今どきのチリワイン。ここに注目!~美しさと秘められた力を堪能する「冷涼」~

今どきのチリワイン。ここに注目!~美しさと秘められた力を堪能する「冷涼」~

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ストイックとフレンドリーの素敵な融合『マテティッチ』のシャルドネ

今どきのチリワインの面白さ、素晴らしさについて、5つのキーワードをもとに、日本でも入手可能なアイテムを紹介していくシリーズの2回目。前回のキーワード「オーガニック」に続いて、今回は「冷涼」。

今どきのチリワイン。ここに注目!~美しさと秘められた力を堪能する「冷涼」~

「冷涼」はワインのプロやワイン好きの間でここのところ注目されているワードで、英語を用いて「クールクライメイト」ともいわれています。ごくごく簡単にいえば「冷涼な地域で生みだされるワイン」のことで、もう一歩進めていえば「そのワインは冷涼な地域で生みだされるから、より濃厚でエレガントになる」という喜ばしいスタイル。
太陽が燦燦と輝く暑い土地は、その分、ブドウの生育も収穫時期も早くなり、明るく楽しいワインになります。裏を返せば、風味の集中力であるとか凝縮感、酸などは足りないともいえます。逆に冷涼地域のブドウは十分なエネルギーを蓄積するために収穫時期こそ遅くなりますが、その分、大地からの力を溜め込み、美しい力強さと豊かな酸を宿すワインとなる可能性を持ちます。
 
「オーガニック」のページでも触れたように、夏場のチリには容赦なく太陽が降り注ぎますが、チリが面する太平洋には、寒流が流れ込んでいます。南極に近づく南部のパタゴニアは氷の土地。そこを通るフンボルト海流は冷気をチリの大地へと運びます。さらに高くそびえるアンデス山脈という、これも冷涼な白銀の果てしなく続く「屏風」を背にしています。朝夕、秋冬春は冷涼で、日中と夏には十分な太陽。チリのブドウたちは、特にクールクライメイトのエリアでは、その中でじっくり、健やかに、そして美しく育ちます。

今どきのチリワイン。ここに注目!~美しさと秘められた力を堪能する「冷涼」~
今どきのチリワイン。ここに注目!~美しさと秘められた力を堪能する「冷涼」~

今回紹介するワイナリー『マテティッチ』(日本での輸入会社での表記は『マテティック』)は、農業生産やリゾートホテル経営で財を成したファミリーが99年にスタートさせたワイナリー。本拠地のロザリオ・ヴァレー周辺はクールクライメイトエリアに該当します。温暖さと冷涼さを併せ持つ気候と、オーガニックに適した土地からワイン造りの成功を確信。現在周辺に広がる4つの自社畑は海岸線から13㎞~19㎞の間にあり、冷涼な空気がヴァレー沿いに丘を包み込みます。このワイナリーの、特にシラーにおける世界的な成功が、チリのクールクライメイトへの挑戦に勇気を与えたという声もあり、チリにおける冷涼ワインの先駆け的存在でもあります。

 

代表する2つのラインは、親しみやすい『コラリージョ』(メイン画像の馬のイラストのボトル)と「均衡」を意味する『EQ』。この旅、3週間で20以上のワイナリーを巡り、その中での私的ベスト・オブ・シャルドネともいうほど感激したのは『EQシャルドネ 2015』。グラスに注ぐと熟れたトロピカルフルーツに白桃のタルト、ウォールナッツとキャラメルの焼き菓子のような複雑で濃厚なコアを一気に感じさせながらも、キラキラとした爽快感、美しく静かに長く続く酸の余韻へと変化していきます。もちろん妙に甘いというわけではなく、こうした果実そのものの甘みということです。アクセントには海側ならではの締った塩っ気。クールクライメイトならではの凝縮と酸を、華やかさと集中力の均衡で見事に仕上げたワイン。現場での僕のメモもやや走りがち。
他のワインも樽の使い方が絶妙。エフェクトをかけすぎず、冷涼エリアかつオーガニックで育んだブドウの良さを丁寧に引き出していました。この土地を信じて世界へ発信する、というモダンなワイナリーながら真摯な取り組みが感じられました。

今どきのチリワイン。ここに注目!~美しさと秘められた力を堪能する「冷涼」~

オーガニック的な発想も徹底されていて、モダンなワイナリーも丘陵の景観を邪魔しないように見事に配置されていて、またツーリズムとしての魅力も十分。併設のロマンティックなホテルでステイし、チリの新しいけれど自然体の料理を楽しみ、乗馬やトレッキングなど自然と触れ合うアクティビティも充実。そして、ホスピタリティ。オーナーはチリにおける冷涼ワインの先駆けで、オーガニックを実践されているということでストイックなイメージを抱いて訪れましたが、真摯さは存分にありつつとてもフレンドリー。画像の2人はワインメイカーのエマニュエルさん(左)と輸出部長のディエゴさん。テイスティングの際はもちろん真剣に議論を交わしましたが、ワイナリー見学、ディナーの時間は笑顔で楽しく過ごしました。実はテイスティングが白熱しすぎて予定時間をずいぶんとオーバーし、ディナーは23時すぎからようやく。それでも疲れた表情を見せず、グラスを傾け、これも0時を越えても話は尽きませんでした。冷涼、オーガニック、そこから導き出される答えは美しさ、エレガントさ、ストイックなフィネスもあるけれど、彼らの人柄、このヴァレーに咲く美しい花々からも伝わってくる優しさでありパワー。EQシャルドネから感じた、濃密で美しい余韻。その裏側にしっかりマテティッチのワイン造り、彼らの土地、そして思いがありました。

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※掲載情報は 2017/12/05 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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