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その名は「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY」
斬新なネーミングの通り、世の中の好みに合わせるのではなく、自分たちが造ってみたい、飲んでみたい!というコンセプトで不定期に発売されるビール。造っているのは、「よなよなエール」や「水曜日のネコ」など、ネーミングの面白さとおいしさで人気のヤッホーブルーイングです。既存のビアスタイルやレシピにとらわれない自由な発想と新しい和の素材を使って造るというこのシリーズの第4弾として今月発売されたビールは、日本の柑橘である「柚子」を使った爽快なセッションエール(※)。ライトブルーに柚子をイメージしたイエローがアクセントのさわやかなパッケージデザイン。そのビールの誕生は試行錯誤の連続だったそうです。
古くから日本人に親しまれてきた柚子の瑞々しい香り。それをビールで再現しようとしたものの、果汁を使うだけでは何かが物足りない、柚子果皮を入れると鮮烈な香りとほろ苦さが加わるものの、量を増やすと果皮由来の“エグみ”が出てしまい、ビールがまずくなってしまう……。
解決のヒントは梅酒づくり。氷砂糖と梅を一緒に漬け込むことで浸透圧の違いで梅のエキスを引き出すその技法です。でも、同じように砂糖を使うのはかなりの分量が必要になることと、糖分は最終的にアルコール分となるため、ビールがドライな仕上がりになってしまいます。そこで試したのが、砂糖のおよそ1/6で同じ浸透圧を得られる“塩”でした。
(※)セッションエール:伝統的なビアスタイルに該当するが、そのアルコール度数だけが基準より低く、ドリンカビリティなビールをセッション・ビールと呼ぶ。そのエールタイプビール。(日本地ビール協会「ビアスタイル・ガイドライン1208」参照)
“あら塩”をつかったビールは、和菓子との相性も抜群!
柚子と塩をミルフィール状にして数日間つけこむことで、柚子のエキスをしっかりと引き出すことに成功し、それを使うことで柚子の特徴を存分に感じるビールの仕上がりに。試しに、同量の柚子そのままと塩を入れたビールも造ってみましたが、明らかに前者が爽やかで芳しい柚子の香が立ち、およそ2年の歳月をかけ、ようやく目指すビールができ上がりました。
塩は、にがり成分を含むあら塩。その塩に引き出された高知県産の柚子果皮のエキスと非加熱・非ペクチン処理による柚子果汁のフレッシュなアロマで爽快感あふれる仕上りとなったビールは、鶏を使った料理や鮮魚のカルパッチョなどの料理との相性はもちろん、和菓子、特に柏餅との相性も抜群です!スイカに塩をふる日本の夏のお楽しみのように、適度な塩味がアクセントとなって甘さに深みを与え、実に絶妙な味わいを楽しめます。
塩を使ったビールは、ゴーゼビールという塩を使いコリアンダーで味付けをしたドイツの伝統的なビールがありますが、それ以外では世界でもほとんど例がありません。
アルコール度数は4%。香り高い柚子の爽やかなほろ苦さとふんわりとした塩のうまみのある限定醸造のビールを、ぜひ味わってみてください。
※掲載情報は 2015/05/19 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ビアジャーナリスト/パンコーディネーター
宮原佐研子
日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーター、日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリストとして日本ビアジャーナリスト協会HP、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、世界22カ国158本のビールを紹介するe-MOOK『ビールがわかる本』(宝島社)、ビアエンタテインメントムック誌『ビアびより』(KADOKAWA)他執筆。『ビール王国』では、「コンビニ限定うんまいビア ペア」で、コンビニエンスストアで買えるビールとパンのペアリングを連載。日本パンコーディネーター協会主催の講座「ワインよりおすすめ?パンとビールのおいしい関係」でパンとビールのペアリング体験講座も実施。