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たまり醤油とは?
日本の醤油は5種類に分かれます。
濃口醤油、淡口醤油、しろ醤油、たまり醤油、再仕込み醤油です。
今回、ご紹介するのは、尾張を代表するKing of 醤油=「たまり醤油」です。
尾張では、醤油のことを日常的に「たまり」と呼びます。たまり醤油こそが醤油という文化なのです。
たまり醤油の原材料は、大豆と塩のみ。
そしてたまり醤油の特徴は、濃い醤油の色と旨味です。色が濃いので塩分が多いように見えますが、実は醤油のなかでも最も塩分が低い醤油。旨味が強いため、少量でも醤油としての効果を発揮することから高級手焼きせんべいや佃煮など醤油の旨味を存分に生かす料理に使われます。
今回ご紹介する『中定商店』がある武豊町は、愛知県知多半島のほぼ真ん中にあり、温暖な気候と良質な水に恵まれ、明治19年に鉄道が開通し、港も開港。原材料の輸送が用意になり、日本屈指の味噌やたまり醤油の一大産地となりました。
豆味噌を作る過程でしみ出た汁が桶に溜まったものが「たまり醤油」です。
醤油の桶には、豆味噌と同じように石を置いて、熟成させます。
たまり醤油の仕込みの中でも重要な作業は、表面の乾燥やカビを防ぐために桶の底に溜まった液体をかけていく、「汲みかけ」という作業です。夏場は毎日、冬は週に1回。重労働のため、機械を使ってやる醤油蔵が多いなか、中定商店は手作業で行っています。
その作業を目の当たりにすると、微生物に語りかけているように感じました。発酵醸造は、人力では及ばない見えない世界があります。それは数値では表せない人間と微生物のコミュニケーションではないでしょうか。
よい醤油や味噌を継承するために……
中定商店も時代を感じさせる木桶で仕込みをされていますが、今では木桶の生産者も激減しております。木桶にかかせない「箍(たが)」の生産者も継承者がいません。
風が吹けば桶屋が儲かる……ではないですが、桶も箍(たが)もないとなると、よい醤油も味噌も継承していくことができないことを、日本人みんなが考えていく必要があります。
政治家は、蔵見学を必須にしたらいいのに……と毎度ながら思います。
伝統芸能は保護する傾向にあっても、日本の食文化を支える発酵食の生産者や、桶や箍(たが)の作り手を保護する法律は全くありません。
たまり醤油のなかでも特別な“五分たまり”
中定商店には、仕込み水の量により、十水たまり、七分たまり、五分たまりがあります。
十水たまりは、原料の大豆と同量の塩水で仕込みます。かたや五分たまりは、大豆の50%の塩水で仕込むため、十水の半量しか製造することはできません。非常に濃厚で、コクと深みは、まさにたまり醤油のなかでも圧巻の旨味です。
中定商店の「幻蔵」という名のたまり醤油は、高さ2メートルの木桶からわずかしか取れない生引(きびき)醤油です。日本でも今や2つの蔵しか五分たまりを製造していないとのこと。少量をなめただけで口のなかいっぱいに、「旨い~!!!」とアミノ酸が広がることがわかります。
濃口醤油、淡口醤油くらいは知っていても、たまり醤油の製法やこだわりまで知っている日本人は少ないのではないかと思っています。まさに、尾張の“宝水”ですね。
小麦を使用しない「たまり醤油」は、グルテンフリー食品としてヨーロッパで注目されている醤油です。
私のたまり醤油のおすすめ料理はなんたって、煮魚。特に脂ののった魚には、たまりが最高です。おせち料理のブリの照り焼きには、絶対にたまり醤油!かつお出汁をとった後の昆布も、細切りにしてたまり醤油で佃煮にすると照りと旨味を楽しむことができます。
たまり醤油の美味しさを、沢山の人に知ってほしいと切に願います。
幻蔵・宝山たまり(150ml) ¥640(税抜)
※掲載情報は 2018/12/25 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家/フードディレクター
タカコナカムラ
山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。
通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。
一般社団法人ホールフード協会 代表理事