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宮城県栗原市の道の駅「自然薯の館」の看板商品
宮城県栗原市は栗駒山や、夏には極楽浄土と見まごうほどの蓮が咲き乱れる伊豆沼・内沼、世界谷地の湿原といった豊かな自然に恵まれた美しい場所だ。栗原ではこの豊かな自然環境の中で、山、大地、沼、川それぞれを活かした農水産物が生産されており、その土地には自然と共生しながら人々が受け継いできた知恵や伝統の技が息づいている。
宮城県栗原市の最北端に位置する花山地区に、道の駅「路田里はなやま」通称「自然薯の館」がある。栗原市が保有する唯一の道の駅がその名を冠する「自然薯」は、花山地区の特産品の1つ。天然物はおいそれと手が出せないほど値が張る自然薯だが、花山地区では自然薯の人工栽培に取り組んでおり、天然物の半値の1kg3,200円ほどで手に入る。栗原の豊かな自然環境の中で、低農薬、有機質肥料にこだわって栽培され、春と秋に収穫される花山の自然薯は、天然物と遜色ないできばえで10月下旬に旬を迎える秋ものがより味が良いという。
自然薯の館では併設の和食レストランで自然薯定食を味わう事ができるほか、地場産品を取り揃えたお土産コーナーでは70cmほどの自然薯がその太さに応じた値段で売られている。館長によると、太ければ良いという訳ではなく、輪ゴムの輪の太さほどのものがもっとも風味が良いらしい。折らずに持ち帰りたい場合は専用の紙製の化粧箱に入れて郵送してもらうこともできる。
ねばりが非常に強いことで知られる自然薯だが、館長から花山の自然薯のねばりはミキサーを壊すほどだと聞き、時間はかかるがあたり鉢で地道にあたることにした。風味の決め手の皮を付けたまま、たわしで軽く水洗いして水気を拭った自然薯を、まずはおろし金ですりおろし、すり鉢であたると、柔らかな土の香りとともに何とも言えない秋の芳香がたちのぼる。
美味しい自然薯料理を目指して自然薯をすりおろす際、ミキサーの崩壊とともに気をつけなくてはならないのが、素手ですりおろすときに伴う手のかゆみだ。むずがゆさをを感じた時は、すぐに食酢で洗うと良い。
そんな苦労を乗り越えて滑らかに仕立てた自然薯のおすすめの食べ方はなんといっても「とろろ飯」。出汁に醤油もいいが、冷ました味噌汁を少しずつ加えながら良くのばして温かい麦飯にかけ、ネギやもみ海苔をのせて食べるという地元ならではの食べ方が絶品だ。また、すりこぎですくっても垂れない餅のようなねばりのため、磯辺揚げにするときはつなぎいらず。すりおろした自然薯に醤油をひとたらしし、海苔で包んで中温で揚げる。自然薯の風味を存分に楽しめるおすすめの調理法で酒が進む。残った自然薯は切り口を乾かしてから通気性のある保存袋に包んで冷蔵庫へ。日持ちもするので様々な料理で長期間楽しめる。
古くから滋養強壮食品としても重宝されている自然薯。季節の変わり目でお疲れ気味のからだに染みる栗原の旬の味を、ぜひご賞味あれ。
※掲載情報は 2015/10/03 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家・フードコーディネーター
平尾由希
長崎県生まれ。お茶の水女子大学卒業。
NHK報道局在職中に飲食に関する様々な資格を取得。料理専門学校エコールエミーズのプロフェッショナルコースで学びディプロマを取得した後に独立し、 2013年からフリーランスの料理家・フードコーディネーターとして本格的 に食に関する活動を開始する。
現在は雑誌やWEBでのレシピ連載、CMやテレビドラマのフードコーディネート、 企業の料理コンテンツや商品開発などを手がける他、食に関するコラム執筆や、テレビ、ラジオ、各種イべントなどへの出演も行う。また2013年より「食を通じた地域おこし」をテーマに総務省自治行政局過疎対策室の過疎地域自立活性化優良事例表彰委員会の委員を務め、地域の食のブランディングにも携わっている。