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記事詳細
扉を開けばそこは英国のデリ・ベーカリー
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市ヶ谷のオフィス街の一角に、まるで英国からそのまま抜け出してきたようなデリ・ベーカリーがあります。看板に描かれた白鳥とライオンの紋章が印象的な「SWAN & LION」。英国人オーナーのイアン・ギビンスさんが2015年11月にオープンしたこのお店では、日本でなかなか出会うことができない英国伝統料理を楽しむことができます。
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店内にはこれからのクリスマスに欠かせない、ドライフルーツやスパイスなどから作られたミンスミートがぎっしり詰まった「ミンスパイ」がずらりと並んでいます。クリスマス期間中に12個のミンスパイを食べると、次の年は幸せに過ごせるという言い伝えがあります。星型のかわいいミンスパイが、クリスマスムードを盛り上げてくれます。
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紅茶文化が盛んな英国で、アフタヌーンティーの時に必ず出てくる焼き菓子が「スコーン」です。イチゴジャムとクロテッドクリームを添えて食べます。雪のような粉砂糖がこの季節にぴったりのデコレーションになっています。
好奇心を満たすために何でもチャレンジ!
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「SWAN & LION」のオーナーであるイアン・ギビンスさんは、異色の経歴の持ち主です。英国の大学で法律を学び、法律関係の仕事をしていましたが、法律の仕事を続けて行くことに疑問を感じた後、ワーキングホリデーでオーストラリアに渡ります。バイクのメッセンジャーやテレビ番組の制作など様々な職を経験しました。
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その後、仕事の関係で来日し、日本食材のクオリティーの高さや日本食文化に魅せられます。もともと学生の頃から食に興味があったイアンさんは、日本食材を使って趣味でジャムや英国伝統の「チャツネ」、「レモンカード」などを作り始め、マーケットなどで販売し始めました。そのおいしさが話題となり、本格的に料理の道に進み始めます。当時、日本では英国料理というと、ネガティブなイメージがありました。そのイメージを覆したいという想いから、いつしか自分のお店を持つ夢を描き始めたのです。
SWAN & LIONに込められた想い
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イアンさんがデザインした「SWAN & LION」の紋章には、彼の人生そのものが表現されています。英国王室の紋章にも使われている「ライオン」、オーストラリアに住んでいた時にファンだったフットボールチームのシドニースワンにちなみ「スワン」を取り入れました。平和の象徴である「ハト」と日本らしさを表す「松」が描かれ、その周りには食材が散りばめられています。それらの要素がひとつとなり、「SWAN & LION」のコンセプトである、英国料理の伝統を守りながら、様々な国の要素や食材を取り入れる「モダン&クラシック」が成立するのです。
「SWAN & LION」のこだわりの逸品
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イアンさんが趣味で始め、日本のマーケットで絶賛されたチャツネ。チャツネはインド生まれの調味料で、長い歴史の中で英国の食文化にも普及しました。野菜やフルーツに香辛料を加え、ペースト状になるまでじっくり煮込みます。イアンさんにとってこのチャツネは、日本で英国の食文化を拡げるためのこだわりの逸品で、ひとつひとつ手作りしています。今回、お店では「桃とナスのチャツネ」が販売されていましたが、桃を使ったチャツネは「SWAN & LION」オリジナルで、英国でもなかなかみつけることができないそうです。
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カレー風味のピクルス「ピカリリ」もイアンさんのお店では、レンコンやカブなど日本の野菜を取り入れたオリジナルのピクルスに仕上がっています。ローストビーフなど肉料理に添えると、味わいが深くなるのでおすすめです。
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デザートに「レモンカード」はいかがでしょうか。甘酸っぱいさわやかさを演出してくれるこのスプレッドは、ヨーグルトやアイスと一緒に食べてもおいしく、スコーンとの相性も抜群です。
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ミートパイ、きのことチキンのクリームパイなどクラッシックなスタイルのホットパイは6種類用意されています。ランチではパイとシチューのセットが提供されていて、メニューは季節によって変わります。お昼休みになると、多くのビジネスマンがこのメニューを求めてお店を訪れます。
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季節限定のパイも見逃せません。英国のクリスマスのメインディッシュと言えば七面鳥です。「SWAN & LION」では、冬の限定メニューとして、七面鳥のパイが提供されています。サクッとした食感のパイ生地に、柔らかくジューシーな七面鳥とスパイスが合わさり、さらに甘いクランベリーのソースが英国の味を思い出させます。クリスマスシーズン限定で、ローストチキンを注文することもできます。
ここにしかない「モダン&クラシック」
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お店に入って来るお客さんがイアンさんを見ると、嬉しそうに話しかけます。イアンさんは、人懐っこい笑顔を返し、会話を始めます。そして、お客さんは必ずイアンさんに親しげに話しかけます。まるで、イアンさんの家に遊びに来たかのような雰囲気を感じるこのお店は、お客さんにとっても安らぎを与えてくれる場所なのです。「SWAN & LION」が掲げる英国の伝統を守りながら、新しいものを取り入れていくというスタイルが、日本でも受け入れられていることがこのお店に来るとわかります。
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「今はテイクアウト専門店だけど、将来はカフェを開きたい。そしてその後には、英国スタイルのパブで、クオリティーの高い料理も楽しめる『ガストロ・パブ』を開きたい」。そんな夢の絶えないイアンさんは、「SWAN & LION」スタイルの新しい英国食文化を発信し続けています。英国でもなかなか味わうことができない伝統料理を、東京で味わってみてください。
※掲載情報は 2016/12/21 時点のものとなります。
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キュレーター情報
駐日英国大使館
駐日英国大使館、並びに、大阪の英国総領事館は、日本で英国政府を代表する機関であり、日本における様々な英国の利益をサポートしています。当館では、2006年から「A Taste of Britain」キャンペーンを展開しています。2012年には、エリザベス二世女王陛下の誕生祝賀会や、ロンドンオリンピック・パラリンピックを通して英国への注目が高まり、「美味しいイギリス」の今がより広く世界に知られるようになりました。
Food is GREATは、英国政府が2011年から世界に向けて展開するGREATキャンペーンのテーマの一つ。日本では、「Food is GREAT: A Taste of Britain ためしてみて、美味しいイギリス」として、パートナー企業のご協力のもと、英国フード&ドリンクのイベントを開催してきました。また、多くの方々に「美味しいイギリス」を体験していただける機会や、英国の食にまつわる様々な情報をFacebookで発信しています。ご家庭で気軽に「美味しいイギリス」を楽しんでいただけるよう、家庭用レシピもクックパッド「英国大使館のキッチン」で随時ご紹介しております。