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徳島・鳴門のお酒は上品淡麗。とがらない、でしゃばらない
春にあうお酒。ワインやシャンパーニュでも春のテイストにあうものがあるし、日本酒でもこの時期ならではのものもある。春色のカクテルや、春のフレイバービールもいいでしょう。という中で、もう、名前で選んじゃうという直球勝負もいいんじゃないかなあと、今年、早めに訪れた春の陽気の中でふと思ったんです。そこで浮かんだのがこちらの日本酒。「花乃春」。もう名前だけでふわりと浮ついた気分になってしまうなあ(微笑)。
と、浮ついた気分のついでに、『花乃春酒造』さんを訪ねてみました。四国・徳島。うずしおでおなじみの鳴門。東京からの行先として、なんとなく春っぽい場所というのも余計に浮ついた理由でもあります。鳴門につくと、青空の大歓迎。ゆるやかな春風とおなじようにゆるやかな潮風がまざったような、なんともおだやかな空気。JR鳴門駅から10分ほど、住宅街の中にこぢんまりと『花乃春酒造』さんはありました。
創業は1814年。うららかな春の日だった、ということから酒蔵の名前を「花乃春」に。「あまり大きな商売にしようとは思っていなかった」ようで、県内中心の展開です。「東京だと、大森の居酒屋さんが直接取引してくれているぐらいですかねえ」と言うのは、この日お話を伺った専務の多智花(たちばな)早苗さん。花乃春で多智花。思わず「芸名か、代々引き継ぐ襲名的なものですか?」と聞いてしまったが、本名。日本でも数少ない名前で、こちらがその本家だそう。それにしてもいい名前。東京で映像やグラフィック関係の仕事に就き、最近、後継ぎとして戻ってきた息子の良彰さんにお酒の特徴をうかがうと、「淡麗で上品。とがったところがなく、万人に受け入れていただけるお酒でしょうか。もちろん、鳴門名物の鯛などの白身魚との相性はいいとおもいますが、いずれにしてもみなさんに楽しんでいただければ」とのこと。
「徳島は意外と保守的な土地柄で。うちもあまり特別なことは…」と笑う早苗さん。それでも春には搾りたて、本数限定の特別なアイテムが地元女性に人気だったり、口コミで中国からの注文が多く入るようになったりと、じわじわとゆるやかに広がっていく、そんなところもこちらのお酒に合った感じ。
ゆるやかで慎ましやかな酒蔵には、ひとつ派手めなエピソードがあります。榮倉奈々さん演じる東京から鳴門に転校してきたヒップホップ少女が、地元で阿波おどりに情熱を燃やす男子たちと、反発しあいながらも友情を深めあう青春ムービー『阿波DANCE』(2007年公開)。その舞台となった主人公たちが通う高校が、『花乃春酒造』の真ん前にある鳴門高校(劇中では違う名前)。そして主人公の一人である勝地涼さんの家が…この『花乃春酒造』という設定で、映画でも『花乃春酒造』の名前はそのまま使われていました。ちなみにお父さん役は高橋克実さんで「雰囲気はうちの社長によく似ていましたよ(笑)」と早苗さん。
酒蔵に併設されている小さなコンビニには鳴門高校の生徒さんの明るい声も響きます。
なんともゆるやかな春の光と風の中、こういう穏やかな日本酒を気軽に楽しむ。シャツのボタンをもうひとつ外して、ざっくりと腕まくり。気持ちがほどけるいい昼酒でした。
※掲載情報は 2018/04/02 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ワインナビゲーター
岩瀬大二
MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。