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福神漬は大都市と近代が生んだ新しい日本の味だった
福神漬なるものが出来たのは明治に入ってからとか。幕末や明治になると、都市化だとか、兵隊さんを集めるとかがあったために、漬物も含めていろいろな食品を工業的に作るようになった。そうすると「野菜の切れっ端が大量に出ちゃうけれどもこれどうする?」という問題も起こってきて、じゃあ集めて醤油漬にしたらいいじゃないかと、そんななかで小間切れ野菜7種類の福神漬も考案されたんではないか。そう考えると、福神漬とはいかにも大都市東京生まれで近代の香りもする、そういう食べ物のようです。だから、その名品の一つに「日本橋漬」という堂々たる名前が付いていることも、妙に納得がいってしまう。というのは、あくまで私の想像ですが。
色・味ともにこれぞ醤油漬。缶詰タイプは東京土産でも人気
この日本橋漬、発売は大正2(1913)年。ラベルの商品名の横に「福神漬」とありますが、原材料の野菜は、大根、なす、なた豆、しその葉、割干大根、しその実の6品。大根と割干大根は大根じゃないかと言えば5品。カレーのおともでおなじみの福神漬と比べるとれんこんとかきゅうりとかが入っていない感じか。でも、最大の違いは色と味付け。まず赤くなくて茶色。味は甘さをほとんど感じさせないほど抑えた大人味。販売者の国分は今日では大食品問屋ですが、発祥は醤油屋さん。さすがその国分の醤油漬かと思わせます。この味なので、カレーによりも白いご飯に。お茶漬けにもよさそう。缶詰バージョンもあって、東京土産として秘かに人気だそうです。
※掲載情報は 2015/06/21 時点のものとなります。
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キュレーター情報
FoodWatchJapan 編集長
齋藤訓之
北海道函館市生まれ。1988年中央大学文学部卒業。レストランビジネスを志していたはずが、レストランビジネスに役立つ本を作る仕事にのめり込む。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、日経BPコンサルティングのブランド評価プロジェクト「ブランド・ジャパン」プロジェクト責任者、農業技術通信社「農業経営者」副編集長等を経て、フリーランスのライター・編集者として独立。2010年10月株式会社香雪社を設立し、農業・食品・外食にたずさわるプロ向けの情報サイト「Food Watch Japan」をスタート。著書に「入門 日本の七十二侯と旬の食」(洋泉社)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、「創発する営業」(共著、丸善出版)、「創発するマーケティング」(共著、日経BPコンサルティング)など。