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天保元年(1830年)創業の老舗が挑んだ、日本初の商品
「日本のキャビア」とも言える発酵食品があることを、皆様ご存知だろうか。その製造を許可されているメーカーは、石川県に現在約7社と少なく、その希少性が伺える。発酵学の東京農業大学教授の小泉武夫先生が、自身の著書の中で「食の世界遺産第一号」として推挙したほど、日本が誇るべき発酵食品。それが「ふぐの子(卵巣)のぬか漬け」だ。今回はあら与さん(天保元年創業)が挑戦した、日本でここでしか販売していない希少な発酵のふりかけ、その名も「ふぐかけ」をご紹介したい。
地元の方たちは「ふぐのこ」、「ふぐの子」と呼び、発酵期間は2年と長い。私はこれを個人的に「日本のキャビア」と呼んでいる。昨年、石川県白山市らしい発酵食品は何かとアンケートを取ったところ、圧倒的一位に選ばれるほど、地元には根強いファンが多い。あら与本店にいらっしゃる御客様は、箱詰めにして贈答用にする方が多く「県外の方への手土産や贈答品に持っていくのは、これだよ。」と教えてくれた。記事を読んで製造過程に興味を持った方は、2017年2月26日(日)午前8:00~のNHK総合「小さな旅」をご覧いただきたい。
次の写真は2年の発酵期間を経たふぐの卵。完全に無毒になり、珍味として希少価値が高い。日本酒のおつまみが中心だが、白山市に行くと「ふぐのこ」のお茶漬けやペペロンチーノもメニューにある。美川駅のカフェでいただいたが、どちらもまろやかな塩味で美味しかった。
あら与さんでは、「ふぐの子のぬか漬け」を中心に多くの発酵食品を揃えているが、その中でも一番のお勧めは、「ふぐかけ」。このふりかけは、あら与しか販売しておらず、日本唯一の商品なのだ。ふぐの子のぬか漬けをフリーズドライして、全6種類(わさび、キムチ、ゆず、カレー、うめ、醤油)のふりかけに展開。
この中でも、私はわさび味が一番大好きだ。昨年、東京のOZマガジンさん主催の女子旅イベントで石川県の発酵文化について講演させていただいた。その会場にもこの商品は並んだ。「ふぐかけ」を試食するとみんな購入するため、あっという間に完売。試食の瓶を買いたいとおっしゃる方や、通販で購入するためにメモをしていた方もいた。
次の写真をみていただくと、こまかい薄茶色のプチプチとしたものが見える。これがフリーズドライしたふぐの子。この塩味がなんとも表現できない丸さがあり、わさびとほどよく合う。長期間発酵させることにより、塩はその化学記号を変化させることが広島大学の研究で分かっている。これが、「ふぐかけ」の“まろやかで自然な塩味”につながる美味しさにつながっているのだろうか。開封後も常温においておけるのも、うれしい。
私も石川県白山市の手土産として、わさび味とこれから春を呼ぶ梅味の「ふぐかけ」を詰め合わせにし、贈答用に包んでいただいた。東京のお寿司屋さんの女将さんへのお土産に。何度も「こんな貴重なものを、本当にいただいてもいいのでしょうか?」と聞かれた。これが本当の意味での“特産品”なのだろう。相手が喜んでくれることはもちろん、渡す側もうれしくなるのも、手土産を選ぶ楽しみである。
「ふぐは猛毒!」と思う方もいるだろうが、最後にもう一度。発酵により、ふぐの猛毒が無毒になることは証明されているので、ご安心いただきたい。出荷時には、石川県ふぐ加工協会で検査を通過したものしか出荷することができない。江戸時代末期の文献にも「ふぐの子(卵巣)の塩漬け」は記述が残っており、検査の制度がある前より日本人が食していたことは明らかだ。科学がなかった時代から、石川県白山市ではこの技術を含めて、豊かな発酵文化が脈々と受け継がれてきた(この白山地域の発酵食品に興味を持った方は、2017年2月26日午前8:00~のNHK総合「小さな旅」をご覧いただきたい)。
今回ご紹介した「ふぐかけ」は、そんな古き良い発酵食品を、現代人の求める「便利さ、食べやすさ、健康志向」へ合わせた商品として改良をしたもの。お酒のおつまみには「ふぐのこ」。日常使いや、子供や女性には「ふぐかけ」。天保元年の老舗の決断は、大きなものであっただろう。しかし、このような挑戦こそが、日本の伝統を守っていくのだ。
今年開山1300年を迎える白山。そこにしかない特産品を、旅行に行ったら探してほしい。石川県の白山市観光連盟アドバイザーに就任し、白山市を歩き回って知り尽くした高橋香葉が本気でおすすめする逸品。
※掲載情報は 2017/02/22 時点のものとなります。
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キュレーター情報
発酵料理研究家/観光連盟アドバイザー
高橋香葉
「日本人の体を健康できれいにするには、日本伝統文化の発酵食が一番良い」として発酵料理の研究に取り組む。テレビ、雑誌、書籍などを通じて、発酵食品の良さを伝える普及活動を行っている。
日本で初めて、米麹と醤油をあわせた新調味料「しょうゆ麹(醤油麹)」の作り方とレシピを公開し、発酵業界に新しい風を入れた。その活動は、フードアクションニッポンアワード販促部門を受賞。その後、読売新聞にて「オンリーワン」として掲載された。
現在は、日本全国を回り、全国の発酵食品だけでなく温泉巡りをし、日本の伝統文化を勉強している。
自治体の観光連盟アドバイザー、特産品開発審査委員などを歴任。市場調査から、販売戦略、プロモーションなどのマーケティング講師も行っている。フードアナリスト協会「食のなでしこ2016」。
主要著書:
◎「しょうゆ麹と塩麹で作る毎日の食卓」(宝島社)
◎リンネル特別編集「しょうゆ麹で作る毎日のごちそう」(宝島社)
◎「知識ゼロからの塩麹・しょうゆ麹入門」(幻冬舎)
◎おとなのねこまんま555(アース・スターブックス)等