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お出汁に、めんつゆ、おかかごはん、お好み焼きや冷ややっこのトッピングとして、
日本での生活に最も馴染んでいる食材のひとつ「かつお節」
そんな身近なかつお節だからこそ、どうやって作られているのかや、どんな種類があるのかは意外と知られていません。
今回ご紹介するのは、かつお節の中でも“発酵食品”であり最高級品と呼ばれる「本枯れ節」。
日本での本枯れ節生産量の約80%を占める鹿児島県指宿市で手間暇かけて製造されています。
1月中旬に、その製造工場へ伺いました。
九州本土の南端にある指宿市山川は、翼を広げた鶴の姿に見える山川港があり、
静かでのどかな場所。その周辺に鰹節の製造工場が24か所あります。
そのひとつ、大丸鰹節本舗へ。
燻された鰹節の美味しそうな香りが広がる工場内。
若い職人の皆さんが黙々と作業に没頭されていらっしゃいました。
鰹節が出来るまで。その工程とは?!
鰹節は、大きく「荒節」と「本枯れ節」があります。
大丸鰹節本舗での工程を教えていただきました。
(製造工場によって多少異なるようです。)
最初の工程はどちらも同じで、選別したのちに、
生切り・・・鰹の頭を切り落とし、解体。節に切り分けます。
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籠立て・・・節に分けた身を煮熟(しゃじゅく)するために籠に並べます。
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煮熟・・・大きなプールのような煮釜の中に籠ごと入れられて、
節のサイズによって約1時間半~2時間煮熟します。
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放冷・・・煮熟で鰹の身のタンパク質を凝固させたものを風通しの良い場所に置き、
1時間ほど冷まします。
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骨抜き・・・節についている骨、皮の一部、ウロコなどを大きな骨抜きで取り除きます。
これは全て職人さんたちの手仕事。骨が残っていると燻して
水分を飛ばしたときに身が割れてしまうのだとか。
(骨抜き作業を体験させて頂きましたが、身の奥にまで骨が潜んでいたり、
鱗があったり、全てを綺麗に取り除くのは、大変!
ただ、長い骨が綺麗に抜けたときはなんとも氣持ち良い感触でした。笑)
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修繕・整形・・・骨抜き作業をした節は、身割れが起きていたり、欠けていたりするものが
あります。その節に、生切りの時におろした中骨の身や頭肉などを使って
作られるすり身を塗り、形を整えていきます。
(この作業も体験させて頂きましたが、均一に塗っていくのがとても難しく、
素人がやると厚塗りになってしまいました。。。
滑らかに薄く塗っていく姿はいつまでも見ていたいほど美しい技。)
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間歇焙乾(かんけつばいかん)・・・
乾燥室と呼ばれる大きな倉庫に節を並べ、薪の火で乾燥させます。
2度この作業を行うのですが、一番最初の火入れを一番火、
その次を二番火と呼びます。
次に、6階建ての燻製室に移動させ、一番下のお部屋にある薪に火をつけ、
各部屋にずらりと並んでいる節を一時間ほど燻していきます。
焙乾させたら「あん蒸(じょう)」という寝かせる作業を行い、
その後、また燻し、寝かせを繰り返します。
1時間半おきに、3回火入れを行い、3週間~1ヶ月かけて
この作業を繰り返します。大体20日間ほどかけて、1日3回ですから、
なんと60回もの火入れを行って燻製をするのです。
そして、最後の焙乾を行った後、日干しを行います。
ここで完成するものが「荒節」です。
見た目にもザラザラした感じで、鬼節とも呼ばれるそうです。
本枯れ節作りはまだまだ続きます。
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削り・・・削りの専門職人が、焙乾中に出た脂肪分やタール分を削る作業です。
この工程で、ザラザラしていた節は、綺麗に磨かれます。
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日乾・カビ付け・・・削りの工程を終えた裸節を南国の太陽の光に当てて干します。
その後、カビ室と呼ばれる温度や湿度が調整された、
お世辞にも良い香りとは言い難い(笑)カビ臭い部屋に入れて、
約3週間前後で節に一番カビという最初のカビを発生させます。
通常の食品なら捨ててしまうような青いカビが節全体に覆われます。
その一番カビがついた節を2日間ほど日に干し、一本一本手作業で
表面のカビを払い落とします。
その節を今度は日陰に干し、再び箱に詰めてカビ室へ。
すると約2週間で再び節全体がカビで覆われてきます。
この二番カビは一番カビの時と違って、茶褐色をしており、
香りもカビ臭ではなく、鰹節の香りに。
発酵の力に驚きました。
(左が茶褐色の二番カビ、右が青緑色の一番カビ)
この、日乾・カビ付けの工程を四番カビまで行うこと約6カ月間。
ようやく世界一硬い発酵食品である鰹節の最高級品「本枯れ節」が完成するのです。
それにしても、この工程を作り出した先人の努力には、頭が下がります。
大丸鰹節本舗の本枯れ節は、有名な老舗料亭などで使われており、
味の土台として、活躍しています。
さらに、第18回全国鰹節類品評会で農林水産大臣賞を受賞した他、店内には数々の賞状が飾られていました。
削りたての本枯れ節は、口の中で溶けていきながら、鰹節特有の香味が感じられ、
繊細に旨味の余韻が広がります。
出汁を引くと、シャンパンゴールドのような色合いで、すっきりとした味わいながらも
旨味がゆっくり豊かに広がる美味しさ。ちなみに、鰹から鰹節に変わるとイノシン酸の旨味も約2~3倍アップします。
この本枯れ鰹節でとったお出汁でお吸い物やお浸しを作ると、
家庭の料理がワンランクもツーランクもアップした美味しさになります。
一番シンプルないただき方として、
炊き立てのご飯に、本枯れ節をかけ、ほんの少しのお醤油を垂らす
おかかご飯も、本枯れ節の美味しさがダイレクトに感じられます。
また、お味噌汁の仕上げにこの鰹節をそのままお椀の中に入れて
頂くのもオススメ。お出汁を引いた後の鰹節には、まだ旨味や栄養がたっぷり残っているので、出来ればそのまま入れて美味しさをまるごと味わいたいもの。
ちなみに、2歳の娘はこの本枯れ節でとったお出汁をゴクゴク。
お吸い物でもお味噌汁でも、よく食べますし、
ご飯や蒸し野菜にかけて食べたり、鰹節だけでも食べていることも。笑
旨味に敏感な舌を喜ばせてくれています。
職人さん達と菌の力で手間暇かけて作られたこの指宿鰹節の本枯れ節で、
美味しく、健やかで、天然の旨味を感じる食卓を。
※掲載情報は 2019/01/30 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ツタエルヒト。×フードマエストロ
齊藤美絵
ラジオパーソナリティとして、長年ラジオ番組やTVのナレーター、MCとして「声」で空間を彩る。その一方で、フードマエストロとして、“魅力的な食”の伝え手として活動。
特に、ハワイ産の食材・食品の魅力を伝えるべくハワイの畑や工場を周り、生産者とコミュニケーションを取り、現地の様子を伝え、その食材を使ったイベント企画やホテル・レストランへのメニューのプロデュース等を行う。
現在は、一児の母として、子供に安心して食べさせられるシンプルな美味しい食材・食品を日ごろから探求し、発信している。鰹節の魅力を伝えるにんべんだしアンバサダーとしても活動中。