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「お客様にご迷惑がかかるから」とメディア露出を控える老舗
秋の味覚「栗」と言えば、私の実家では祖父母の頃より、岐阜県まで栗きんとんを買いに行くのが恒例行事だった。今でこそ、一部の百貨店では販売をしているものの、母の時代でも岐阜県中津川市の本店まで、秋になると車で買いに出かけていたとのこと。私もお友達と馬籠(まごめ)の宿場町に観光に行くと、帰りに必ず立ち寄っていた老舗がある。それが今回ご紹介する「すや」さんだ。
今でこそ、次の写真のような“栗きんとん”で有名な老舗「すや」さん。しかし、「すや」さんは元禄年間「十八屋(じゅうはちや)」の屋号で、酢を販売していたのが始まりなのだ。その約100年後、7代目になると駄菓子屋さんに。8代目より生菓子を手掛けるようになり、現在は11代目が栗きんとんを中心とした生菓子作りを守り続けている老舗。メディアからの出演依頼も多くある中、「お客様にご迷惑をかけては」との考え方からもお客様を大切にする姿勢が伝わってくる。今回は、特別に掲載の許可をいただくことができた。そこで、「すや」さんの知る人ぞ知る“かわいらしい栗菓子”をご紹介したい。
「すやといえば、栗きんとん」というのが、私のまわりのイメージ。私もそうだったのだが、母から「すやの栗納豆も食べてみて。栗きんとんもいいけれど、こっちもとても美味しいの」とプレゼントされた。
キャンディーのようになっているため、急なお客様へのお茶受けに、さっと出すことができる。老舗でありながら、可愛らしさを演出した包装が何ともたまらない。次の写真のように、今回は、金沢で手作りした、オリジナルの金箔小箱に入れてみた。
甘納豆は多いが、栗納豆はあまり見ることがない。その中でも、蜜漬けしただけの栗納豆の和菓子屋さんが多い中、「すや」さんの栗納豆はグラニュー糖をまぶしているのが特徴。保存料を一切使わないというこだわりも、老舗らしい。グラニュー糖がキラキラと輝き、一粒一粒がとても贅沢な栗納豆なのだ。
一口食べると、ほどよい甘さの中に、栗のほっくりした風味が口いっぱいに広がる。中は黄金色で、まぶしいくらい鮮やかさ。
100g単位で購入できるのだが、贈答用なら織部焼(おりべやき)をイメージした化粧箱がおすすめ。織部焼は安土桃山時代末期に、岐阜県土岐市で作られ始めた陶磁器の一種。この心遣いが、老舗の“おもてなし”をそっと伝えている気がした。
ちょうど現在、紅葉真っ盛りの岐阜県中津川の「すや」さんに行くと、甘味処があり、休憩もできる。ここでは、10月より期間限定の「栗しるこ」をいただくこともできる。なくなり次第終了とのこと。紅葉狩りに岐阜に立ち寄った際には、是非、こちらのお茶屋にも足を運んでいただきたい。
“おもてなし”の心を大切にする老舗「すや」さん。
日本の四季だけでなく、日本伝統工芸の大切さを伝える手土産。
秋の行楽に。
そして、「日本の文化」の大切さを伝える手土産に。
※掲載情報は 2018/11/21 時点のものとなります。
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キュレーター情報
発酵料理研究家/観光連盟アドバイザー
高橋香葉
「日本人の体を健康できれいにするには、日本伝統文化の発酵食が一番良い」として発酵料理の研究に取り組む。テレビ、雑誌、書籍などを通じて、発酵食品の良さを伝える普及活動を行っている。
日本で初めて、米麹と醤油をあわせた新調味料「しょうゆ麹(醤油麹)」の作り方とレシピを公開し、発酵業界に新しい風を入れた。その活動は、フードアクションニッポンアワード販促部門を受賞。その後、読売新聞にて「オンリーワン」として掲載された。
現在は、日本全国を回り、全国の発酵食品だけでなく温泉巡りをし、日本の伝統文化を勉強している。
自治体の観光連盟アドバイザー、特産品開発審査委員などを歴任。市場調査から、販売戦略、プロモーションなどのマーケティング講師も行っている。フードアナリスト協会「食のなでしこ2016」。
主要著書:
◎「しょうゆ麹と塩麹で作る毎日の食卓」(宝島社)
◎リンネル特別編集「しょうゆ麹で作る毎日のごちそう」(宝島社)
◎「知識ゼロからの塩麹・しょうゆ麹入門」(幻冬舎)
◎おとなのねこまんま555(アース・スターブックス)等