫の後に残る稲藁や籾殻を田んぼに鋤き込み次の年の堆肥にすることから始まります。化学肥料は一切使用せず、使うのは抗生物質などの薬剤を投与せずに育てた鶏の発酵鶏糞と焼酎粕に活性水を混ぜた有機肥料。そうやって冬の間に、有機質たっぷりの土を作り上げていきます。
田植えでは、苗と苗の間隔を充分にあけ、植え付け本数も一般的な田んぼより少なく植えます。こうすることで、稲の間の風通しがよくなり、病気になりにくい丈夫な稲になるのだそうです。ゆったりと植えられた稲には隅々まで太陽があたり、栄養たっぷりの土の養分を吸い上げてすくすくと育っていきます。化学農薬には頼らず、害虫忌避があると言われる椿油を散布したり、光合成を活発にするために海藻を煮出して作る海藻エキスやサトウキビの糖蜜を散布するなど、安心安全の追求や食味をあげるための独自の工夫もまた欠かせません。化学肥料や化学農薬を使えば簡単な作業も、手作りの有機のものを手作業で散布するのは大変な重労働。でも、安全で美味しいお米作りのためには決して妥協せず、常に工夫を重ねているのが井上農場なのです。
井上農場では、「コシヒカリ」、「つや姫」、「はえぬき」、「ひとめぼれ」、の4種類を作っています。それぞれに個性や特長があるけれど、私のおすすめはお米コンクールで何度も受賞したコシヒカリ。炊きあがった時のふくよかで豊かな香りが全然違います。山形県が10年の歳月をかけて改良したオリジナル米「つや姫」も、粒の大きさと濃い味わいがクセになります。ピカピカと輝き、ふっくらとしていて甘く、コクも旨味も最高な井上さんのお米。食べ過ぎ注意な美味しさです。
※掲載情報は 2015/11/19 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードジャーナリスト
斎藤理子
雑誌編集者を経てロンドンに6年半、ワシントンD.Cに5年半在住。その間、世界各国を食べ歩く。現在は国内外の生産者からシェフまで幅広く取材し、雑誌を中心に執筆。著書に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版)など。編著に『アル・ケッチァーノ』奥田政行シェフの連載をまとめた「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス)、「コッツゥオルズ」(ダイヤモンド社)。2011年英国政府観光庁メディアアワード受賞。