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“当たり前に使われる添加物”でなく“自然のもの”からつくる
最近、「オーガニック」や「無添加」などの加工食品が、購入できるような世の中に少しずつなってきています。しかし、どれだけ探しても無いのが「和菓子」なのです。デパ地下や老舗の和菓子屋さんでもどうしても、和菓子の世界では、着色料をはじめとする多くの添加物が使われているのが現実です。
洋菓子やパンは、昨今、素材や添加物にこだわる生産者さんが増えていますが、和菓子に関してはほとんど諦めていました。
日本の四季の美しさを表現し、昔から我々の食生活を彩ってきた和菓子ですから大切にすべき食文化だと思います。その和菓子の食の安全が、今一つ遅れをとっているのはどうしてなのか、疑問に思うと同時に洋菓子も好きだけれども、やっぱり和菓子も食べたいという思いは、私の中では強いものでした。
そんな中、和菓子業界では希少なお店「菓房はら山」さんと出会うことができました。
業界の異端児?!“自然”な和菓子を作る職人
現在、三代目社長の西田さんよりお話しを伺うことが出来ました。きっかけは、先代の二代目のお父様が「お風呂に入っても、手についた着色料が落ちない。そんなものを食べてよいのだろうか。」という疑問からスタートしたそうです。
表示をよく見る方は気が付いていると思いますが和菓子は、実にたくさんの添加物が使われているのが一般的です。合成着色料、化学抽出の着色料、乳化剤、PH調整剤、低甘味料、保存料、合成香料保湿剤、品質保持剤など、表示を見てみればわかりますが、たくさんの添加物が使用されます。
はら山さんでは、一部、重曹を使う商品がありますが、その他は一切使用されず、着色料も天然の野菜や果物を搾り取って色付けしているのです。生菓子も勿論、天然の着色料しか使っていません。手間がかかると思いますが、合成着色料がなかった時代は当然このように作っていたことでしょう。
添加物だけじゃない!平飼い卵や有機食材などの吟味した素材が基本
米、小豆、小麦粉などの農産物は、自然栽培や有機の食材を厳選して使用しています。また、卵は全て、遺伝子組換え飼料、成長ホルモン剤、抗生物質、合成食欲増進剤、抗菌剤、卵色着色剤を使用しない平飼いの鶏のものです。この徹底ぶりは、心から安心して食せる。しかも、これだけ素材にこだわっているのに価格がリーズナブルなのは、消費者にとって、なんて有り難いことでしょう。現代において数少ない本当に貴重なお菓子です。
和菓子業界では、その取り組みより、変わった存在となってしまうのかもしれませんが、信念を貫いてきた二代目お父様、それを守る三代目の息子さんの取り組みに、一消費者として、感謝したいと思います。
また、その思いと姿勢を表しているのが、浦和本店で見ることが出来る社長さんが未だ、こだわって飾る掛け軸にありました。
「大地自然」に、グッと心を掴まれました。
“これぞ本物の和菓子の味”を是非知ってほしい!
素材の良さだけで十分、衝撃、感動ものなのですが、さらに私を驚かせたのは、言葉では上手く表現しにくいのですが、理屈抜きに私の体が喜ぶような「味」「美味しさ」でした。今までにない和菓子の味です。
どら焼きも、お饅頭も、どれも見た目は、他のお店さんと変わらないのですが、味が全然違うのです。「他には絶対にない本物の和菓子」ということが直ぐにわかりました。
人工的、化学的な食感や食感などが全く感じられず「ひと昔前の田舎の料理上手なお婆ちゃんが、その場で作ってくれた和菓子に洗練度をプラスした味」という感じでしょうか。
正直なところ、「悲しいかな、添加物に慣れ切っている現代人には、この素晴らしさをどれくらい分かるか……。」ということも同時に頭に浮かびました。人工的な「ふわふわな」「滑らかに」「しっとりと」「もちっと」などの食感やわざとらしい香りや味なども全くなく、食材の味がシンプルに、ダイレクトに、そしてそれは同時にしっかりとその食材のもつ個性と奥深さを感じさせてくれるのです。
日本全国民に、日本人としてこの「本物の和菓子の味」を知っていただきたいと強く心から思いますし、それが分かる「自然な味覚」を持つ人が増え、「本物の美味しい食」が当たり前になる世の中になればよいと、願わずにはいられません。
地元を愛し大切にする和菓子屋
これだけ消費者にとって有り難いお菓子は、ほぼ皆無に近いので、全国に求めているお客様がたくさんいるのではと、西田社長にお話ししました。しかしながら、素材や作業にこだわり、添加物も使わないので、なかなか地元の浦和以外での出店は難しいとのことでした。通販商品もありますが、浦和でしか販売できないものが多いのです。
また、西田社長いわく、多くの方に食してもらいたいが、浦和以外への展開となると浦和の事業に負担が増えることを考えなくてならないとのことでした。浦和で育ち、浦和の街の人に愛されてきたことも大切にしたいという思いと、社長の地元への深い愛情が感じられました。
「地産地消」、「身土不二」という言葉が浮かびます。そこでしか食せないものの貴重さ、そして本来の食というものはそういうものですから、そのような思いや今の販売形態も、はら山さんの魅力ではないかと思いました。
商品にも、浦和という土地や歴史を重んじる「浦」「宮うさぎ」などの商品がいくつかあります。
難しいながらも頑張ってつくる季節の商品も
自然の食材、添加物無し、ということで、どうしても作れる菓子の種類も少なくなってしまうそうです。商品の多さが魅力となる場合もありますが、はら山さんには、自然の食材で作れる範囲の和菓子を種類が少なくてもよいので、こだわり続けて欲しいと思います。
そんな中で、試行錯誤しながら作る、貴重な季節の和菓子も楽しんでみてください。
今の時期であれば、パックされている水羊羹などは日持ちがするそうです。是非、お盆や夏休みのお土産や御遣い物にいかがでしょうか。
豊かな自然と四季に恵まれている日本。春夏秋冬それぞれの季節を楽しみ、そしてそれぞれの季節にしかないものを慈しむ文化が日本にはあります。和菓子もその一つでしょう。食を通し四季を愛でながら、美味しくいただける和菓子は、我々にとって奥深く、そして誇りと言えるでしょう。その大切な食文化であり、歴史ある和菓子こそ、真の豊かな自然から作られるべきだと私は考えます。和菓子業界に、本物の和菓子が受け継がれていることを心から願っています。
※掲載情報は 2016/08/14 時点のものとなります。
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キュレーター情報
自然派栄養士・ソムリエ
麻乃じゅん
【保有資格】
・管理栄養士
・調理師免許
・製菓衛生士
・ソムリエ(日本ソムリエ協会認定)
・ファスティングマイスター・エキスパート
国内の航空会社に国際線客室乗務員として在職中、ソムリエ資格を取得
退職後、栄養士養成大学で学び
管理栄養士免許をはじめとする食や健康に関する資格を取得
自治体や民間企業、クリニックなどで公衆栄養、集団栄養指導、個別栄養相談などの業務に携わる
現代栄養学や西洋医学の現場で経験を積む中
カラダのみならず、「心・人生を豊かにするための食」について探求し
東洋医学や思想の世界についても学びはじめる
その中で、我々は自然の一部であること、真の食との繋がりに気付く
そして、それら現代人が忘れている大切なことを
伝えるべくフリーランスとしての活動をスタートする
また、福島県に生まれ自然の中で育った者として
2011年の原発事故以降、さらにその思いが強くなり
活動の範囲を広めている
現在も、セミナー、自然系・無添加料理教室、カウンセリング等を通じ
現代社会における“食”との向き合い方を提案しながら、
手作りや料理体験のすばらしさを数多くの場で伝えている。