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富士山のおいしい水を使う由緒正しき酒蔵
水がおいしい富士河口湖町では、お酒も買いました。地元には「甲斐の開運」という銘酒を醸す井出醸造店という酒蔵があります。こちらはたいへん歴史ある家で、現ご当主は21代目と。醸造を始めたそもそもは江戸中期の醤油製造から。その後、江戸末期に清酒の醸造を始めた由。折しも皇女和宮様御輿入れの頃で、そのめでたさにちなんで付けた名が「開運」とのこと。水がおいしい土地でその歴史ならば、さぞ水自慢があるに違いないと、第21代井出與五右衞門さんに水を向けると、やはり「清酒の原料は米と水です」ときっぱり。酒のよさを云々するとき、とかく米の品種や精米歩合を話題にすることは多いもの、水のことを忘れてはいけませんというわけ。
清酒を醸す酒造店の清酒を使った梅酒を発見
それならば、さぞ由緒正しき井戸をお持ちだろうと尋ねると、これには意外なお答えが。現在も敷地内に古くから伝わる井戸はあるものの、現在はその水は使わず、別な水源から水を引いているとのこと。より標高の高い所に湧き出す水の水質のほうがさらに良好とわかったために、そちらに切り替えた。歴史、由緒も大切ながら、品質のためならば先祖が掘った井戸に蓋をすることも、また新しい歴史を創ることになるわけでしょう。そこで清酒を2種類ほど買い求めて来て、その両方ともが確かにおいしかったわけですが、ippinではせっかくだからちょっと目先の変わったものを紹介したいなとショップを見回していたら、見つけましたよ。清酒で作った梅酒です。
低アルコールで甘さも控え目の爽やかな梅酒
梅酒は清酒で漬ける方法もあるとは聞いていました。ただし、アルコール度数が低ければ腐敗させるなど失敗しやすいだけでなく、家庭で20度未満の酒類で果実酒を漬けると違法になってしまう。一方、メーカーとしても高価な清酒を梅酒に使うことに乗り気にはなりにくいので、清酒で漬けた梅酒にはなかなかお目にかかりません。もっとも、最近は梅酒用に20度以上の日本酒も販売されていますが、井出醸造店の梅酒は仕上がりのアルコールを7~8度と抑え、甘さもぐっと控え目なのが特徴。それは日本酒が苦手な人にも日本酒の風味を味わってもらいたくて造ったからと。清酒の風味と梅の爽やかさが一体となった、初めて出会う面白さを感じる味わいです。
※掲載情報は 2015/10/25 時点のものとなります。
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キュレーター情報
FoodWatchJapan 編集長
齋藤訓之
北海道函館市生まれ。1988年中央大学文学部卒業。レストランビジネスを志していたはずが、レストランビジネスに役立つ本を作る仕事にのめり込む。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、日経BPコンサルティングのブランド評価プロジェクト「ブランド・ジャパン」プロジェクト責任者、農業技術通信社「農業経営者」副編集長等を経て、フリーランスのライター・編集者として独立。2010年10月株式会社香雪社を設立し、農業・食品・外食にたずさわるプロ向けの情報サイト「Food Watch Japan」をスタート。著書に「入門 日本の七十二侯と旬の食」(洋泉社)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、「創発する営業」(共著、丸善出版)、「創発するマーケティング」(共著、日経BPコンサルティング)など。