エディブルフラワー
株式会社脇坂園芸 直売所 Soel(新潟県阿賀野市境新128)
「エディブルフラワー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
日本語訳すると「食べることができる花」、いわゆる食用花のことです。「エディブルフラワー」と聞くとなんだか馴染みがないように感じるかもしれませんが、日本では昔から、菜の花や食用ギク、シソの花などが知られています。また、バジルやローズマリーなどの馴染み深いハーブも、エディブルフラワーの一種です。
エディブルフラワーは、特にヨーロッパを中心に日常的に使用されていましたが、ここ数年は日本でも生産される種類が多くなり、流通量も増えて、レストランでお料理に使用されたり、スイーツ類に使用されたりすることも増えてきました。
今回は、そんな華やかなエディブルフラワーについてご紹介したいと思います。
今回ご紹介するエディブルフラワーの生産者である脇坂園芸(新潟県)では、もともと観賞用の花の栽培を行っていました。代表の脇坂氏はエディブルフラワーの存在自体は20年も前から知っており、頭の片隅にはあったそうですが、忙しくて実行することもないまま日々が過ぎていきました。
そんな中、エディブルフラワーの栽培を開始するきかっけになったのは、2011年に起きた東北大震災でした。緊迫する状況の下、支援物資の拠出依頼があったものの、観賞用の花の栽培をしていた脇坂さんには拠出できる物資がありませんでした。強い無力感に苛まれ、また、食べられないものにお金をかけて生産をしていることに罪悪感を覚え、花の栽培をやめようと思うほどだったそうです。
しかしその後、岩手県大槌町に植栽のボランティアに行った際に、同じくボランティアで来ていた若者から言われた「震災直後は必需品が大事ですけど、少し落ち着いてきた頃には癒しが必要なんです」という言葉が、「花の生産なんて……」と無力感に苛まれていた脇坂さんの心に響きます。「食べられればいいんだ、そうか、花を食べればいいんだ!」脇坂さんがエディブルフラワーの生産を決意した瞬間でした。
その後、2014年には、エディブルフラワー直売所である「edibleGarden Soel」をオープン。脇坂さんやスタッフのみなさんのお人柄も手伝って、連日多くのお客様でにぎわっています。
エディブルフラワーは、実は栄養価が野菜以上にあったり、ハーブやスパイスのような役割を果たしてくれたりもします。しかしなんといっても一番の魅力は、やはりその美しい見た目でお皿を華やかにし、食べる人に感動と癒しを与えてくれることです。ちょっとお皿に加えるだけで、食卓を一気に華やかにしてくれる、そんな力を持っています。
食べ方としては、生食が一番オーソドックス。いつものサラダやデザートにぽんと乗せるだけでOKです。「それだけでいいの?」と思われるかもしれませんが、ただお花を乗せただけなのに、それだけでお料理がぐぐっと華やかになって、楽しい気持ちにさせてくれるのが、エディブルフラワーのいいところなのです。
たとえば、ポテトサラダを土台にして、まるでケーキをデコレーションするようにエディブルフラワーで飾り付けをすると、なんだかケーキのようで、お誕生日の時などにおすすめです。最近ではウエディングケーキの飾りつけに使うことも多いのだとか。
味は、ピリッとしたものから酸味のあるもの、苦味のあるものなどさまざまなので、料理に使う前に少しかじってみて、味の傾向を確かめてから使用してくださいね。
さて、とても素敵なエディブルフラワーですが、ひとつ注意していただきたいのが、「花はなんでも食べられるわけではない」ということ。
エディブルフラワーとして流通している花は、食用にするために育てられたもので、化学農薬を使用せずに栽培しているところがほとんどです。観賞用の花の栽培には農薬の使用制限がないため、様々な農薬が使われていたり、食すと害になる成分が含まれていたりすることもあります。また、公園や道端に咲く花の中には毒を含むものもあり、それを素人が見分けるのは大変難しいため、野の花には手を出さないように十分に注意してください。
エディブルフラワーを楽しむ時には、きちんと「エディブルフラワー」として流通しているものを選び、安全においしく楽しみましょう。
さて、とても素敵なエディブルフラワーですが、生花ですので、数日経つと枯れ始めてしまいます。そこで、少しずつ長く使いたい!という方向けに開発されたのが「フラワーソルト」です。
美しい色を保ったままドライにしたエディブルフラワーに、こだわりのお塩をブレンドしています。ベースとなる塩は、どちらも愛用者の多いフランス産「ゲランドの塩」と新潟県村上市産「白いダイヤ」の2種類。美しい色合いが映えるように、白身の魚やバニラアイス、チョコレートケーキにぱらりとふりかけるのもおすすめです。
「ゲランドの塩」がベースになっているタイプは、塩の色が灰色で、土の香りがするので、少しビターなチョコレートケーキやチョコレートアイスにトッピングするのがおすすめ。
「白いダイヤ」がベースになっているタイプは、塩の色が純白で、海の香りがするので、白身魚のカルパッチョやソテー、バニラアイスにぱらりとふりかけるのがおすすめです。
生で、ドライでと、色々な楽しみ方のできるエディブルフラワーですが、共通点は「癒し」。
どちらもとても気軽に使えるので、ぜひご自宅での癒しを体験してみてくださいね。
株式会社脇坂園芸 直売所 Soel(新潟県阿賀野市境新128)
※掲載情報は 2016/02/20 時点のものとなります。
ソルトコーディネーター
青山志穂
東京都出身、沖縄県在住。
大手食品メーカー勤務から一転、塩に魅せられて塩の道へ。塩の専門店で社内資格制度の立ち上げなどを行ったのち、2012年に(社)日本ソルトコーディネーター協会を立ち上げて独立。現在は、塩のプロフェッショナルであるソルトコーディネーターの育成のほか、全国を飛び回りながら、塩の基礎知識や使い方などに関する講座や講演、テレビやラジオ、雑誌などへの出演、塩売場のコーディネートなどを行いながら、塩の啓蒙活動に努めている。有名シェフとの塩をテーマにしたコラボレーションイベントや食品メーカーの商品企画も手掛ける。著書に「塩図鑑」(東京書籍)「琉球塩手帖」(ボーダーインク)「日本と世界の塩の図鑑」(あさ出版)など。