使って納得!イチョウの料理ベラ

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予想外の使い心地

今回は、いきなり余談から入ろう。

 

コラムを書くにあたり、タイトルは重要だが、小見出しも大切である。特に、最初の小見出し。
タイトルはわかりやすいものがよいので、決めるのは簡単である。次の小見出しが重要なのだ。自分が気に入っているものを紹介するにあたり、「これに尽きる!」という小見出しを絞り出す。

 

さて、今回の最初の小見出しは「予想外の使い心地」である。興味を持ってくださったのなら、ひねり出した小見出しチョイスは成功である(笑)。

 

では、予想外だった木べらとのストーリーを書くこととしよう。

 

職人の実演販売で思わず……

シーンは、銀座三越デパートの家庭用品のフロア。
しょっぱなからこの背景を書いたのは、今回紹介する商品をデパートの催事で見かけるかもしれないからである。または、すでに見かけられた方がいるかもしれない。

 

さて、ある日、銀座三越にふらりと入った私は、趣味である家庭用品売り場をウォッチング。その日はイチョウ商品の催事販売をしていた。小さなステージに座って作業をしていた職人の様子を見ていたら、イチョウの木べらを勧められた。「とても使いやすいから」ということと、あとナニヤラ説明されたが、あまり覚えていない。なぜならば、私はまったく興味がなかったからだ。仕事上、家には、数本の木べら、スパチュラがあり、新たに増やすつもりはなかった。

 

私は、自分が料理家であることを告げて「家にたくさんあるから」と丁寧にお断りした。ところが、職人の返答は、私の購買意欲に火をつけたのである。実演販売のプロのしゃべりに翻弄されたのではない。そこにいたのは職人である。しつこく勧誘して売りたい人ではないのだ。

 

私は、彼の何気ない返答に、(ええ? 一体どんなへらなの?)と、内心驚きつつも、平静を装い、「あら、さようですか。それなら私も使ってみますわ」と、品よく言わざるを得ない状況に変わったのだった。で、とりあえずは、小さいサイズを購入。
あーあ、家にたくさんあるのに買っちゃったわね……(職人の一言は最後に記載)。

 

私には不可解なことだったのだ。「このへらの何が他と違うんだろう?」って。だって、形が少々変わっているだけで、ただの木べらである。

イチョウの料理ベラの特長

ここで商品に添えられたしおりを抜粋しよう。

 

「イチョウの料理ベラの特長」
・職人が一本一本手作りしております。
・柾目で作られていますので反りにくく丈夫です。
・イチョウの木には油分があるため、水切れがよいです。
・薄く仕上げてあるため混ぜやすく、炒め物、フライ返し、裏漉し等いろいろなお料理に幅広くお使い頂けます。
・傷つきやすいフライパンやホーロー鍋などにも適しています。
・防腐剤など余分なものを一切使用しておりませんので、安心してお使いいただけます。
以上。

 

期待感を持ちながら、しおりを読んだのだが、特別な調理器具として印象に残ることは書かれておらず、良さが今一つ伝わらなかった。失礼ながら、私は、職人の言葉にのせられて余計な買い物をしたような気分になってしまったのである。
「だめだこりゃ……きっと使わないな」

 

ところが、ところが…!!

 

使って納得!イチョウの料理ベラ

どんでん返し

明らかな贔屓である。

 

イチョウの木べらは、私がキッチンに立った時に、絶対的に使う調理器具となった。はじめて見た時は興味がなかった上に、仕方なく買った感もあり、しおりを読んでもぴんとこなかったというのに。

 

いまや、そればかり使っている事実は、まさにどんでん返し!

 

料理の仕事をしている先輩方に、このイチョウの木べらの話をしたところ、「へぇ、その木べらの何がいいの?」と聞かれて、困ってしまったことがある。「使いやすい」というだけで収めたくなかったので、的確に答えられなかったのだ。

 

後に思ったのが、私が「これ好き!」と感じる時は、気持ちだけではなく、身体もそれを感じているのだな、ということ。私自身が気に入っている、というより、私の手がイチョウの料理ベラを気に入っているのだ。使っていて心地よいということは、私の手が気に入っている証拠。「よく私のところに来たね」って、愛おしさすら感じてしまう。

 

でも、こんなに気に入っているのに、何がいいのかっていうことを伝えることができない。「使いやすい」とか「においがつきにくい」とか、色々説明しても、たぶん、私が最初にしおりを読んだ時と同じことになってしまうだろうから。
それなので「とにかく使ってみて!」としか言いたくないのだ。一度使えばわかっていただけるはず。

使って納得!イチョウの料理ベラ
使って納得!イチョウの料理ベラ

※ベシャメルソースを作る時、非常に重宝している。

つい買ってしまったわけ

最後に、デパートの催事で、私がへらの購入を断った時、職人さんに言われた台詞をお教えしよう。

 

「有名な料理研究家の先生が気に入って使っている良質なへらだよ」(あんたも料理の仕事をしているのなら、これを使わなきゃねぇ……ってところだろうか……)。

 

買ってよかったと思うので、言ってもらえてよかった。

 

もしも、生産されている会社の方がこのコラムをお読みになられたら、私という料理人も気に入って使っている、ということをたくさんの方に伝えてもらえるとうれしく思う。

 


≪商品問い合わせ先≫
株式会社双葉商店
918-8007福井県福井市足羽1-26-8
TEL:0776-36-3798
営業時間:平日8:00-17:00

※掲載情報は 2018/06/23 時点のものとなります。

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キュレーター情報

中尾明美

料理家、ライター

中尾明美

東京都生まれ。一男一女の母であり、孫も持つ。五代続く医者の家に育った生い立ち、健康食品製造販売会社の代表を務めた経緯やがん克服経験から、医食同源を目指した食生活を推奨している。「DEAN & DELUCA」キッチンスタッフ、「リストランテアロマクラシコ」キッチンスタッフを経て、イタリアフィレンツェの料理研究家に師事し、現在も厨房に立ちつつ、会費制食事会「プライベートダイニングRoom A’s Tokyo」、料理教室「Class A’s Kitchen」、出張料理「A’s Kitchen」を主宰。食材・調理器具と波動を合わせた調理、化学調味料を使わない優しい味にはファンが多い。2018年4月よりELLEgourmetフードクリエイターメンバー。

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