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日本酒のあらばしり
日本酒では、槽しぼりや雫しぼり、機械搾りをした搾り立てを「あらばしり」と表現します。搾りの段階からみると、次に「中汲み」、最後に圧力をかけて搾られたものを「責め」といい、それぞれの味わいを楽しむことは少なく、日本酒のほとんどはこの3つをバランスよくブレンドして出荷されます。
「あらばしり」や「中汲み」の日本酒は、丁寧な搾り方をされている蔵だからこそのお酒であるといえます。日本酒の「あらばしり」ファンの私が、オリーブオイルにもあらばしりがあることを知ってからというもの、それは春の食の風物詩になりました。
オイルの搾り方
イタリアでのオイルの製造方法は、かつての圧搾搾りから遠心分離がスタンダードになってきました。遠心分離では、取れ絞ったオイルを沈殿させます。本来は自然沈殿させるのがベストなのですが、高性能のろ紙でろ濾過をかけます。ろ過することで種や果肉の粕も取とれますが、香り成分も吸い取られてしまうそうです。
それなのになぜ、ろ過をするのか? 土壌や農薬の影響が「澱(おり)」に残りやすく、かつオイルの劣化につながるため、大手メーカーでは丁寧に「澱(おり)」を取って瓶詰めすされるのです。本来、オイルはビタミンやミネラルの宝庫であるはずなのに、搾油段階でそれらは厄介者とされ、排除されてしまいます。その結果、オイルはカロリーだけの物体になるんですぞ。
しかし、その行程をせずに自然に沈殿させ、その上澄みを取ったものがあるのです。
オリーブオイルの「あらしぼり」です。
イタリアでは、このオイルはNovelo((ノヴェッロ))とよばれ、搾油したてのお祝いとしてクリスマスから年明けにオリーブ祭りが行われます。そのオイルが瓶詰めにされて日本に届くのが、今なんです!
真鍋さん愛するオイル
「オルチョサンニータ」のオイルに「あらしぼり」という呼び名をつけたのは、オルチョファンクラブ隊長だった栃木県佐野市の自然食品店のオーナー真鍋真彦さん。
無類の日本酒好き。私もどれだけ一緒に日本酒を楽しんだかわかりません。真鍋さん、本当はこのオイルを、「あらばしり」という名にしたかったのではないかと思っております。
最近、「せんべろ」という言葉があります。1,000円でベロベロになれる店を指すのですが、安酒の二日酔いほどひどいものはありません。
真鍋さんのポリシーは、「ホンモノの日本酒でベロベロになろうよ~!」。
真壁さんとの飲み会は、とびっきりの日本酒を酌み交わす、笑いの絶えないものでした。
真鍋さんは、このオイルの輸入元である朝倉玲子さんの大ファン。好きすぎてイタリアまで同行していました。そして酔うと、何にでもオリーブオイルをかける癖もありました。その真鍋さんは、昨年5月に急逝。享年50歳でした。
真鍋さん! あなたが愛した「あらしぼり」、今年も届きましたよ。
しかも、昨年イタリアは天候に恵まれ、過去最高の「あらしぼり」です。
天国に宅配できるなら、届けてあげたいほど。
「あらしぼり」は私にとって、とても思い入れの深いオイルなのです。
美味しいレシピ
最後に、あらしぼりオイルの美味しい食べ方を紹介します。
まずは全粒粉などをつかった、素朴なカンパーニュかバケットを厚切りにしてトースト。にんにくを切り、断面をざらついたパンにこすりつけます。「あらしぼり」をたっぷりかけ、パクっといく。これが最高の食べ方です。
茹でたてのパスタにあみアミの塩漬け、またはイカの塩辛を混ぜ「あらばしり」をかけるだけ。これまた日本酒の〆のひと皿としてもよろしいかと。
秋のヌーボーワインを、成田空港にまで押しかけて走りを楽しむ方、オリーブオイルのノヴェッロにも、はまってみませんかね。
私は何度きいても、オルチョの「あらしぼり」オイルを、つい「あらばしり」とミスタイプしてしまいます。
朝倉さん、そろそろいいよね?
真鍋さんと私は「あらばしり」って言っても……。
あらしぼりオルチョサンニータ(750ml)¥3,852
※掲載情報は 2018/04/10 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家/フードディレクター
タカコナカムラ
山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。
通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。
一般社団法人ホールフード協会 代表理事