愛が深まるオートクチュール・シャンパーニュ。「ローズ・ド・ジャンヌ」

愛が深まるオートクチュール・シャンパーニュ。「ローズ・ド・ジャンヌ」

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小さな畑だからこそ、メインストリームではないからこそ生まれる極上品。

シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』の編集長として10年。その10年を振り返って、それぞれの時代を飾ってきたシャンパーニュについて紹介した記事を先日まとめました。(外部サイト記事「シュワリスタ・ラウンジ10周年」http://www.shwalista.jp/topics/special/1506/

 

ここで紹介したシャンパーニュたちは活動を振り返ってのものでしたが、僕個人、シャンパーニュにはまった中で、このシャンパーニュメゾンとの出会いは、相当なインパクトをもったものでした。「ローズ・ド・ジャンヌ」。

 

2000年初ヴィンテージ。孤高というにはシャイな好男子、シンデレラというには地道、天才というよりは愚直。でも、そのすべてをひっくりかえして、シャイな好男子ではあるけれど孤高、地道でありながら世界から脚光を浴びるシンデレラ、愚直ではあるが天才としか言いようのないひらめき。うまい冠が見つからないワインメイカーのセドリック・ブシャール。基本は、彼一人で造り続けているメゾンです。

 

小さな畑、シャンパーニュの中でも南東の田舎、しかし、洗練されたデザインとなによりもすばらしき作品。その彼の創作の秘密については同じく僕のシュワリスタ・ラウンジでの現地訪問のテキストをご覧いただければ(外部サイト記事「連載『聖地を巡る~Vol.3 小さなこと、幸せなこと』」

http://www.shwalista.jp/archive/monthly/running/080807/index.html)幸いですが、お伝えしたい、僕が彼のシャンパーニュに教えてもらったことのひとつは、自分の土地、風土を愛し信じる力。

 

大手メゾンの誇りは、自然を相手にした答えのないはずのパズルの答えを組み上げ正解に導いていくブレンドの匠。シャンパーニュ中に広がる極上の畑から集められた葡萄、毎年絶え間なくストックされていくリザーブワイン。どんな天候の変動でも、不作、思わぬ暴走を生む豊作の年でも、そのメゾンの味と哲学を変えずに世界中で変わらず愛飲いただけるシャンパーニュを生み出し続ける。錬金術とスーパーコンピューターを組み合わせたのではないかと思える、それがシャンパーニュならではの凄み。

 

その一方で、ローズ・ド・ジャンヌのように、ちっぽけな畑で、毎年の気候に左右され、リザーブをストックする余裕もないワインメイカーの自然や大地への関わり方、そこから生まれるシャンパーニュもまた、魅力。単一畑(区画)、単一ヴィンテージ(収穫年)、単一葡萄品種のシャンパーニュを生み出すことにこだわるセドリック。これはリスクとなりますが、そのリスクを背負って乗り越えて造られたシャンパーニュの魅力はまた格別のものがあります。

愛が深まるオートクチュール・シャンパーニュ。「ローズ・ド・ジャンヌ」

今回紹介する、「コート・ド・ヴァルヴィレーヌ ブラン・ド・ノワール NV」は、その小さな畑の中で、さらに小さい一区画のみで栽培された葡萄のみで造ったもの。手間をかけ、ある意味では無駄とも思える行程を経るからこそ生まれる、無駄をそぎ落とした隙のない香りと飲み口。美しい。極上の素材を丹念に仕立てる。まさに彼が目指すオートクチュールという哲学から生まれる逸品。そして飲んでいくと、最初に感じた美しく研ぎ澄まされた黄金から、じわじわと湧き出し、まろやかに広がっていく、優しさ。

 

それはこの区画の土、この区画に吹く風、この区画に注がれる太陽や雨、こうした、「この区画だからこそ」を信じて、愛を注いできた結実。そしてこの区画は、世界的な評価を高め、スターワインメイカーとなった彼の次のステップとして、父親から譲り受けた場所。このシャンパーニュに記された樹齢40年というデータは単なるスペックではなく、ブシャール親子が紡ぎ、この先も続く物語でもあります。

 

クレイジーと思われても仕方がないセドリックのさまざまな栽培や醸造のやり方は、彼ならではのシャンパーニュへの、そして、この土地への愛情表現。多少、常識では測れない愛ではあるけれど、それゆえにどうしても魅力的に見えてしまう彼の愛から生まれるシャンパーニュ。抜栓の瞬間から、なんだか、自分に足りなかった「愛すること」、そのために情熱を注ぎ込む、多少クレイジーに思われても貫くこと、そんなことを教えてもらえるような気がしてしまうのです。

愛が深まるオートクチュール・シャンパーニュ。「ローズ・ド・ジャンヌ」

※掲載情報は 2017/02/14 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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