【クローズアップ】1人のパン好きとして、情報の集まる場所をつくる。青木たかこ

【クローズアップ】1人のパン好きとして、情報の集まる場所をつくる。青木たかこ

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「パンスタ」編集長 青木たかこさん

国内最大のパン専門コミュニティーサイト「パンスタ」の編集長を務める青木たかこさん。パンスタは、「みんなで作るパンとパン屋さんのガイド」をコンセプトに、全国15,000店ものパン店情報が登録され、パン好きなユーザーによる情報発信が日々活発に行われています。また、自ら主宰する「マニアックデパン」という女子会では、インターネットの枠を超えて、パン好きな女性たちがリアルに集まってパンを楽しむ活動を続けています。一男一女の母でもある青木さんに、パンにまつわる懐かしい思い出や、最新のパン事情なども教えていただきました。

子どもの頃の夏休みの思い出に登場する「パン」

【クローズアップ】1人のパン好きとして、情報の集まる場所をつくる。青木たかこ

Q: 青木さんは、いつ頃からパン好きになったのですか?

青木さん:パンに限らず、食べること全般が好きなので、いつ頃からと聞かれてもはっきりはわからないのです。ただ、パンにまつわる最初の思い出は子供の頃にさかのぼります。我が家では毎年夏休みになると家族で日光へ行って過ごす習慣がありました。当時はコンビニやレストランなどお店がほとんどなくて、夏休みの1ヶ月間、お昼寝ぐらいしかすることがなくて(笑)。そんな中でも、近くにある「日光金谷ホテル」のベーカリーにパンを買いに行く母の姿が、いつも楽しそうだったんです。楽しそうにしている母と一緒に行く私たちも楽しくて。それがパンにまつわる最初の楽しい思い出です。

中学生になると、購買でパンを買うようになりました。私の通っていた学校では、購買で軽井沢の老舗「ブランジュ浅野屋」のパンが買えたんです。あの頃は学校中みんながパン好きでしたね。もちろん私もその一人でした。今とは随分ラインナップが違いますが、最初に浮かぶのは当時あった「ノルディアン」という名前のパンですね。下がブリオッシュで上がクッキー生地になっている、お洒落なメロンパンという感じのパンです。他にも「スイートポテトパイ」や、クロワッサンの中にチョコレートが入った「チョコクロ」などもお気に入りでした。普段はお弁当なんですけど「今日はパンにさせてください」と母にお願いして、週に1〜2回パンの日を作ってもらっていました。

今は、新しいパンをどんどん食べたいのと同時に、昔からのパンも好きです。近所にある老舗のパン屋さん「ペリカン」のパンは今でも買いに行きますし。でもやっぱり「新しいパン屋ができた」と聞くと、じっとしていられません。

パン好きな人たちが気軽に情報交換できる場を作りたい

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Q:青木さんが「パンスタ」を始めたきっかけを教えてください。

青木さん:「パンスタ」を立ち上げたのは2010年のことです。当時、パン好きの方たちのブログを見たりしていました。また同時期に自分でもブログを始めてみました。その両方とも意外と面倒で続かなかったんです。パン好きの人のブログの情報を受け取るために、そのブログを見に行かなくちゃいけないけれど、そうしなくてももうちょっとフラットな中で情報交換できる場があったらいいな、と思ったのが最初です。どちらかというと、自分が情報を「受信したい」という気持ちの方が強くて、ポータルサイトやコミュニティーサイトのようなものがあれば、ユーザー発信の情報が集まり、便利かなと思いました。私は思い立ったらすぐ行動に出るタイプなので、昔の会社仲間に話したところ、協力してくれることになりました。

「パンスタ」には、パン好きが集まるコミュニティーサイトの一面と、パン情報を発信するWebマガジンの一面とがあります。ユーザーのみなさんが投稿しやすい環境を整えつつ、Webマガジンとしての情報を充実させるためにパン屋さんを取材したり、ネットの世界ではなくて実際に会って情報交換ができるイベントの企画なども行っています。2015年4月現在で「パンスタ」に登録されているお店は、約1万5000店となっています。イベントの参加者は、最初の頃は大多数が30〜40代の女性だったのですが、年齢層も幅広くなっていますね。

Q:「パンスタ」を始めてから、生活にどのような変化がありましたか?

青木さん:それまで以上にパンを買うようになりました。1回で何千円分ものパンを買うので、食べきれず冷凍庫に入れたパンがどんどん溜まっていくようになって……。じゃあみんなで食べようと考えて、「一緒に食べてください」と声をかけて始まったのが「マニアックデパン」という名のパン女子会です。以前は自分の好きなパンばかりを食べていましたが、みんなとシェアする会をやるようになってからは、日頃自分が食べないようなパンも買うようになったし、「このパンはあの人が好きそう」と思いながら食べるようになりました。

パン女子会では毎回2つテーマを用意して、前半・後半で違うパンを食べます。最初は「東京駅周辺のパンを食べ尽くす」のようなエリア別のテーマが多かったですね。1人だと1軒のお店にしか行けないし、1度に食べられるパンは3個くらい。でも15人くらい集まれば、いろんなお店のいろんなパンが食べられます。最近の定番は「食べくらべ」です。「デニッシュ食べくらべ」なら10種類くらいのデニッシュを集めてみんなで食べます。前半がデニッシュ、後半はカレーパンというように、やはり後半では違うパンを食べます。

それと、みんなが好きなパンはどれかな、どんなパンを食べるとみんなが喜ぶかな、と考えるようにもなりました。今度、先日テレビで紹介されたお店とコラボして、そのお店のパンを食べ尽くす、というテーマでの女子会を企画しています。ある女優さんが「美味しかった」と言ったパンがどんな味なのか、みんな気になると思うんですよ。だから、そのお店のパンが美味しいと言われた理由をみんなで共有したいなと思っています。

「ハイブリット」なパンと、「銀座・代々木・六本木」に注目!

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Q:最近はどんなパンが流行していますか?

青木さん:昨年「ハイブリットタイプ」と呼ばれるパンが市場を賑わせました。今も人気は継続していて、プレッツェル+クロワッサン、クロワッサン+ドーナツのように、ふたつの要素を組み合わせたパンのことを「ハイブリットタイプ」と呼んでいます。ニューヨークで流行ったのがきっかけで日本にも専門店が登場し、その他のパン屋さんや、大手のパンメーカー各社も商品展開していますね。私と私の周辺ではサンドイッチがブームです。たくさんの具材が挟まれた断面が綺麗なものや、国ごとに挟む具材も違うので、いろんな特徴あるサンドイッチ屋さんが登場していますよ。

Q:今注目しているパン屋さんはありますか?

青木さん:レストランのパン屋さんに注目しています。以前はレストラン内で食事をした人しか食べられなかったパンを、販売するようになったお店が増えています。「銀座レカン」のパン屋さんが最近オープンましたし、同じく銀座の高級フレンチ店「エスキス」にもパン屋さんがあります。フレンチレストランってなかなか頻繁に行けるものじゃないと思いますが、そこのパンをみんなが楽しめるようになってきていて、興味深いです。もっともっとこういうお店が増えてくれたらいいなと思っています。

Q:最近「パンがアツい!」というエリアはありますか?

青木さん:銀座、代々木ではパン屋さんが増えていて、最近メディアでも注目されているお店が集中しています。今年に入ってからで言うと六本木ですね。新しいパン屋さんのオープンが続いています。

Q:青木さんが情報を発信する時に心がけていることはありますか?

青木さん:みんなにもパンを楽しんでもらいたい、自分が感じている魅力や楽しさを伝えたいという気持ちが一番強いですね。でも自分の感想を押し付けるのは嫌なので、記事にする時は味などの感想はあまり書かなくて、直接シェフにお聞きした情報など、お店で買っているだけだとわからないことを伝えるようにしています。美味しい理由を知りたい人も多いと思うので、そのような人たちが美味しさの理由を探せるように、シェフの出身地や経歴などプロフィールも入れたりします。

私は発信するよりも受信したい気持ちが強くて、そのためにまず自分から発信しているところがあります。自分から発信することによって、いろいろな人とつながることができるからです。なので、情報を受け取りたい人にこそ、どんどん発信してもらいたいです。

Q:最後に、青木さんにとって「パン」はどういうものでしょう?

青木さん: パンは私にとって、誰かと一緒に食べた時に、他のどの食べ物よりも喜びを共有できるのが魅力なんです。パンって1個が命みたいなもので、それを一緒に食べると不思議と仲良くなれるというか、パンは特別だなと思います。もともと私は自分が「美しい」と感じるものが好きで、パンは「美しい」という自分の中の感覚に響いてくる存在ですね。

【プロフィール】

東京都出身。大学で美学美術史専攻。卒業後、建築都市デザイン事務所、外資系コンサルティング会社、外資系アパレル会社を経て、2012年に「パンスタ」の編集長、2013年1月からはパン好き女子会「マニアックデパン」の主宰を務める。パンのことを、見て、嗅いで、味わって、そして無くなったあとも記憶に残る「食べる芸術品」と考え、パン職人の技術の結晶である素晴らしいパンに出会えたというその感動を多くの人伝えたいと思い日々活動。「パンを楽しむ」ということを通して、より豊かなライフスタイルを提案している。マーケティングや商品開発アドバイジング、パンイベントの企画・運営サポート、記事寄稿など、パンに関わる企業サービスに幅広く携わる。カルチャーセンターでの講師やパンイベントの司会なども務める。

※掲載情報は 2015/04/17 時点のものとなります。

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