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日本全国津々浦々、私が知っているだけでもおよそ650種類もの塩が生産されています。お仕事柄、地方の製塩所にお伺いすることも多いのですが、訪問先で自分が知らないさまざまなおいしいものに出会うのも、また地方出張の楽しみの一つです。今回は、宮崎県延岡市北浦にお伺いした時に出会った塩と、その塩を使ったおいしい塩スイーツをご紹介します。
北浦の海の恵み「月の塩」
宮崎県延岡市北浦は豊富な海産物が取れる漁師町であると同時に、「全国快水浴場百選の海の部特選」に九州で唯一選ばれた下阿蘇ビーチがある、美しい雄大な海に恵まれた場所です。
「月の塩」やその塩を使ったスイーツを販売する「道の駅北浦」は、その下阿蘇ビーチリゾート浜木綿村の中に位置しています。若き駅長畑野氏を中心に、スタッフが一丸となって北浦の素晴らしさを伝えるために、日々頑張っていらっしゃいます。
道の駅から海岸に向かって階段を下りていくと、目の前には美しい下阿蘇ビーチが広がり、そこに古民家のような雰囲気を持つ製塩所と塩資料館が立ち並んでいます。製塩所では、目の前の美しい海から取水した海水を小型の逆浸透膜で濃縮し、それをステンレス製の平釜でコトコトと煮込んで結晶させた「月の塩」を生産しています。
月はすべての生命にとってとても重要な存在であり、その月の引力によっておこる潮の満ち引きで育まれた海水からできた塩ということで「月の塩」と名付けられたこの塩は、きらきらと光る美しい純白の結晶をしています。
口に含むとまず強めのしょっぱさを感じ、ほんの少しの酸味のあと、しつこくないさらっとした甘味を感じ、雑味はなく、最後ははかなくすーっと消えていく、非常に繊細な味の塩です。食材の本来持っている旨味や甘味を最大限引き出す縁の下の力持ちとして、この海で取れる海産物に合わせるのに最適な塩と言えます。
夜、穏やかな海の上に月の光によって描かれた一本の月の光の道といったような、どこかはかない美しさのある、そんなイメージの塩です。
月の塩が引き出す上品な甘さの塩メレンゲ
この「北浦月の塩メレンゲ」にはココナッツ味とチョコレート味の2種類があり、どちらも優劣のつけがたいおいしさです。
塩メレンゲの製造は、延岡市内に2店舗を構えるフランス菓子のガトゥオーノのパティシエさんが行っています。
おいしさの秘密は3つ。
まず、塩の量。「北浦月の塩」ははっきりとしたしょっぱさがあるので、ほんの少しの量の違いが大きく味に影響します。塩が入っているのがわからないようでは塩スイーツとは言えず、かといって塩の味が立ちすぎては全体の味を壊してしまいます。そのため、幾度もの試作を繰り返し、現在の絶妙な配合量にたどりついたそうです。
そして次に砂糖。使う塩の種類をどれにするかで、実は食感にも大きく影響します。グラニュー糖であればザクザクとした食感になり、粉糖ならなめらかで堅めの食感になったりするため、食べやすく、口に含んだらすーっと溶けて消えるような食感にするために、種類や配合量に苦心したとのこと。
そして最後に焼き加減。「月の塩」の美しい純白のイメージを崩さないように、焼き色がつかず白いままで仕上げつつ、カリっとした食感や表面のなめらかさ、口にいれた時のふわっとした溶け具合などを実現するために、ギリギリの低温でじっくり乾燥焼きを行っています。
この3つのこだわりによって、「北浦月の塩メレンゲ」のおいしさが実現するに至りました。
北浦には、おいしい海産物と、素晴らしい塩と、おいしい塩スイーツがあります。
美しい下阿蘇ビーチでのレジャーも豊富に揃っていますので、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
※掲載情報は 2015/10/17 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ソルトコーディネーター
青山志穂
東京都出身、沖縄県在住。
大手食品メーカー勤務から一転、塩に魅せられて塩の道へ。塩の専門店で社内資格制度の立ち上げなどを行ったのち、2012年に(社)日本ソルトコーディネーター協会を立ち上げて独立。現在は、塩のプロフェッショナルであるソルトコーディネーターの育成のほか、全国を飛び回りながら、塩の基礎知識や使い方などに関する講座や講演、テレビやラジオ、雑誌などへの出演、塩売場のコーディネートなどを行いながら、塩の啓蒙活動に努めている。有名シェフとの塩をテーマにしたコラボレーションイベントや食品メーカーの商品企画も手掛ける。著書に「塩図鑑」(東京書籍)「琉球塩手帖」(ボーダーインク)「日本と世界の塩の図鑑」(あさ出版)など。