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はちみつって体にいいことがわかっていても、種類や効果の違いまではなかなかわからないですよね。今回は、はちみつのスペシャリストとして、日本はちみつマイスター協会の代表理事を務める平野さんを取材しました。ippinでは平野さんの記事を読めば、誰でもそのはちみつについて語れるようになるほど網羅性の高い情報を発信。そんな平野さんに、改めてはちみつの魅力や日常での取り入れ方、美容に効果的なはちみつなどについて教えていただきました。
日本はちみつマイスター協会について
※講座では、実際に食べて「自分がどう感じたか」を感じてもらっています
【平野さんが代表を務めている「日本はちみつマイスター協会」は、どのような目的で生まれたのでしょうか?】
みなさんにとってはちみつは、“手元にあったら食べるけれど、なくても生活できる嗜好品”ではないでしょうか。甘いものであれば他にいくらでもありますよね。そういう中でいかにはちみつを根付かせることができるか、そのためにもっとハチミツを食べてもらいたいとの思いで生まれたのが、はちみつマイスター協会です。
【「はちみつマイスター」講座の受講生には、どのような方が多いですか?】
圧倒的に女性が多いですね。もともと通信講座のみでしたが、今は通学の方たちが高くなっています。通学講座では、当協会が独自に考案した食べ方ではちみつを食べていただきます。そうすることで普通に食べるよりも、はちみつの味が途中で変化することがよく分かるんですよ。
はちみつの味は、食べ方一つで全く変わる
※野菜のように、産地や養蜂家などによって全く味が違います
【はちみつの味の違いには、どのようなことが影響するのでしょうか?】
はちみつには種類があってそれぞれ味が違うことはお分かりだと思いますが、実は同じ種類でも食べ方を変えると味わいが全く違うことは知らないのではないでしょうか。それがわかると、はちみつの産地やどんな蜜源植物から採られたものなのか、その蜜源植物がどのような場所に生えていたものかまで分かるようになるんです。
例えば、同じアカシアでも日本、イタリア、フランスのアカシアでは味が違います。同じ日本の中でも、北海道のアカシアと東京のアカシアでは違うし、もっと厳密に言えば養蜂家によっても違ってきます。さらに気候や温度、雨の量によって植物の蜜が出る期間も変わるため、その年によっても味が変わります。そこまでわかると、食べるのが楽しくなりますよ。
【講座で行われている独自の食べ方というのは、具体的にどのような方法ですか?】
一番重要なのが「温度」です。ミツバチの巣の温度は34〜35度で、人間の体温にほぼ近い温度と言えます。だからそれより低い温度で食べても、はちみつの本来の美味しさがわからず甘いだけで終わってしまうんですね。それではちみつに含まれている蜜源植物の栄養やミツバチが加えている酵素など、本来の美味しさがわかりません。そのような本質を理解するためには、温めてあげることなんです。
具体的には、“口に含んだまま温度が上がるのを待つ”という食べ方をします。唾液が出るまで口の中にとどめて味の変化が分かると、本当に美味しくて、みなさん目がキラキラしてくるんですよ。美味しいものを食べると感動するのと同じように、はちみつもこの食べ方をするだけで感動できるんです。
売る側にその知識がないから、はちみつの専門店で試食を出されても「唾液が出るまでそのまま待ってくださいね」とは言われたことがないですよね。そのように提案すれば、はちみつがもっと売れるのに……と思います。
【はちみつを口の中で溶かして食べることで、味や香り以外にも効果はありますか?】
はちみつを口の中で溶かしながら食べると、はちみつの栄養素が第一の消化器官である口で早く吸収されるというのがまず一つ。
また、口の中はウイルス性のものが入りやすい場所でもありますが、はちみつを唾液と混ぜることによってグルコースオキスターゼという殺菌作用がある過酸化水素が発生します。だから、ウイルスや悪い菌が体内に入るのを防ぐ働きをしてくれるので、風邪をひきやすい人や胃腸の弱い人、歯周病の予防にも効果があります。
また、粘度が高いはちみつを歯磨きに使うと、歯垢が取れて歯の表面がツルツルになります。あの甘いはちみつが、歯磨きに使っても歯磨き後に食べるだけでも、実は虫歯予防になるんです。
はちみつの知識ゼロから、スペシャリストへ
※おいしい食べ方を知ったことで、ますますはちみつの奥深さを知りました
【平野さんが、はちみつに興味を持つようになったきっかけを教えてください。】
実は私、生活協同組合の営業をしていました。そのとき今週の特売など素材を生かしたレシピを自分でつくってお客様に配っていました。
ある時“今度こういう資格を作りたいので、はちみつを使った料理ができる人を探している”というお話を偶然いただき、そこから自分ではちみつについて勉強を始めたんです。
最初は知識が全くなくてはちみつがどうやってできるのかも知らなかったので、たくさん本を読んだり養蜂場に伺う中で、「味が違うのはなぜなのか?」と考えるようになりました。そしてある日、固いはちみつを口の中で溶かしていると、味の変わる瞬間があることに気がつきました。はちみつの食べ方が大事だとわかったのは、そこからです。
【今まで何種類くらいのはちみつを食べた事がありますか?】
今、世界中にあるはちみつは、1000種類以上と言われています。いわゆる植物の名前が付いているようなはちみつですね。ただし、ほかにも何のはちみつとは言えないようなものもありますから、それも含めると数は2000から3000種類になるかも知れません。その中で私が食べてきたはちみつは、まだ1000種類には至っていないと思います。
イタリア、フランス、オーストラリア、今はオーストリアも多くなってきましたけど、ドイツのはちみつもなかなかですよ。そしてアフリカでも結構採れるんですよ。砂漠地帯やタンザニアとか、あの辺のところは結構多いかな。
【今まで出会ったはちみつで印象的だったのは、どんなはちみつですか?】
◆皇蜜(こうみつ)
ippinで私が一番最初に記事で取り上げた、中国の「皇蜜」というはちみつですね。あれはもう衝撃でした。こんなにクリーミーで、まるで生クリームのように口の中で溶けていくはちみつがあるのかと。しかも冷蔵庫で保管しなければならないのも珍しく、かつて皇帝に献上されたことから皇蜜という、名前にも納得のはちみつです。
◆オヒア・レファ・ブロッサム
これも以前ippinでご紹介させていただいた、ハワイのはちみつです。はちみつなのにしょっぱいんです。瓶の蓋を開けた途端に磯の香りがして、食べるとミネラルの塩味がします。はちみつの成分にはもともとミネラル分は含まれていますが、味として感じられたのは初めてだったのでびっくりしました。
趣味と仕事が一致する、はちみつ漬けの毎日
※趣味と実益を兼ねた仕事で幸せです、と平野さん
【今でも新しいはちみつとの出会いはあると思いますが、日々どのようにして取り入れていらっしゃいますか?】
はちみつを絶対食べるのは朝昼晩の3回です。朝は、スムージに入れる形ではちみつを食べています。その日によって、使う果物や野菜に合わせて使い分けていますね。我が家には、200〜300種類くらいのはちみつがあるんですよ。
常備しているのはソバや栗、玉ねぎ、など癖のあるはちみつもたくさんありますが、中でも料理に使いやすいもの。あまり特徴的すぎないはちみつは重宝しますね。私の場合は王道のアカシアではなく、レモンやオレンジなど柑橘系のはちみつが多いかな?其れとロシアのリンデン他ハーブのはちみつはちみつもよく使いますね。もちろん料理に砂糖は一切使いません。だから普通に500gとか、気に入ると1kg単位で購入しています。
夜には、寝る前にはちみつを単体で口にします。パキスタンの高級はちみつの「シドルハニー」とか。高くてもったいないんですけどね(笑)。今すごく気に入っているのが、石垣島産のハーブ系のハチミツですね。あとは「カラスザンショウ」のハチミツも好きですね。
ハチミツには、睡眠の質を高めてくれる成分が含まれているんですよ。この仕事をする前までは、入眠まで2時間くらいかかっていたのが、ハチミツをとるようになってからは、すぐ眠れるようになりました。リラックス効果があって深い眠りにぐっと入っていけるので、短時間の睡眠でも割と大丈夫です。量で言うと、スプーン1杯くらいでしょうか。
【ハチミツを取り入れるのにおすすめの食べ方や、ハチミツの便利な使い方があれば教えてください。】
小さいお子さんのいるご家庭では、レモンの上にはちみつをかけたはちみつレモンを作っておいて、そのシロップを食べるだけでもすごくいいですよ。はちみつが苦手でもこれなら食べられますし、オレンジでも応用可能です。ヨールグトにはちみつをかけて食べる方は、常温に戻すか少し温めてあげると吸収率がアップします。
また、お味噌や醤油などいつも使う調味料に、はちみつを加えて常備しておくのもおすすめです。お味噌ならご飯のお供として楽しめますし、ゴマも加えて何かに塗ったり、ディップソースとして野菜に付けて食べたり、ということができますね。
お味噌や醤油は発酵食品ですが、その効果がはちみつととてもよく似ているんです。そのように同じような効果を持つ食べ物を合わせることで、効果が何倍にもなるわけです。少し寝かせておくと酵素が増えていきますから、さらによいですね。鯖の味噌煮を作る時にハチミツ入りのお味噌を使っても、味がまろやかになります。
【美容に効果のあるハチミツというのも気になります。どのようなものがあるか教えてください。】
※美容効果のある「ローシドル」(左)と、ロシアの菩提樹のハチミツ「リンデン」(右)
◆ローシドル
ここにご用意したのが、ローシドルという完全非加熱のはちみつです。シドルとはナツメのことですが、漢方でも使われていて滋養強壮によいとされています。また非加熱ということは、酵素が非常に強く、水分を加えることで発生する過酸化水素の発生率が高いのが特徴です。
本来はちみつは発酵してはいけないと言われていますが、このシドルの場合空気に触れることでどんどん発酵していくんですね。そうすると白く泡合って来るわけです。それを食べたり肌に塗ると、美容効果がすごく感じられるんですよ。しかもはちみつのすごいところは、水で30倍に薄めても殺菌力が落ちないこと。水分と混ざることで過酸化水素が発生するので、濡れた肌や水で薄めて付けた方がより効果的ですよ
【ハチミツにまつわるもので、普段愛用しているアイテムなどがあれば教えてください。】
※はちみつを持ち歩くための、無印良品の携帯用チューブ
◆無印良品の携帯用チューブ
いつもハチミツを持ち歩いている私が愛用しているのが、この無印良品の半透明のチューブ。本来の商品用途は旅行用にシャンプーなどを入れて使うものですが、これにハチミツを入れて移動中に食べています。
細長いスプーンで中身を移し替えて、下の方を手で潰して吸い上げて食べるんです。電車の中とか(笑)。ちょっと疲れちゃったなというときや手持ち無沙汰なとき、眠いな……というときにも食べますね。二日酔いも防いでくれるので、お酒を飲んでいる最中に食べるのもおすすめですよ!
【ご自身で企画された、はちみつを使った商品があれば教えてください。】
ロシアの菩提樹のハチミツ「リンデン」と、先ほど美容効果のお話でも登場した「ローシドル」がそうです。基本的には、私が食べて美味しいと思ったものをプロデュースさせていただいています。一つ一つのはちみつにはストーリーがあるので、そのストーリーを背景としつつ、いかに皆さんに感銘を受けていただけるか、ということを大切にしています。
「リンデン」の場合は、何年か前に、ロシアのある地方産のリンデンを日本に輸入するためのお手伝いをしたことがあって、残念ながらそのときは実現しなかったのですが、いつか日本で紹介したいと口にしていたら、ひょんなことからプロデュースを持ちかけていただいて実現したものです。
「ローシドル」については、高級感と化粧品っぽいイメージを持たせるために真っ白いボトルを選び、ラベルはアラブ地方を思わせるランプをモチーフにした形を採用しています。
実は意外な一面も。はちみつが変えてくれたこととは?
※はちみつが思考そのものを変えてくれました
【今後、はちみつを使ってやってみたい事や夢はありますか?】
実は、同じはちみつを食べるのでも、朝、昼、夜では味わいが違い、その時の体調によって味の感じ方が変わるんです。一時、サプリのバーがありましたよね?あのようにちゃんと知識を持った人が、お客様ごとの体調に合わせてハチミツを提案するようなお店をやってみたいですね。
あるいは、はちみつをテイスティングしていただくとどのハチミツを美味しいと思うかで体調もわかるので、そういったカウンセリングを通して、今その方の体調に合うはちみつを提案できるお店をやってみたいと思っています。ハーブティなども揃えて、元気になるための癒しスペースのようなイメージですね。
【日常で今何か“マイブーム”があれば教えてください。】
私はこう見えて人見知りなんです。人がたくさん集まるような場所に出て行って自分から声をかけたり、名刺交換をするのがとても苦手です。なんとか克服しなければならないと思って、ベストセラーにもなった安田正さんの「超一流の雑談力」という本を何度も読んでいますね。そのお陰であまり知識のないジャンルのスペシャリストとお話をするような場面でも、会話につながるキーワードを拾って質問ができるようになってきたように思います。
【最後に、ハチミツは平野さんにとって、どのようなものですか?】
私はこう見えて根はネガティブで、すぐ鬱になってしまうんです。それを変えてくれたのがはちみつ。忙しくてハチミツをあまり食べなかったり疲れてきたりすると、すぐ傷ついちゃう。でもはちみつを食べると、脳が元気になるんです。打たれ強くなるというか。だから、身体だけでなく思考そのものを変えてくれるがはちみつにはあると思っています。
【プロフィール】
日本初のはちみつ資格「はちみつマイスター」を養成する、「特定非営利活動法人 はちみつマイスター養成講座」の本部講師として、通信講座のテキスト作りやテイスティング講座・はちみつ美容講座などを開催。はちみつを食べる事で鬱を克服した経験をもとに、2012年「一般社団法人 日本はちみつマイスター協会」を立ち上げ、はちみつが持つ個性や特徴を引き出す食べ方や使い方を提案。主に通学講座、セミナー、テレビ、ラジオ、雑誌等ではちみつの素晴らしさを紹介している。毎年8月にはちみつづくしのイベント「はちみつフェスタ」を主催し、はちみつ好きにはたまらないイベントとして定着。その他、レシピ製作、企業セミナー、はちみつ専門店の社員教育等にも携わる。美肌になるための衣食住に使えるレシピ本「美肌メソッド」(河出書房)監修。
http://www.83m.info/event/2014-festa.html
※掲載情報は 2016/06/10 時点のものとなります。
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