今年もいちごの季節がやってきました。30年前までは国内で40品種にも満たなかったいちごですが、今や200を超える品種が全国各地で栽培されています。2月から3月にかけてそのほとんどの品種が最盛期を迎えるその前に、今一度全国各地の品種を確認しておきましょう！ 一年以上前から予約が必要な市場にあまり出回ることの少ない品種も珍しくないので、早めのチェックをおすすめします。

一般的なビニールハウスでの栽培とは異なり、LEDを使った閉鎖型植物工場で栽培される新潟県胎内市にある『いちごカンパニー』の「とろける香りいちご」。温度・湿度のコントロールだけでなく、二酸化炭素で光合成を促進させ、名前の通りとろけるようなかおりの甘いイチゴを生み出しています。天候の変化や日光のあたり方などに左右されず、安定的に品質の均一なイチゴをいつでも食べられるようにされているので1年中が“旬”。こちらの商品はオンラインで購入いただけます>>

福岡県筑後市にある「あつひろ農園」は、農園のお母さま“あつこ”さんと、お父さま“ひろし”さんのお名前から付けられた農園。ここで作られるいちご「みつのか」もまた、お嬢さん二人のお名前から名付けられた、思いのこもった品種です。一般的に大きないちごは味が大口なイメージがあるのですが、みかんのようなサイズもある「みつのかいちご」はぎゅっと詰まった桃のような繊細かつジューシーで爽やかな果汁があふれ出します。

いちごの生産量・消費量ともに全国１位の栃木県栃木市で半世紀以上いちご農家を営む『谷中農園』で栽培している品種のひとつ「とちおとめ」もまた、日本一のシェア率を誇る最もポピュラーな品種です。こっくりとした甘味の中にも酸味とうまみが感じられ、そのまま食べてもさっぱりしていて食べやすく、和菓子やケーキにしてもしっかりとした存在感のある味わいです。王道かつ本場の味わいをご堪能してみてはいかがでしょう。

大分県臼杵市野津の『亀山農園』が手がける大粒のいちご「愛情いちご」は、中まで赤いしっかりとしたかみごたえのある果肉と、さわやかな甘みと酸味の絶妙なハーモニーが特徴。おいしさの秘密は、ずばり土と育て方にあります。有機堆肥を使用し、大きな粒にするために摘果をして1株5粒しかつけないという愛情たっぷりの製法で、一粒一粒手塩にかけて育てられています。

毎年12月中はとくに市場には出回らないという噂のいちごが、愛知県新城市にある『ファームトヨヒロ』の「寒熟いちご」。その理由は、12月23日の天皇陛下のお誕生日ケーキに使用されることから、その期間は宮内庁への納品で埋まってしまうから。標高の高い作手高原の寒冷な気候が甘みをぎゅっと閉じこめるため、じっくりじっくり“寒熟”されたスペシャルないちごは、ケーキなど甘いスイーツと一緒に食べても際立つ甘さが特徴。

静岡県静岡市駿河区で1896年に創業した『常吉いちご園』で手がけるのが「かなみひめ」。そのほとんどが一部の農家からの直売でしか扱っていないことから、幻のいちごとも称されています。“あきひめ”と“とちおとめ”をかけあわせたサラブレッドとも言える品種で、糖度が高く溢れる果汁が特徴。とろけてしまいそうなくらい甘く、１粒の中に蜜がたっぷりと詰まっている感覚。ふわりと広がる贅沢な香りも印象的で、気分も一気に華やぎます。

群馬県育成品種である「やよいひめ」は、群馬の“とねほっぺ”と栃木の“とちおとめ”を交配して生まれた品種。大粒で上品な橙赤色（とうせきいろ）の実で、糖度が高く、まろやかな酸味が特徴。一般的にいちごは気温が高くなると、色が黒ずんだり果肉が柔らかくなったりしやすいのですが、収穫時期が3月になっても美しい色としっかりとした実を保ち、長い期間楽しめるため都内のパティスリーなどでもひっぱりだこの品種です。

静岡県静岡市葵区でいちご一筋15年という生産者の池ヶ谷さんが、安倍川の伏流水を使用して我が子のように愛情を注ぐ農園『いっけっ家（ち）』。手作業で丁寧に育てあげたいちごは、農林水産大臣賞も受賞しているいちご界の先駆者的な存在。静岡生まれの品種「紅ほっぺ」や果肉が固めの「やよいひめ」のほかに、エレガントな香りが立ち、糖度の高い「かおり野」を手がけています。ほぼ酸味を感じない爽やかな甘みに酔いしれてみて。