「美味しんぼ」の作者が惚れこんだ究極の薬味「暮坪かぶ」

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大根の14倍の辛さをもつ“かぶ”

東日本大震災後の翌年に縁があり、岩手県産業創造アドバイザーに就任して復興支援のお手伝いをはじめた。東京の大手百貨店で催事を開催のために、料理人を岩手県に招くことになり、日本料理の「賛否両論」笠原将弘氏、「オステリア・ルッカ」の桝谷周一郎氏の両名と生産者を訪れた。

「美味しんぼ」の作者が惚れこんだ究極の薬味「暮坪かぶ」

岩手県は四国がすっぽり入るくらい広いので、かなりの強行スケジュールだった。陸前高田でりんご農家、津波で流された醤油の仮設工場、沿岸は大船渡から宮古までまだ生々しい被災地の港町を廻り、岩泉の牧場、花巻でほろほろ鳥の農場から遠野、盛岡と中身の濃い2泊3日だった。視察の最終地が今回紹介する遠野である。遠野は柳田国男の『遠野物語』でも有名な自然豊かな地で、遠野市の南東に上郷町佐比内暮坪という集落がある。

「美味しんぼ」の作者が惚れこんだ究極の薬味「暮坪かぶ」

ここの暮坪地区は、「究極の薬味」ともいわれる「暮坪かぶ」という伝統野菜があるのだ。天正年間に近江の薬売り・近江弥右衛門が持ち込んだと伝えられ、約400年間、暮坪地域の限られた地区だけで栽培されてきたかぶなのだが、丸いかぶではなく長根の白かぶで、長さは約20cm、太いところは直径約4cmほど、地上に露出した部分は淡い緑色をしていて、最初に見た時は小さな青首大根かと思ってしまった。

「美味しんぼ」の作者が惚れこんだ究極の薬味「暮坪かぶ」

品種としては京都の「聖護院かぶ」や滋賀の「近江かぶ」などと同系統の「和種系かぶ」で、原種に近い珍しいかぶである。この暮坪かぶは、「遠野かぶ」の名称でも生産販売されていたのだが、段々生産農家が手を引き、今では一軒の農家だけが生産していないのである。唯一の生産農家の菊地さんは、「どこも栽培しなくなり、うちがやめたら、この暮坪かぶは途絶えてしまう」と、さらに暮坪地区の土壌でないと、この独特の辛みがでないのだと。この絶滅しかかった暮坪かぶは、ある漫画がきっかけで有名になったのだ。27年ほど前の漫画『美味しんぼ』の中の「薬味探訪」の回で原作者の雁屋哲氏が惚れ込み誌面に登場させ、「遠野かぶ」というより「暮坪かぶ」という名称の方が良いと。

「美味しんぼ」の作者が惚れこんだ究極の薬味「暮坪かぶ」

これは、生産者の方から直接聞いた話であるが、同時に蕎麦の「暮坪そば」も人気になり、大根の14倍(岩手県調べ)にもなる「究極の薬味」と評されるようになったのである。先日もアドバイザーの仕事で遠野を訪れたのだが、東京から著名なフランス料理のシェフを同道して、遠野の道の駅「風の丘」で暮坪そばをいただいたのである。

「美味しんぼ」の作者が惚れこんだ究極の薬味「暮坪かぶ」

暮坪かぶを粗いおろし器でおろし、そばの薬味にするのだが、辛みが口中に広がり、病み付きになる味なのだ。ちなみにこの「風の丘」は3度訪問したが、必ず「暮坪そば」しか頼まないのである。かなり、皮も中身も硬いのだが皮は絶対にむかずに、出来れば粗いおろし器でおろして欲しいのだ。わが家は竹製の「鬼おろし」でおろして食するのだが、東京では一部のそば屋さんで食べられるが、春秋の年2回の作付けで生産販売は大体3月から7月にかけてで生産量も少ないので、中々入手が大変かもしれない。辛みの大好きな方には絶対に味わってもらいたい「究極の薬味」である。

暮坪かぶ

共同組合暮坪かぶ  tel:0198-65-2564

※掲載情報は 2018/08/10 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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