江戸の風流!酒粕のみで造る飴色の酢「三ツ判山吹」で暑気払い!

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暑さ厳しいこの時期には、あっさり、さっぱりとした味が特に美味しく感じられますね。そこで、今回は、酢を紹介致します。その酢とは、酒粕で造る「粕酢」、その色から「赤酢」の別名もある伝統酢のひとつです。

 

「粕酢」は、まろやかな甘味があるため、酢の物に使えば砂糖を加えなくても十分美味しく、糖質、カロリーが気になる方にはもちろん、また調味の手間も省ける嬉しい酢です。

江戸の風流!酒粕のみで造る飴色の酢「三ツ判山吹」で暑気払い!

酢の物は暑い季節にぴったりですね! 左:モズクとイカ 右:鯵と茗荷貝割れ

 

粕酢の誕生は江戸時代1804年のこと、知多半島の半田が発祥の地です。当時、半田では酒造りが盛んで、この地の酒は中国酒と呼ばれ、味と価格のバランスが良く江戸庶民に人気の酒でした。しかし幕府の政策の変更により、超高級ブランドの灘の酒の価格が下がり、庶民にも手が届きやすくなったことで、リーズナブルをウリにしていた中国酒の売り上げが激減し、多くの酒蔵が廃業に追い込まれたのです。

 

その中で起死回生を図ろうとする人物がいました。酒造りの廃棄物であった酒粕を使った酢造りを決断実行したのです。酒と酢は材料、発酵工程とも似ていますが、酒蔵に酢酸菌が入ると酒はすべて酢になってしまうので、酒屋はあえて酢造りに手を出さずにいたのです。そのタブーを破り、試行錯誤の末、粕酢造りに成功したのが中埜又座衛門でした。
彼のチャレンジはここで終わりません。当時江戸で流行っていた屋台の早ずし(現代の握りずしの原型)に目を付け、すし飯の酢として最適と、江戸に出て売り込みます。

 

すし飯には、米酢、砂糖、塩を加えますが、当時は米酢も砂糖も高価でした。ファーストフードの領域だった早ずしには、米酢よりずっと安価な上、砂糖いらずの手軽で旨い粕酢は、渡りに船でした。「江戸の寿司には半田の粕酢」となり、人気を博すのに時間はかかりませんでした。
この流れを逃さず、彼は粕酢を江戸での限定販売とし、その存在を確かなものにしたのです。中埜又座衛門とはミツカンの初代創業者です。

 

この半田で生まれた又左衛門の粕酢を紹介します。その名は「三つ判 山吹」です。瓶に入ったその色は、エッ⁉ 醤油と思うほど濃い褐色です。

 

「三つ判 山吹」の名の由来も江戸時代のこと。粕酢を樽詰め出荷する時、醸造蔵の印を付けました。中埜家は○中を三か所に焼印したことから三つ判、その酢の深い色がすし飯をほのかに染める色から山吹と名付けたといいます。

 

現在の酢醸造は、素になる酢を酸素と共に勢いよく材料液に注入攪拌し、数時間から数日という短期間で一度に均一品質の大量に造ることができます。
「三つ判 山吹」は、現在も江戸当時の醸造法を基本に、時間をかけて造ります。静置製法と呼ばれるその醸造法とは、熟成した酒粕を水に溶かした液体の表面に酢酸菌が自ら膜を作り、やがて液中に自然に対流が起き循環して酢になっていくのに任せるのです。静かにゆっくり待つ製法は、菌の力が十分に発揮されます。時と微生物が奏でるまろやかな旨みが生まれます。

江戸の風流!酒粕のみで造る飴色の酢「三ツ判山吹」で暑気払い!

茄子と卵の粕酢漬け中華風味 素揚げした茄子と半熟卵をタレに漬けるだけ。一晩冷やして爽やかに

江戸の風流!酒粕のみで造る飴色の酢「三ツ判山吹」で暑気払い!

鶏肉の甘酢炒めも粕酢の風味とたっぷり野菜の甘味で砂糖は控えます

 

我が家での手巻き寿司パーティーのすし飯は、ご飯に山吹を混ぜるだけです。シャリがほんのりと飴色になり、ほのかな甘みがネタのうま味を引き立てます。山吹の個性である酒粕の香りが気になるなら、少し米酢を混ぜても良いと思います。酢の物、特に魚介類には山吹を垂らし和えるだけでOKです。

 

酢豚などタップリ甘味が必要な料理にも、山吹を使えば砂糖を半分以下に控えることができます。

夏の冷たいドリンクとしてタンサン水に一匙垂らすとさっぱりとした口当たりのヘルシードリンクに!
アイスクリームに一掛けしても、お洒落感がプラスされ爽やかな口当たりです。

江戸の風流!酒粕のみで造る飴色の酢「三ツ判山吹」で暑気払い!

市販のバニラアイスにちょっぴりかけると、おもてなしデザートに! フルーツと焼き立てパイを添えて

 

山吹はネット販売のみです。ミツカン山吹で検索してみて下さい。

 

砂糖を加えず食材の味を引き出す酢の物の味。粕酢だけのすし飯は簡単、ヘルシー、その上ネタの味を引きたてる味です。夏の食欲不振も払拭してくれそうです。

 

是非、江戸時代から愛された粕酢のうま味を堪能してみて下さい!

※掲載情報は 2017/07/28 時点のものとなります。

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キュレーター情報

長尾典子

ライフスタイルデザイナー

長尾典子

日本伝統の知恵と美を取り入れた現代の食と暮らし方”Nippon Stylish Life”を提唱。

西宮市内のサロンと各地で、テーブルコーディネート・料理・英語・食文化をテーマに幅広く活動中。

季節開催「Japan Cool Seminar in Tokyo」では伝統美味食をテーマに、レストラン・料亭を会場に、その日だけのオリジナル料理を味わい学ぶ講座。

旅館・ホテルの食空間提案、英語による和食文化、テーブルコーディネートセミナー、オリジナル食器デザイン販売も手掛ける。

著書『12か月のLifestyle Book 食卓からしあわせは始まる』エピック
  『和食の力に魅せられて 伝統美味食の世界』エピック

食卓文化研究家、食空間コーディネート資格認定講師、卓育インストラクター、カラーコーディネーター、英語講師。

食空間コーディネート協会理事 
京都文教短期大学、大阪夕陽丘短期大学非常勤講師。
奈良女子大大学院生活環境修士。現在、現在、龍谷大学博士後期課程。
mail:nagao@a-de-v.com

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