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私が初めて彼女を見たのは、2011年に放送された日本人女性パティシエと創作スイーツ対決をするテレビ番組でした。彼女というのは、幼いころ日本に住んでいた経験をもつシンガポール出身の女性シェフ&アーティストのジャニス ウォンさん。その番組ではマンゴーピューレに日本の柚子、紫蘇を使ってみたり、シンガポール庶民の文化であった観賞用の鳥かごを装飾に使用したりするなど、日本の食材とシンガポールの文化を融合させた斬新な創作スイーツの美しさに私は一瞬で魅了されました。
春をイメージした「カシスプラムケーキ」
世界中からオファーが殺到する著名なシェフであるウォンさんは、2007年にシンガポールでアシェットデセール(皿盛りのデザート)とお酒のマリアージュを楽しめる空間『2am:dessertbar』をオープン。日本でもその頃からスイーツとお酒の楽しみ方が注目され始めましたが、シンガポールでもこのマリアージュは画期的な提案でした。2016年2月には香港に進出、その直後の3月には東京の商業施設『ニュウマン』にデザートバー『JANICE WONG』が日本初出店しました。待望の日本進出ということでオープン前から話題となり、日本のスイーツ界に新風が吹いたのです。
日本の店舗でも、芸術性の高いアセットデセールを目当てに訪れる人は絶えませんが、実は自宅でも楽しめるスイーツがあるんですよ。それは「カシスプラムケーキ」。日本の春から着想したというウォンさんの代表的なアシェットデセール「カシスプラム」からインスピレーションを得て開発されたパウンドケーキです。
爽やかなカシスピューレにエルダーフラワーのシロップ、梅酒を加えたパウンドケーキで、ふんわり香るカシスに大人な春を感じさせます。カシスの色がマーブル状になっていて、シックな仕上がりに。デセールの味わいと想いがこのケーキに込められています。高級感ある黒のボックスに入っているので、大切な人へのあいさつ、友人へのプレゼントなど、どんなシーンにも合いそうです。ティータイムにはもちろん、食後にちょっと甘めなお酒と一緒にいただくのが私のおすすめ。すぐに至福の時間がやってきますよ。
自称ウォンさんの追っかけ!シンガポール店もぜひ訪れて!
日本の店舗はシックな黒を基調とした落ち着いた空間ですが、シンガポールの店舗も大人かっこいいんです。『2am:dessertbar』があるのは観光客が行き交う中心エリアではなく、高級住宅街として知られるホランド・ビレッジという中心地からバスで15分ほどの場所にあります。初めてシンガポールを訪れるにはハードルが高い場所かもしれませんが、おしゃれなレストランが多く散策にもおすすめです。シンガポールでは食事をしてから、別の店でアルコールを楽しむ習慣があるので、アフターにぴったりなお店。アセットデセールとお酒を深夜2時まで楽しめる空間なのです。
ウォンさんがチョコレートで描いた作品がテーブルになっていて、「カシスプラム」をはじめ、東南アジアのハーブやフルーツを使用したアセットデセールが楽しめるのが魅力的です。以前こちらの店舗でもカシスを使ったデセールをいただきましたが、アイスクリームにマシュマロを合わせた、今までに食べたことのない食感に衝撃を受けたのを今でも覚えています。
さらに、テイクアウトでウォンさんの味を日本へのお土産にするなら、中心地に近い店舗がおすすめです。
こちらはシンガポールの歴史を知ることのできる『National Museum of Singapore(シンガポール国立博物館)』内にある旗艦店。その場で食べられるアイスクリームやお土産にぴったりなクッキー缶、ボンボンショコラなどがずらりと並んでいて圧巻の品数です。店内もアーティストであるウォンさんらしいカラフルな装飾がたくさん。もう、そこにいるだけで目を輝かせてしまいますよ。
これからシンガポール旅行を計画している人ならば、「カシスプラムケーキ」を仲間と食べながらスケジュールを立てたらワクワク感が増すかも。そして、ウォンさんのスイーツを通して、新たにシンガポールに興味を持ってくださる人が増えたら嬉しいです。
※掲載情報は 2018/02/22 時点のものとなります。
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キュレーター情報
アジアンフードディレクター
伊能すみ子
アジアンフードディレクター/1級フードアナリスト 舞台制作や民放気象番組ディレクターを経て、食の世界へ。調理師専門学校で調理、食文化を学びながら、食の専門家であるフードアナリストとして活動を開始。メディアを中心に飲食情報の提案やアジア各国料理の執筆、講演、講師、レシピ制作などを行う。
「ASEAN食のコンシェルジュ」、「タイフードコンシェルジュ」、「カンボジア旅のリポーター」などの肩書を持ち、食と旅の提案も手がける。年に数回、アジア諸国を巡り、屋台料理から最新トレンドまで、現地体験を専門webサイトにて多数掲載。書籍『専門店が教える スパイスの基本』(PHP研究所)では、レシピを担当。日本にいながらも他のアジア諸国のおいしい料理を楽しめるような、環境作りを目指す。