2019年ラグビーの国際大会に向けて。日本とも縁の深いスター選手のワインで乾杯

2019年ラグビーの国際大会に向けて。日本とも縁の深いスター選手のワインで乾杯

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スターが手掛ける家族や故郷の物語を感じながら味わうワイン

2019年、筆者のわくわくが止まらない大きなイベントがあります。それはラグビーの国際大会。2015年、日本が最強国のひとつ南アフリカに勝利したことでスポーツの枠を超えて大ニュースとなった前回大会。ご存知の方も多いかと思いますが2019年大会は日本開催。9月の開幕まで待てない!ということで、ippinでも国際大会参加国にちなんだお酒を紹介していきたいと企んでいます。ワインは豪州、南アフリカ、アルゼンチン、フランス、ジョージアなどなど、ビールやウィスキーならスコットランド、アイルランド、イングランドなどなど豊富ですからね。さて、第1弾は、日本、ニュージーランド、イタリアという3か国がからんだワインです。

 

そのワインの名は『JK.14』。JKとは、1984年から94年まで、ラグビー最強軍団ニュージーランド・オールブラックスに選出。87年の第1回大会ではトライ王となるなど、スーパースターとして活躍したジョン・カーワン氏のこと。選手としての晩年は日本のNECでプレーし、その後、2007年~2011年までラグビー日本代表ヘッドコーチも務めるなど日本との縁も深い氏。彼の愛称がJKなのです。

 

さて、そのJKのワイン。やはりワイン産地としても名高い地元ニュージーランド産かと思っていたのですが、彼が選んだ場所はイタリア・ヴェネト州。実は、JKは現役時代にイタリアでプレーし、日本代表のヘッドコーチに就任する前に、イタリア代表のヘッドコーチを4年間務め、イタリア代表を強豪に育てた実績があります。そう、ニュージーランド、日本、イタリアという3か国でJKは素晴らしい功績を残してきたのです。そしてイタリアは、奥様の故郷でもあり、家族そろってその文化に触れ、愛してきた場所。ワインのプロデュースという真剣勝負の舞台にイタリアを選んだのは必然だったのかもしれません。

 

真剣勝負。スターの名を冠した…となれば、意地悪な見方をすれば単なる名前貸しやちょこちょこっとこんなワインがいいなという希望を出す程度というイメージもありますが、友人であるワイン生産者たちとのコラボレーションによるJKプロデュースのワインからは、真剣勝負、その気持ちが伝わってきます。実際、ファミリー揃って、ワインが生まれる産地を愛し、その文化、ワインの伝統を重んじたうえで、自分たちの感性やストーリーを重ねていきます。今回来日してワインとこうした哲学を紹介してくれたのは娘のフランチェスカさん。ご自身もバレーボールなどで活躍するアスリートで、JKがNECでプレーしていたころはそのフランチャイズである千葉県我孫子市に在住。説明にもときおり日本語が混ざります。家族揃って日本の文化が好き。「だからこのワインが日本で飲まれることが嬉しいという」その言葉が嬉しい。

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さて、ワインですが、スパークリングから白、赤、甘口ワインまで幅広くラインアップ。DOC、DOCGといったヴェネト州の伝統的な格付けや、この地域の独特な製法をとりいれるなど、この地の文化と寄り添い丁寧に造られています。それが、決して古臭いものではなく、デザインから伝わるように洗練さを持っていて、白テーブルクロスのレストランから、家でのリラックスした場面まで楽しめる懐の広さを感じさせます。さすがこのあたりはインターナショナルプレイヤーとして世界で活躍したJKのセンスなのでしょう。

 

彼のワインを味わうおススメの場面のひとつは家族そろっての夜。それはくつろぎの休日の家でも記念日のレストランディナーでもいいでしょう。というのもワインそれぞれにJKが描くストーリーが綴られ(ボトルの裏側に書かれています)、そこには地域への愛情や家族への温かい目線があるからなのです。ワインとしてもストーリーとしても僕が強く印象に残っているのが「NONNO MARIO」。NONNOはイタリア語で祖父の意味。つまりはマリオ爺ちゃん。僕のつたない大意訳で恐縮ですが、こんな思いが綴られています。

2019年ラグビーの国際大会に向けて。日本とも縁の深いスター選手のワインで乾杯
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「マリオは私にとって、このワイン産地のトレヴィ―ゾの村の一部です。彼はオールドスクール(古典的)なイタリア男。彼の情熱は、その父から引き継いだもので、その父もまたその父から……家族ってそういうものですよね。私の子供たちがおじいちゃん!って言えば目を輝かせてくれます。そして彼の広げた腕の中に子供たちは走っていくのです。そんな彼が好きなワインはこの地らしい、忘れることができない魅力的な鮮烈さを持っていました。だから、このワインの名前を付ける際に、これ以外はあり得ませんでした。そう、マリオじいさん」

 

カルメネーレというこの地ならではのブドウを使ったワインは、確かにラインナップの中で、最も厳格で骨太な表情があって、最初はとっつきにくかったけれど、時間の経過とともに純朴さや優しい表情、さらに少年のようなキラキラした表情も見えてきます。それがからみあって、抜栓してから5日目ぐらいに、なんとも奥深い複雑さを感じることができました。その時、感じるのです。JKがマリオ爺さんと名付けた意味を。母親、太っちょのラグビー仲間、奥さん、いろいろな物語とともに味わえる。だから家族で楽しんでもらいたい。スーパースターが造ったワインは、煌びやかさではなく、地元、家族、人々、そして関わってきた国の文化を真摯に静かに見つめるような温かさがありました。

※掲載情報は 2019/01/14 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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