ワインを通じて、もっと「知る」、「感じる」ブラジルの多様な魅力

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ブラジル南部の「トスカーナ」。四季と丘陵から生まれるピノ・ノワール

カナダ、アルゼンチン、アメリカはニューヨーク。これまでも南北アメリカ大陸の、「だからこのワインに注目したい」を紹介してきましたが、今回は、ブラジル・ワイン。ブラジルは今注目が集まる時期ではありますが、そんな単純な話でもありません。ワインを通じて、日本から見て常識だと思われていたものが、実は違うこともあるんだということを知って、その国や街のイメージがちょっと変われば、もっとお近づきになれる。それは実は、一連の記事のテーマでもあって、ブラジルのワインにも「意外」がいろいろあって、「多様」を感じられる。それがまた面白いのです。

 

意外もなにも、そもそもブラジルでワインって造れるの? という疑問も当然のことでしょう。我々の一般的なブラジルをイメージするキーワードをあげれば、そこにワインに連なるキーワードは皆無といってもいいかもしれません。高温多湿、情熱のビーチに神秘のアマゾン、広大な湿地と灼熱、陽気でセクシーな激しい舞踊。サッカーや格闘技をはじめとするさまざまなスポーツや経済成長といったキーワードもワイン生産と直接つながることもないでしょう。

 

しかし、改めてブラジルという国の地図を見ていただき、その広大さをもう一度感じていただければ、伝わってくることがあります。国土のほとんどは日本で一般的にイメージするブラジルかも知れませんが、ブラジルの地図で最も南のエリアを見ていただくと、すぐ隣には、一連の記事でワイン大国のひとつと紹介したアルゼンチン。その場所は、リオグランデ・ド・スル州。南大河州とも訳されるこの地は、アマゾン、ビーチではなく、夏は暑く、しかし、冬には氷点下、雪が降る場所もある、四季も感じられる丘陵や盆地が続くエリア。アルゼンチンやウルグアイといった、ワイン産地にも連なる、牧場やブドウ栽培に適した地であり、ドイツ、イタリア、東欧からの移民が多い、日本人が思い浮かべるブラジルの「景色」とは違う多様なブラジルの一端を感じられると聞きます。

 

ブラジル国内の6地域でワインは生産されていますが、その80%がリオグランデ・ド・スル州。17世紀から欧州の移民たちが、欧州のワイン産地にも近いキャラクターを持つ丘陵で、栽培を始めて約400年。この地で生み出されるワインは、躍動、陽気、情熱、パンチ、ビーチといった世界ではなく、実に落ち着いて、ゆるやかで、癒されるワイン。今回紹介する、「ミオーロ」。1897年にイタリアから移民したファミリーによって設立され、世界的に著名なワインコンサルタント、ミシェル・ローランを招いて、国際な品質、知名度向上にも取り組んできた、ブラジル・ワイン有数のファミリーカンパニーです。

ワインを通じて、もっと「知る」、「感じる」ブラジルの多様な魅力

「リゼルバ ピノ・ノワール」は、滑らかというよりも、柔らか。繊細というよりも、ゆるやか。飲むことに対して、作ったような刺激がなく、ワインに対して邪心なく、ただただ、気分よくリラックスしていく。酸そのものはしっかりしているのだけれど、それも刺激ではなく、やさしくすっと消えていく余韻を静かに助けているよう。飲みづかれもしない、食事の邪魔をしない。広がる世界は灼熱の太陽でもなく、広大な大西洋のビーチではなく、緑が生い茂るガーデン。その中に広がる緑の池、川のせせらぎ。吹く風はあくまでも優しく、静か。緑の水の香りがグラスの中のワインとともに、心身を落ちつかせてくれます。カジュアルすぎないけれどゆったりできる、高原のリゾートスタイル。くだけすぎず、でも、緊張を解いて。

ワインを通じて、もっと「知る」、「感じる」ブラジルの多様な魅力

シャンパーニュなどと同様の瓶内二次発酵を行うスパークリングワイン「キュヴェ トラディション ブリュット」も同様。ビーチパーティや派手なEDMが流れるクラブというよりも、夏の炎天下から、少し涼風が吹いてきたガーデンの夕暮れへ。その時間に、疲れた体へのゆるやかなご褒美に。日本、ふだんの日常なら家飲みでも。小さいバルコニーでも、観葉植物をたくさん置いて、その中で。部屋着に着替えて、気どらないグラスで、仕事や人ごみの緊張をほどきながら。気の置けない友達と一緒に楽しむなら、ハーブやスパイスを軽やかに使ったグリルチキンサンドにロースハムやアンチョビポテトなどを添えて。ちょっと隠れマリアージュなら、このワインに隠れている旨みと塩味にあわせて、レンコンの煮物も意外と……。

 

賑わうリオとその裏でのネガティブな話題も、湿地も高原も、激しい格闘技と涙もろい人情も、セクシーなビーチも勤勉のコーヒー農園も、その両面、すべてがブラジルの魅力であり、いくつかの問題でもあります。ブラジル・ワイン、特に、南大河州のワインを知ることは、ブラジルの多面と新たな魅力を感じるひとつのきっかけかもしれません。心癒されながら、ワインを通じて感じられること。いろいろあります。

 

食、文化、モード……。ブラジルの多面と魅力を紹介するWEBサイト『Be Brasil Tasteful Life』でもワインの紹介があります。今年だけで終わらない、ブラジルとの出会いがあります。(http://bebrasil.jp/

※掲載情報は 2016/08/01 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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