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渋谷ハチ公のイラストが目印、とんかつにおすすめ!「ハチ公ソース」
父が外交官だったため生まれはインドネシアでしたが、帰国後は小学校、中学校、高校、大学とずっと渋谷区で過ごしてきた生粋の渋谷っ子の私にとって、懐かしい味といえばやはり「ハチ公ソース」です。
ハチ公という名の通り、渋谷生まれのこちらのソース。ウスター、中濃、フルーツと3種類のラインアップがあります。このハチ公ソースを知っている人がいれば、その方は相当な“渋谷通”かもしれません。
私がこのハチ公ソースに出合ったのは、現在再開発が行われている渋谷の旧東急プラザに入っていた昭和32年創業の老舗とんかつ店「渋谷 蓬莱亭」です。ここのとんかつソースはハチ公ソース株式会社に特注したオリジナルでした。とんかつにこのハチ公ソースをかけて食べるのがとても楽しみでした。
また、創業以来愛用している渋谷の和食の名店「並木橋 なかむら」でも人気メニュー「特製メンチカツ」に添えられているのがハチ公ソース中濃なのです。イタリアから来日したファッション関係者をよく連れていくのですが、ハチ公ソースをかけた熱々の「特製メンチカツ」は彼らも大好物です。
並木橋 なかむら の人気メニュー、特製メンチカツに添えられるハチ公ソース
ハチ公ソースは昭和21年から発売されたロングセラー商品。20種類の厳選された原料を使った、味わい深いソース。とんかつにぴったりの中濃ソースはトマトやリンゴなどをたっぷり配合したコクのある味わいで、誰もが親しみやすいどんな料理にも合うソースです。
そんなハチ公ソースの基本の味となっているのが、ウスターソース。タマネギ、人参、セロリーなどの厳選された野菜と調味料をたっぷり使い風味が引き立つよう凝縮しています。
なんといっても、ハチ公ソースの魅力は複雑な味わいなのに、とっても“まろやか”というところ。とんかつなどでもソースが食材の味を邪魔しないので、とんかつそのものの味を楽しみながら、脇役となり、さらに美味しさを広げる役割をきちっと果たしている点です。
ところで、どうして「ハチ公ソース」となったのかと疑問に思い、「ハチ公ソース」の歴史を調べてみたのですが、創業者の方が秋田県出身で、秋田犬のハチ公と同郷だったということです。ちなみに、ハチ公ソースが渋谷に移転した当時はまだ、ハチ公は元気に渋谷駅に迎えに訪れていたそうで、ハチ公ソースの長い歴史を感じさせます。
私の祖父は実際に渋谷駅でハチ公を見かけた時の話を、よく幼い頃の私にしてくれました。そんなこともあり、昔も今もハチ公は私のヒーローなのです。かわいいハチ公印のソースが食卓に並べば、ちょっとした会話のきっかけにもなりそうですね。
メンズファッションでも、シャツカフスやポケットチーフ、主役を引き立てる名脇役が必ずあります。ソースもそんな料理の味をさらに美味しくさせる重要な役割を持った名脇役なのかもしれません。
東京土産を知り尽くした方でも、ちょっとこちらのソースは思い浮かばないと思います。渋谷をこよなく愛する私が是非おすすめしたい隠れた名品「ハチ公ソース」。ぜひ、皆様にも味わっていただきたいソースです。
※掲載情報は 2017/07/24 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ファッション評論家
黒部和夫
最大手アパレルでメンズ商品開発室長、プレス責任者を歴任。
日本流行色協会、日本アパレル・ファッション産業協会、日本メンズファッション協会、繊維ファッション産学協議会、ファッション業界4団体の委員を歴任。
服飾に関する豊富な知識と幅広い交友関係を持ち、外見力向上、ファッション教育のスペシャリスト。
プルミエールヴィジョン 「明日のメンズファッションを語る世界の4人」に選出、パリにて世界のファッションジャーナリスト300人に講演。
NY在住の妹、パリ在住の従妹、各国の友人など国際ネットワークによる情報の速さにも定評がある。
欧米のファッション業界関係者から名付けられたニックネーム「カルロ」は国内外のファッション、PR、雑誌業界関係者に広く知られ、社名の由来となった。
(財)日本流行色協会メンズカラー選定委員。(財)ファッション産業人材育成機構 IFIビジネススクール特別講師。青山学院大学など各総合大学で講演多数。学校法人杉野学園ドレスメーカー学院特別講師卒業制作審査委員会委員長。
日経電子版「メンズファッション」にて連載中⇒http://style.nikkei.com/fashion/