記事詳細
紹介している商品
洗練の味わい、こだわりのどぶろくに田んぼの風景が見える
可愛らしいトンボの絵のラベルに澄み切ったブルーのボトル。キャップを回すとシュワシュワ〜という音とともに液面が上がります。もしや吹き出してしまうのでは?とドキドキします。注意深くグラスに注ぐと、驚くほど伸びやかな大小の泡が次から次へと現れます。飲んでみます。甘みがほのかに残る米粒のプツプツとした舌触りが楽しく、とても繊細な味わい。コクがありながらさっぱりした優しい酸と、米とは思えないフルーティーなアロマがひろがります。
つい最近まで、私の飲み物のチョイスには入っていなかった「どぶろく」ですが、このどぶろくに出会ってから、そして作り手である佐々木要太郎さんにお会いしてから、すっかりどぶろくファンになってしまいました。
佐々木要太郎さんは岩手県遠野にある「民宿とおの」の三代目主人。10年以上前に岩手県の原産品種である「遠野一号」という消滅しかけていた、地元のお米の栽培に着手しました。やっと手に入ったわずか5gの種籾(たねもみ)から毎年自家採種して徐々に作付面積を広げ、自ら収穫したこのお米を原料として宿に隣接する小さな蔵で丁寧にこのどぶろくを仕込んでいます。
どぶろくと聞くと農家が自家消費用に趣味で作っている素朴な酒、はたまた密造酒?というイメージがあるかもしれません。実は岩手県遠野市は、2003年に全国に先駆け「どぶろく特区」に指定された地域なのです。どぶろく特区が増えてから、デパートや酒屋さんでも最近どぶろくが並ぶようになってきましたね。
佐々木さんのどぶろくに私が感じるのは、酵母の生命力とエレガンスです。丁寧に育てた「遠野一号」を吟醸酒並みに精米し、酵母にも吟醸酵母を使用。清潔な環境で品質管理をし、火入れはしないとのこと。クール便で届きます。その洗練されたフレッシュで軽やかな味わいは、食前酒にもぴったりですが、和洋中選ばず食中酒としておすすめです。中でも私が驚いたのはタイのグリーンカレーと合わせた時。どぶろくのミルキーな味わいと米の甘み、スパイシーなカレーとのマッチングは絶妙です。まさに大人のラッシー!写真のように炭酸水で割って気軽に楽しむこともできますし、お燗にしてもおいしいです。
さらにこのどぶろくの妹のような存在、どぶろくに果汁を加えた“どぶきゅ〜る”もおすすめさせてください。りんご、白ぶどう、赤ぶどうの3種があり、フルーツやアイスクリームの上からシュワ〜とふりかけてデザートにしても美味しいです。風に冬の寒さを感じ始める今の時期は早く家に帰って、りんごの“どぶきゅ〜る”にシナモンをふりかけた“アップル&シナモン”風味でくつろぎたいです。
※掲載情報は 2015/10/11 時点のものとなります。
- 2
キュレーター情報
フードプランナー&フランス語通訳
勅使河原加奈子
東京都生まれ。学習院大学文学部フランス文学科卒。ワイン専門商社勤務後、フランス人シェフ招聘ビジネスに7年半関わり、2000年フードデザイン&イベントプランニングCREMA設立。フランス人シェフの招聘を続ける傍ら、ハチミツ専門店のMD企画、ホテル・レストランのオープン・リニューアルのアドバイス、洋菓子専門誌編集、フランスわさび栽培コーディネート、百貨店内フードショップMD企画、仏レストランブランドの商品開発のアドバイス、洋包丁輸出コーディネートなどを経て、食イベントの企画制作、レストランのHP制作、食の撮影コーディネート、イベントのPRコーディネートなど食全般の仕事に携わる。同時に料理・ワイン・製菓・製パンに特化したフランス語専門通訳者および翻訳家(翻訳本「ジョエル・ロブションのすべて」)としても活動。2011年秋以降、地方創生、地方食材のリサーチとフランス人シェフへの紹介、国内外での燗酒の普及にも携わる。