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英国のクリスマスに欠かせない、クリスマスプティング
10月からスタートしたNHKの朝の連続ドラマ「マッサン」のヒロイン、エリーの故郷であり、また9月には英国からの独立住民投票が行われたりと、今年いろいろと話題になったスコットランド。スコットランドをはじめ英国のクリスマスに欠かせないお菓子が、クリスマス・プディングです。
スコットランドでは、このクリスマス・プディングの中に、幸せな結婚ができるといわれる6ペンス硬貨(現在は製造中止されています)や裁縫の指ぬきなどをしのばせて焼き、硬貨と指ぬきを引き当てた独身の男女は運命の相手であるという言い伝えがあり、ドラマの中でも、マッサンこと政春とエリーがこれらを引き当てた逸話が登場しました。これは実話のようで、二人のモデルであるニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝氏とリタ夫人の思い出の品を展示した北海道の余市のニッカの蒸留所内にある「ウイスキー博物館」を訪れた際、このロマンチックなエピソードがパネルで紹介されていたのが強く印象に残っています。
さて、このクリスマス・プディングは、プディングといってもいわゆるプリンのような柔らかさはなく、小麦粉に、油脂、干しブドウやスグリなどドライフルーツや、オレンジ、レモンなどの果物の皮、アーモンドなどたっぷり入れ、スパイス、ブランデーを加えて蒸し焼きし、寝かせて甘く発酵・熟成させた黒っぽいケーキです。
発酵・熟成させることでアルコール度が増して長期の保存がきき、12月のクリスマスのために秋のはじめや、1年もしくはそれ以上前から用意するのが定番。キリスト教徒にとって神聖なクリスマスの食べ物であることを表しているのは、キリストの茨の冠と流した血を忘れないためにケーキにひいらぎの枝と赤い実を飾ることで、食べる前にケーキにブランデーをかけて火で燃やすのが習わしです。そして温かくなったケーキをいただきます。
クリスマス・プディングは、もともとは基本的に各家庭で作り、それぞれの家庭代々の味があったのですが、最近は店で購入する家庭も多いようです。残念ながら6ペンス硬貨や指ゆきは入っておらず、ひいらぎの枝と実も付いていませんが、本場のクリスマス・プディングの味を知っておきたいときは、ロンドンを拠点にした有名百貨店「フォートナム・アンド・メイソン」や、もっとカジュアルなら、ショートブレッド・クッキーで知られる「ウォーカー」社が発売している英国からの輸入品がおすすめ。これらはクリスマス・シーズンに日本でも買うことができます。
クリスマス・プディングは単体ではとにかく甘くて、日本人にはたくさん食べられるものでもないかもしれませんが、そんな時はブランデーやラム酒入りのクリームをぜひ添えてみてください。おいしいハーモニーが味わえるはずです。
※掲載情報は 2014/12/07 時点のものとなります。
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キュレーター情報
各国・郷土料理研究家
青木ゆり子
雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。
地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。
「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。