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簡素そのもの
こちらは2018年4月1日に発売されたばかりの「THE SOUP-ごく旨地鶏の満ちてくスープ」という缶詰。具なしの汁だけという、驚くべき缶詰であります。
スープの原料に使われているのは、知る人ぞ知る高知の地鶏「土佐ジロー」。その鶏ガラと肉をじっくり煮てうまみを引き出し、玉ねぎと高知県産天日塩だけで味付けしている。原料はたったそれだけ。しかも塩分濃度は0.4%という低さだ。土佐ジローが本来持っている滋味を100%活かすためでありましょう。
うまみ密度高し
皿にあけてみると、ほんのり色づいた透明なスープなのが判る。鶏を煮出した香りがあり、温めるとさらに香りは強まる。口に含んでみると、角がなく、まろやかで、塩味をほとんど感じない。わずかな玉ねぎの甘みもあるが、その底辺には胆力あるうまみがどーんと広がっている。なんというか、うまみの密度が非常に高いのだ。だから塩気がなくても「あ、これで充分」と思わせてしまう。すごいぞ土佐ジロー!
実はこのスープ缶は、都市部で働く女性をメインターゲットにして開発された。毎日懸命に働き抜き、身体も心も休息を必要としているようなときに、この滋味溢れるスープを飲んでリセットしてほしい。それはあたかも、月が新月の状態から、次第に満ちていくようなイメージ。だから商品名にも「満ちてくる」というキーワードが入っているのだ。
ブロードとして使う
かくのごとし。リゾットに使ってみた。
というのも、余計なものが一切入っていない鶏スープなので、ブロード(イタリア料理でいう出汁)として使っても最高なんじゃないかと。
米と玉ねぎをバターで炒めたところに、このスープを少しずつ足して米を煮ていく。米に火が通ったらインゲン(あらかじめ煮てある)とトマト、粉チーズを加えてさっと混ぜ、黒こしょうをかければ缶成!
粉チーズの塩気とトマトの酸味が加わっているが、それでも普通の料理からすれば驚くほど薄味。
それでもやっぱり「あ、これで充分」と思ってしまうのは、やはり土佐ジロー君の胆力のおかげであります。というか、都市部で働くおじさんの僕も、それなりに疲れているのかもしれない(笑)。
ちなみにこのスープはひと缶に200g入っていて、お米0.5合を煮るのにちょうどいい分量でありました。
土佐ジローは卵の美味しさで知られる地鶏で、食肉用として専門に育てているのは高知県安芸市畑山の『はたやま夢楽(むら)』1軒だけ。このスープ缶も、ここの土佐ジローを使っている。
もともと希少な鶏ゆえ、このスープ缶も数多くは作れない。注文するのも、今のところは『はたやま夢楽』の代表・小松圭子さんに直接電話をするという超アナログなやり方であります。
お値段は1,000円なり(税別)。
ごちそうさま!
※掲載情報は 2018/04/15 時点のものとなります。
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キュレーター情報
缶詰博士
黒川勇人
昭和41年福島県生まれ。平成16年から世界の缶詰を紹介する『缶詰blog』を執筆。缶詰に精通していることから"缶詰博士"と呼ばれ、TVやラジオ、新聞など各種メディアで活躍中。国内外の缶詰メーカーを訪れ、開発に至る経緯や、製造に対する現場の“思い”まで取材するのが特徴。そのため独自の視点から缶詰の魅力を引き出し、紹介している。
著書は『おつまみ缶詰酒場』(アスキー新書)、『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』(タツミムック)、『缶づめ寿司』(ビーナイス)、『日本全国ローカル缶詰 驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36』(講談社プラスアルファ新書)、『安い!早い!だけどとてつもなく旨い! 缶たん料理100』(講談社)など。小曽根マネージメントプロ所属。
お問い合わせ Mail:k-k@kosone-mp.com