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本場のチーズフォンデュを作るのに欠かせないチーズ
スイスのチーズ料理の中でも特に有名なのが、チーズフォンデュです。スイスでは、観光客のために1年中メニューに載せるレストランもありますが、本来は、寒い冬の季節に家族や友人と囲みながら楽しむ料理です。
チーズフォンデュに使われるチーズは2種類から3種類ですが、スイス西部にあるグリュイエール地方で生まれたスイスを代表するハードチーズの「グリュイエール」は欠かせません。
グリュイエールはクリーミーでコクがあり、やや酸味を感じさせる味わい。ナッツのような香ばしさもあるので、加熱するとその風味が際立ちます。優しく上品な風味は「チーズの女王」と呼ばれる所以となっています。
チーズフォンデュはグリュイエールチーズに風味の異なるエメンタールなどの別の種類のチーズを合わせ、ニンニクで香りをつけた鍋にいれ、辛口の白ワインを注ぎ溶かして食べます。スイスでは仕上げにナツメグとさくらんぼの蒸留酒「キルシュヴァッサー」を加えて香り付けをするのが一般的です。
スイス産のチーズを使ってこその本格的な味わいを是非、皆さんも味わってください。
チーズの穴には意味がある!熟成が生み出すコクを楽しむエメンタール
スイス北部のベルンから車で40分ほど走ると見えてくるのがエメンタール地域です。エンメ川が流れる谷にはのどかな田園風景が広がっています。こちらのこの土地で生まれた「エメンタール」は大きいものでは120キロにもなるハードタイプのチーズ。特徴的な穴のあいた断面が世界的にも有名なスイスを代表するチーズです。このエメンタールチーズ1個(100キロくらい)を作り出すためには、1200リットルの牛乳が必要となります。熟成期間は4ヶ月から長いものでは18ヶ月をかけてじっくりと熟成させます。
熟成期間が長いほど、熟成過程で発生する炭酸ガスが生じるため、「チーズアイ」と呼ばれる、チーズの穴の数は多くなると言われています。他のチーズに比べ、塩分が少なく、ほのかな苦味と甘みを感じさせる淡白な味わいなので、様々な料理に合わせやすいチーズです。
「チーズの王様」と呼ばれるエメンタールはスイスチーズの代名詞。フォンデュにも使われますが、木の実のような独特の香りやチーズアイを楽しむために、スライスしてそのまま食べるのもおすすめです。熟成期間も長いので、チーズの濃厚なコクが感じられ、摩り下ろして料理に加えると、料理の隠し味にもなります。
中世から始まった郷土料理トロトロのチーズを楽しむラクレット
フランス語で「削り落とす」という意味の“ラクレRacler”に由来して名付けられた「ラクレット」。その昔、ヴァレー州の山岳地帯に暮らす牧童たちが昼などに、焚き火のそばに石を置いて表面のチーズをとかして食べていたのがこのチーズの独特の食べ方のはじまり。
ラクレットは大型ハードチーズで、代表的な食べ方は半分にカットし、温めてトロトロになったら、茹でたジャガイモにからめて食べます。直径40cmほどにもなる大型のチーズを暖炉や薪窯などで溶かし、客に振舞うという伝統的な方法で提供するレストランもあります。現在は食卓で調理できる専用の電熱器で溶かしながら食べる方法が主流となっていて、レストランだけではなく、家庭用にも専用の卓上器があります。
500種類とも言われる郷土色豊かなチーズ
スイスを代表する農産物のチーズですが、スイス国内では、代表的な11種類のチーズを含む、450種類から500種類のチーズが生産されています。地域ごとに異なるこだわりのつくり方は歴史の中で大切に引き継がれてきた伝統の製法。輸出されている主要なチーズのほかにも地域ごとの郷土色豊かな歴史あるチーズが数多く存在します。
国土のほとんどが山地というスイスならではの高山植物や牧草を食べて健康的に育った牛のミルクでつくるチーズは非常に高品質です。硬質のハードチーズには、原料の牛乳の栄養分が凝縮されているため、フレッシュなものよりも多くの栄養が含まれています。
スイスは小さな国土ながら、生産量は世界のトップ10に上がるチーズ王国です。地域ごとの複雑な気候や風土の影響や、独自の伝統や文化を守る気質が500種類にのぼる個性的なチーズを生み出しています。
訪れた土地で、地域ごとに伝わるチーズを使った郷土料理を食べるのもスイスの食の文化を楽しむ醍醐味となります。
※掲載情報は 2017/03/17 時点のものとなります。
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キュレーター情報
スイス大使館
雄大なスイスアルプス、澄んだ湖、歴史ある古い街並みが魅力の観光大国、スイス。
隣接する国々の食文化の影響、地理や気候条件といった自然環境、4つの言語圏ごとに息づく個性的な伝統は、文化的多様性に富んだスイスに多彩な郷土料理も、もたらしました。湖でとれる魚料理、豊かな緑の中で放牧される牛から作られる乳製品など、スイスの食は土地の自然と密接に結びついています。また、スイスは、精密さ、熟練の職人技、イノベーションといった価値を日本と共有しています。このような価値観は、時計や薬品といった工業製品だけでなく、チョコレート、チーズ、ワインといった伝統的な食品にも反映されています。
知られざるグルメ大国スイス。伝統と最新技術が融合する食と、美食をさらに引き立てる、質の高い「食」を取り巻くスイス・デザインをご紹介いたします。