【第3回】クラフトビールに合うレシピ「ランビック」×「冷製トマトの煮浸し」

【第3回】クラフトビールに合うレシピ「ランビック」×「冷製トマトの煮浸し」

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これぞペアリングの醍醐味! 酸味×旨味

「ギャ!なに、この酸っぱいビールは!」と、今回のビール「ブーン グース」を試飲した「酒菜 おによめ」店主、本間淳恵さんが目を丸くしながら叫びました。彼女は強い酸味が苦手なのだそうです。ところが、彼女が作ったあるものと一緒に味わうと、想定していた以上にカップリングがマッチして「あれ?酸っぱくない。旨味が増して美味しい〜!」と、表情がパッと明るくなりました。

 

ビールとともに味わった「あるもの」とは、「冷製トマトの煮浸し」です。東京・高田馬場にある「酒菜 おによめ」のオリジナルレシピ。完熟トマトの酸味が溶け出した出汁は、ため息が出てしまうほどの旨味が、出汁の旨味がしみ込んだトマトを噛み締めれば完熟ならではの甘味が、口の中にいっぱいに広がります。トッピングの柚子胡椒はスープに溶かしてもよし、少量をトマトと一緒にいただいてもよし。ピリリとした辛味と塩気がアクセントとして加わり、口一杯に広がった柚子の香りが爽やかな余韻を残してくれました。

 

今回こちらに合わせた「ブーン グース」は、“ランビック”と呼ばれるビアスタイルのベルギービール。詳細は後述しますが、極めて強い酸味が特徴です。冷製トマトの煮浸しが持つ味の要素として「旨味、酸味、甘味、塩味」がありますが、出汁の旨味を生かせるビールにしたい、そして強い酸味を合わせることでトマトの甘味をより引き出したいという狙いがありました。

 

「ブーン グース」を口に含んでから出汁とトマトを一緒に一口。酸味に溢れていた口の中は、出汁と調和することにより酸味がまろやかになり、出汁の香りがパッと広がります。薄い塩味は強化され、トマトの甘味が強調されました。ブーン グースの酸味と出汁の旨味が結びつくことで、より濃い出汁とトマトの甘味が味わえるような感覚。うれしい驚きが味わえる、まさに“ペアリングの醍醐味”とも言える組み合わせです。

超酸っぱいビール「ランビック」って何?

さて、今回選んだ「ブーン グース」は、前述したようにベルギー独自の「ランビック」というビアスタイルです。ベルギーの首都、ブリュッセルの南西を流れるゼンヌ川流域に生息する野生酵母を使うことで他の酵母よりも発酵が進み乳酸菌も加わって、甘味をほとんど感じないドライな味と独特の酸味が特徴。長年貯蔵した古いホップと小麦を加えて自然発酵させた後、木樽で熟成しています。

【第3回】クラフトビールに合うレシピ「ランビック」×「冷製トマトの煮浸し」

ランビックの中でも「グース」とは、木樽で熟成した古いランビックと発酵を終えたばかりの新しいランビックをブレンドし、ボトルの中で二次発酵させたもの。従ってボトルはシャンパーニュと同じくコルクで栓がしてあります。グラスに注ぐと、豊かな泡立ちと共に現れるのは少々アンバーな色の液体。酢酸や乳酸を思わせる香りに、ほんのりチーズやトーストのような香りも感じられるでしょう。口に含むとビールとは思えない強烈な酸味に驚きますが、飲んだ後はほんのり甘いニュアンスを残してくれます。

 

最初は「これがビール!?」と驚いても、飲み続けるうちにハマってしまう人続出。また、ワインがお好きな人は割と受け入れやすいようです。以前、私が足を運んだフレンチレストランでも前菜に合わせてランビックが提供されていました。ちなみに、このランビックにサクランボやカシスなどの果物を漬け込み、甘酸っぱく飲みやすくしたビールが「フルーツ ランビック」です。

 

多くの醸造所でランビック グースを醸造していますが、今回「ブーン グース」を選んだ決め手は「ランビック グースの中でも飲みやすい」から。もちろん酸っぱいのは変わりありませんが、たとえば酒販店でよく見かける別ブランド「カンティヨン グース」よりもブーン グースはマイルドで甘味を感じるので、ランビック初体験の方におすすめです。

 

まぁ、マイルドなブーン グースをもってしても酸味が苦手な方には冒頭のように驚かれてしまうわけですが(笑)、食事との相性は間違いなく抜群。ぜひご自宅でのお食事やホームパーティーでお試しください。うれしい驚きに満ちた時間になることでしょう。

【第3回】クラフトビールに合うレシピ「ランビック」×「冷製トマトの煮浸し」

<レシピ>

 

■冷製トマトの煮浸し
*材料 <4人前>
 完熟トマト       4個
 昆布・カツオ出汁    800cc
 淡口醤油        少々
 塩           少々
 柚子胡椒        少々

 

1.トマトを湯むきする。
2.鍋にトマトを並べそっと出汁を入れ中火にかけ沸騰してきたら弱火にして約15分煮る(トマトが動かない程度の弱火)。
3.火を止めて塩、薄口醤油で味を整える。
4.あら熱を取って冷蔵庫で冷やしておく。
5.トマトと出汁をお皿に盛りつけ上に柚子胡椒を乗せ出来上がり。

 

■“おによめ”よりひと言
*トマトの大きさにもよりますが、できればトマトがピッタリ入るくらいのお鍋の大きさだと煮ている間にトマトが踊らず荷崩れしにくいです。
*出汁はトマトがひたひたになるくらいの量でOK。
*あまり長く煮過ぎるとトマトが崩れますのでご注意を。
*夏から秋に収穫するトマトはとても美味しいです。温めて召し上がっても美味しいですよ。


■ブーン グース
 原産国:ベルギー
 原材料:麦芽、ホップ、小麦、糖類、酵母
 内容量:375ml
 アルコール分:約7%
 醸造所:ブーン醸造所
 賞味期限:瓶詰め後20年

 

■酒菜 おによめ
 住所:東京都新宿区高田馬場1-23-14-1F
 TEL:03-6228-0246
 営業時間:火〜金 18:00〜23:30 
 休日:土日月
 https://www.facebook.com/syusaioniyome

※掲載情報は 2015/08/30 時点のものとなります。

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キュレーター情報

野田幾子

ビアジャーナリスト

野田幾子

ビアジャーナリスト/ビアアンバサダー
ビアコーディネーター
日本ビアジャーナリスト協会副会長

1994年にベルギービール、1996年に国産地ビールの美味しさに目ざめ、周りにクラフトビールの普及活動を開始。2007年にビアバー・ビアパブムック『極上のビールを飲もう!』(エンターブレイン刊)の全体構成、執筆、編集を担う。その後ほぼ毎年シリーズを刊行、2014年4月、6冊目「ビールのある日常をより楽しく」を提案するムック『ビアびより』(KADOKAWA・エンターブレイン刊)刊行、編集長。現在、ビール専門誌『ビール王国』に寄稿、編集担当。

クラフトビール入門者向けの講座を開催。
ビールと料理の組み合わせのスペシャリストであるビアコーディネーター(クラフトビアアソシエーション認定)。

2000年よりライター/エディターとして独立。株式会社コラボトリエ代表。
2010年、日本ビアジャーナリスト協会(JBJA)設立。同副会長。

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