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おふざけのようで実は理論的な結論で生まれた酒
今年も1年お世話になりました。という時期ですね。その最後に、ぜひippin読者であれば味わっていただかなければならないお酒を紹介しましょう。それが「サバデシュ」。なんかお気楽な感じですよね。ラベルには“鯖専用日本酒”なんて書いてあります。実際飲んでみましょう。まずはサバなしで。えーと、すいません、ほんとなんてことのない、良いも悪いもひっかかりがない、退屈ともいえるし、退屈というよりはスッキリと飲めすぎちゃうとも言え……。正直なことを酒蔵の社長に言うと明るい笑顔でこんなお返事。「ね、ほんとつまんない酒でしょ(笑)」。いやいや、そんなあっけらかんと。でも、と続けてニヤリ。「鯖と合わせてください。缶詰でも塩焼でも、しめ鯖でも刺身でも」。まあ、そういうならということで、塩焼きのサバを一口。そしてこの酒を飲むと……「!!!」、驚きの変化。うまみがぐんぐん出てきて、でもサバの脂をすっきりさせてくれる。いわゆるウマ酸系、旨みと酸味のバランスが抜群になっちゃった。そうなんです。むちゃくちゃ変化するというか別物。流行りのサバ缶なんて、これがあるともうどっちもすぐになくなっちゃう勢い。最初は首を傾げて、なんでだろう、なんでだろうと飲んで食べているうちに、いつのまにか、もうその不思議の解明は放棄してただただ、飲んでサバを食べてたのしくなっちゃうんです。
なんでだろう、の理由。実はここにはちゃんと化学的な理屈、法則と、何度も繰り返された酒のプロのチューニングがあるわけです。かなりシビアな利き酒だったといいます。しかし、こういうなんとも抜け感のあるコンセプトの酒をこんなに真剣に……。実はこの酒蔵さんの歴史は220年以上。『吉久保酒造』。茨城は水戸で、しっかりとした酒を造り続けています。重い伝統の一方で、現在の杜氏は40代で、社長以下、20歳になったばかりのメンバーを含め30代中心の若いチーム。積極的な海外展開も図り、海外での評価も高い、伝統と新進気鋭の両面を持つ酒蔵さんなのです。だからこその枠にはまらないアイデアから造る酒がある。さて、ここで、なぜippin読者が飲まなければいけないのかというと……『吉久保酒造』さんの主力アイテム名が「一品」!
この「一品」という名前。日本人にもわかりやすいのですが、海外でも好評。東アジアの漢字圏では、「最上、最高、優れている」という意味で好まれ、外国人のリサーチでは発音しやすいので覚えやすく、親しみやすいという評価。「一品」、「逸品」、「ippin」はなんともグローバルだったんですねえ。と、そんな酒を持つ酒蔵さんのユニークなアイテム。これは試していただかなければ。普段より、かなり文章のタッチも軽やかですが、年末年始、ippin読者のみなさんも、気持ち軽やかに過ごしていただきたく、こういうお酒を軽やかに紹介してみました。もちろん「サバデシュ」とあわせて、『吉久保酒造』の本格的に仕込んだ日本酒「一品」もあわせてどうぞ。
※掲載情報は 2018/12/05 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ワインナビゲーター
岩瀬大二
MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。