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戦後まもない頃から愛され続ける素朴な味
外国から来た食べ物のネーミングを名前から想像してみると、実際のものとは全く違う場合があります。例えば、最近はあまり聞かなくなった「ウインナーコーヒー」。僕の子供の頃は、コーヒーの上にホイップクリームを浮かべた「ウインナーコーヒー」が流行しました。実際にあった話ですが、流行り始めてまだ間もない頃、お客さんに「ウインナーコーヒー」を注文されて、それを知らない喫茶店の店主は、みじん切りにして炒めた「ウインナー」をコーヒーに入れて出したというのです。注文したお客さんも「ウインナーコーヒー」を飲んだことがなかったので、こんなものかと思い「ウインナー入りコーヒー」を飲んでいったという笑い話がありました。
福岡の久留米にも、同じように名前から想像して生まれた食べ物があります。大正15年に創業した久留米の地元のパン屋さん、キムラヤの作る「ホットドッグ」。このキムラヤの「ホットドッグ」が生まれたのは、第二次世界大戦が終わった3年後の1948年です。創業者が、アメリカには「ホットドッグ」という食べ物があるということを聞いて作ってみたのです。「ホット」は「暑い」、「ドッグ」は「犬」、そこから「暑がりの犬」を連想したらしいのです。「暑がりの犬」というのは、暑くて口から舌を出しています。そこから、プレスハムを犬の舌に見立ててパンに挟んだ「ホットドッグ」が、生まれました。
久留米で「ホットドッグ」と言えば、ウインナーの入ったものではなく、プレスハムの挟まったキムラヤの「ホットドッグ」を思いつくほど、地元の人々に慣れ親しまれています。まるでキャンディーの包み紙のように端を捻って包まれ、グリーンとオレンジのストライプのパッケージは、初めて見ても懐かしく思えてしまうようなレトロなデザインです。
パン自体は、柔らかなロールパンを長くしたような形で、さっぱりとした素朴な味です。「ホットドッグ」は、赤いプレスハムと一緒に、マスタードの入ったコールスローがたっぷりと挟まっています。コールスローのしっとり感がパンの内側に上手に伝わることにより、パンの内側にも適度なしっとり感を与えています。食べてみると、レトロなパッケージデザインのせいか、初めて食べてもなんだか昔を思い出してしまうような懐かしい味がして、ノスタルジックな気分にさせてくれます。
ちなみに本場のアメリカの「ホットドッグ」の名前の由来は、見た目がダックスフンドに似ていることから、野球場で「レッド・ホット・ダックスフンド・ソーセージ」と呼ばれて販売されていたらしいです。それから呼び名が縮まって「ホットドッグ」と呼ばれるようになったのです。さすがに戦後まもない時期に、「ホットドッグ」の「ドッグ」が、「ダックスフンド」だなんて誰も思いつくはずもないです。久留米に行ったら、小腹が空いた時のおやつに、キムラヤの「ホットドッグ」をぜひ食べてみてはいかがでしょうか?
※こちらの情報は掲載時のものになります。現在は閉店しております。
※掲載情報は 2015/07/22 時点のものとなります。
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キュレーター情報
荒岡眼鏡の三代目 眼鏡店ブリンク店主
荒岡俊行
1971年生まれ。東京・御徒町出身。1940年から続く「荒岡眼鏡」の三代目。
父方も母方も代々眼鏡屋という奇遇な環境に生まれ育ち、自身も眼鏡の道へ。
ニューヨークでの修業を経て、2001年に外苑前にアイウエアショップ「blinc(ブリンク)」、2008年には表参道に「blinc vase(ブリンク・ベース」をオープンさせる。
「眼鏡の未来を熱くする。」をミッションに掲げ、眼鏡をカルチャーの1つとして多くの方々に親しんでいただけるよう、眼鏡の面白さや楽しさを日々探求しています。
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ブリンク・ベース
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