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道明寺の桜餅風味にリニューアル
和菓子店のショーケースに桜餅が並び、まもなく訪れる春に心が躍る時期となりました。そんな季節に、サンクトガーレンブルワリーから桜餅をイメージした春限定のビール「さくら」が登場します。
桜餅には関東風と関西風があり、小麦粉をクレープのように焼いた皮で餡を巻く関東風は「長命寺」、もち米を使った関西風の「道明寺」と呼ばれています。長命寺は東京都墨田区向島にある天台宗のお寺で、1717年(享保2年)に門前で桜の葉の塩漬けを使った和菓子を売り出したことから、関東風の桜餅はこの寺の名前で呼ばれるようになりました。一方、1000年以上の昔、大阪府藤井寺市にある道明寺では、もち米を蒸して乾燥させ粗く挽いた粉が作られました。「ほしいい」とも呼ばれていたその粉は道明寺粉と呼ばれるようになり、その粉を使った桜餅は道明寺と呼ばれ、関西を中心に広まりました。
神奈川県のブルワリーであるサンクトガーレンは春の季節をビールで表現したいと、桜餅をイメージした春限定ビールを毎年リリースして人気を博してきました。これまでは関東風の桜餅をイメージした味に仕上げていましたが、代表でヘッドブルワーの岩本伸久さんは実は福岡出身ということもあり、昔から慣れ親しんできた関西風の桜餅のイメージで造ろうと、2019年、新たな味にリニューアルとなりました。
天下第一の桜の花と葉に神奈川の酒米も
細やかな白い泡と柔らかく明るいイエロー。「あ、なんか懐かしい」…今回初めてこのビールを口に含んだ私の印象です。ふくよかな甘さはとても自然で、それはまるで桜の花びらの薄淡いピンク色のようです。このビールの原料には、さくら名所100選に選ばれた、天下第一の桜と称される長野県伊那市高遠の桜の花と葉を使用。そして道明寺らしさを出すために神奈川県産の酒米“楽風舞(らくふうまい)”を追加して、まさに道明寺のようなふくよかな味わいを創り上げています。
シートをひいて仲間たちと飲んで騒ぐのもいいけれど、ここ数年の私のお花見は、近所のお寺にある樹齢400年の枝垂れ桜を見に行くことです。長い歴史を生き抜いた見事な枝ぶりの桜の美しさをゆっくりひと回り眺めて楽しんだ後、少し高台にあるそのお寺の庭の縁にも咲き誇る桜をフレームに、春の光の中で遠く広がる街を静かに眺めます。このビールのひと口目に感じた懐かしさは、そんな穏やかな時間を思い出したのかもしれません。
もう一つ、私が例年楽しみにしているのが日本橋から隅田川周辺の桜を遊覧で楽しめる花見舟です。
見上げる桜とは趣が違い、川に手を伸ばすように枝垂れかかる満開の桜を両脇に舟でゆっくりと進む、実に贅沢なお花見です。盛りはもちろん、別れを惜しむようにはらはらと散る花吹雪や花筏も水面の光とともに息を呑むほどに美しく、日本人であることを心から嬉しく思うひとときです。
今年はそんな小さな舟旅のお供に、このビールを持参しようと思います。
※掲載情報は 2019/02/28 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ビアジャーナリスト/パンコーディネーター
宮原佐研子
日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーター、日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリストとして日本ビアジャーナリスト協会HP、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、世界22カ国158本のビールを紹介するe-MOOK『ビールがわかる本』(宝島社)、ビアエンタテインメントムック誌『ビアびより』(KADOKAWA)他執筆。『ビール王国』では、「コンビニ限定うんまいビア ペア」で、コンビニエンスストアで買えるビールとパンのペアリングを連載。日本パンコーディネーター協会主催の講座「ワインよりおすすめ?パンとビールのおいしい関係」でパンとビールのペアリング体験講座も実施。