教えることで教えられ、自分の世界が広がるのが喜び。 チーズ&ワインナビゲーター

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得意の語学力で英語・フランス語の講師や通訳としても活躍する一方で、ワインとチーズに関する幅広い知識と経験を持ち、講師歴20年以上というキャリアで資格取得を目指す人たちへの厳しくも温かい指導で絶大な信頼を集めている山田好美さん。勉強熱心で、自ら所持している食関連の資格はざっと数えても10種類以上。講師業だけではなく、審査員やアドバイザーとしても引く手数多の山田さんに、ワインやチーズを学ぶことになったきっかけやその魅力、上手な選び方についても教えていただきました。

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Q:まずは、山田さんの現在の活動内容を教えてください。

 

基本的には講師業がメインとなります。恵比寿・新宿にある「レコール・デュ・ヴァン」ではチーズ・ワイン講座の主任講師として、初心者から資格取得を目指す方たち向けまでの講座全般を担当しています。ほかにはフランス語の講座や、児童英語、高校生のための英会話など、ほぼ毎日、何かしらの講義で教えていることになりますね。

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私は講義に立つとき、資格取得のための講義なら受験モードで教えますが、それ以外は生徒さんたちとの会話を楽しむことを大切にしています。最年少だと1歳程度の子どもたちに絵本の読み聞かせを行なっている一方で、上は80歳近い方たちも生徒さんにいらっしゃいますので、日々幅広い世代の方たちと向き合うことで私自身の学びも多いと感じます。

 

それと、チーズプロフェッショナル協会に所属しているので、そちらの活動にも関わらせていただいています。その一例として、2年に一度開催される国産チーズコンクールの実行委員として、コンクールの審査員たちのお手伝いもさせていただいています。

 

Q:社会人になってからフランスへ留学された理由を教えてください。
大学ではフランス語を専攻していたのですが、いずれフランスに留学したいと考えていました。広告関係の会社に新卒入社して4年ほど働いてから、その希望をかなえるために退職してフランスへ行きました。ロワール地方で半年ほどホームステイをして、現地の語学学校に通いました。その後半年アメリカへ留学。一年後に帰国しまもなく、カルチャーセンターのフランス語の語学講師としてデビューしました。何かを学ぶと、得た知識をすぐに人に教えたくなるんです。それは今も変わらないですね。

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Q:チーズとワインに興味を持つようになったきっかけとは?
語学講師になってから、フランス語の受講生の方たちと一緒にフランス旅行へ行くのが恒例になりました。私が留学したロワール地方はワインやチーズの産地としても有名ですし、現地のワイナリーやチーズ工房を訪問するうちに、専門的な知識を持っていた方が生産者たちの話をより理解できると考えるようになり、まずは独学でワインを勉強したんです。でも甘く見ていたんですね。ワインエキスパートの資格を取得するのに3年もかかってしまいました……笑。それで、今度はちゃんとスクールに通ってチーズを学び、チーズプロフェッショナルの資格を取りました。

 

ワインもチーズも、どんな場所で作られているのかが重要なんです。例えば標高が高くて寒い地域と、海のそばの温暖な地域とでは、出来上がってくるものが全然違います。だから、同じ産地や気候が似ている場所で作られているワインとチーズはリンクする部分も多く、世界地図が頭の中に描けるようになると、さらに面白いですよ。

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Q:チーズとワインの勉強をする上で、一番苦労したことはなんですか?
勉強の仕方という面では、いろんな国について勉強しなければならないところ。それぞれの国の文化的な背景を理解する必要がありますから。私は上級ドイツワインケナーというドイツワインの認定試験も取得していますが、これはドイツワインが苦手だったので、その勉強のために取ったんですよ。ワインもチーズも暗記すべきことが多いですから、そこは語呂合わせで……笑。いろいろあるんですよ。

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Q:今まで出会った中で最も感動したワインやチーズは?
とても難しい質問ですね。私は人と食事をするのが好きで、日頃からワインは食中酒だと考えているんですね。だから、ワイン単体の味わいというよりも、いつ誰とどんな場所で、どんな料理と一緒に味わったかも重要なポイントとなります。

 

強いて思い出深いワインを一つ挙げるなら、シャンパーニュが好きなので、現地で飲んだシャンパーニュでしょうか。初めてシャンパーニュを訪れた時に、シャンパーニュづくしのペアリングのフルコースランチをいただく機会がありました。ブラン・ド・ノワールという黒ぶどうのみで造られたシャンパーニュや、最高級品のプレステージがペアリングされた中、唯一のロゼであるロゼ・デ・リセをその時を初めて飲みました。コース半ばの前菜とメインの間くらいだったと記憶しています。それがとても美味しくて、まさに感動的な出会いでした。

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チーズはまさに一期一会で、天候や熟成によって味が異なるものです。それが楽しみでもあるのですが、2018年に新しい出会いがありまして、そのチーズが昨年のNO.1チーズとなりました。私は講師以外に通訳のお仕事もさせていただいていますが、フランスを代表するコンテチーズの酪農家であるTAZさんの通訳をする機会がありました。日本を訪れた彼からのリクエストで、あるチーズ生産者と連絡を取ったのですが、それが北海道の「チーズ工房タカラ」の斎藤愛三(さいとうなるみつ)さんでした。斎藤さんは電話をした翌日には北海道から東京まで駆けつけてくださって、TAZさんと一緒にコンテチーズと斉藤さんの持ってきてくれたチーズを食べ比べたんです。どちらのチーズもとても美味しかったですね。

 

やはり、作っている方が目の前にいて、チーズ作りにまつわる苦労話なども聞いているので、さらに美味しく感じたのだと思います。しかも、お二人はその時が10年振りの再会だったそうで、その場面に居合わせることができたという感動もありました。その日はちょうど台風が直撃していた日で、斎藤さんが北海道に帰れなくなったというエピソードや、その後開催された「ジャパン・チーズ・アワード」で斎藤さんのチーズ「タカラのタカラ」が見事グランプリを受賞したことも、さらに思い出を深めてくれましたね。詳しくは「ippin」の記事で公開していますので、ご興味のある方はそちらをチェックしてみてください。

 

山田さんの記事はこちら:
https://ippin.gnavi.co.jp/article-15456/

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Q:ワインもチーズもたくさんある中で、自分好みのものを見つけるコツは?
どちらも嗜好品なので、個人の好みに大きく左右されるものですが、私は「いつ・どこで・どんなシチュエーション」を必要としているのか?というTPOで考えることをおすすめしていますね。

 

ワインとチーズの組み合わせの王道は、生まれ(生産地)を合わせるというもの。やはり同じ土地で作られたものは気候や風土が同じなので、おのずと相性の良いことが多いんですね。ただし、和食にもワインは合うので、酸が強めでフレッシュな味わいのワインを選ぶという考え方もあります。それと、ワイン選びでは予算も重要なので、最初に「いくらくらい」という目安を決めてから、その範囲内で産地や品種、好みの味わいを選ぶのが良いですよ。個人的にはあまり品種にこだわらず選んでみて欲しいですね。最近はワイン発祥の地として注目を集めているジョージアワインがおすすめです。

 

チーズにはハードタイプ、セミハードタイプ、フレッシュなど様々なタイプがあるので、ワインと違って朝から夜まで1日を通して食べられます。だから、TPOの中でも「いつ」食べるのかということが重要になります。

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Q:これからの夢はありますか?ぜひ実現させたいと考えていることは?
もっとチーズを普及させたいと思っています。実は日本人は欧米人の10分の1程度しかチーズを食べていないというデータがあるんです。ワインは赤ワインに含まれるポリフェノールが健康ブームで注目を集めたという実績がありますが、チーズって「食べると太るのでは?」というイメージを抱いている人が多いように感じます。でも必ずしもそうではなくて、血圧の上昇を抑える働きがあったり、がん予防にも効果があることが研究されていたりして、実はビタミンCと食物繊維が足りないだけの完全食品なんです。

 

そういったチーズの健康面や、どんなチーズをどのように食べるとより美味しくなるのかという知識を広く浸透させていきたいですね。そして、国産チーズをもっと盛り上げて行きたいとも考えています。私がチーズの資格を取得した当時というのは、生産者の方たちは50代〜60代の方が中心でした。でも今はほとんどが30代、中には20代の方たちもいて若返りが進んでいます。海外での修行経験を持つ人も少なくありません。やはり国産チーズのクオリティは年々高くなっていると感じています。

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「ワインの知識もチーズの知識も、なくても生きていけるもの」と山田さん。「でも、今は食べることが生活をより豊かにしてくれるツールの一つなので、ワインやチーズを知れば知るほど、日々の食卓が華やかになるとか、ちょっとした人生の豊かさに結びつけてもらえたら嬉しいですね」と話してくれました。昨年4月には、フランスが本拠地で世界的な規模で チーズ生産者や流通業者などで組織されている「ギルド・デ・インテルナショナル デ・フロマジェ」を応援するチーズ愛好家の組織「ギルド・クラブ・ジャポン」が発足し、山田さんも「コンパニョン ド サントュギュゾン」を叙任。今後のさらなるご活躍にも注目です!


プロフィール:
山田 好美(やまだ・よしみ)
20年以上の講師歴を持ち、40年以上のフランス愛好家でもある。英仏語講師として活動する中、フランスのワイナリーやチーズ生産者を訪れるようになったのがきっかけで、ワインとチーズにまつわる様々な資格を取得。チーズプロフェッショナル協会「チーズ検定」講師、ソムリエ協会「ワイン検定」講師として恵比寿・新宿「レコール・デュ・ヴァン」でワインとチーズの講座を担当。2014年にはフランスチーズ鑑評騎士の会よりシェヴァリエ(騎士)を叙任。幅広い年代へチーズとワインの魅力を提案し、近年は国内の生産者にも目を向け、ヨーロッパに負けない国産チーズ&ワインの魅力を発信中。
http://www.duvin.jp/message/yamada.html

※掲載情報は 2019/02/04 時点のものとなります。

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