森と人の手が育てたバニラビーンズ

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持続可能な栽培を目指すアグロフォレストリー

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バニラは中央アメリカ原産の植物で、ヨーロッパ人によって世界各地に広められたもの。今日ではマダガスカル産が有名ながら、ウガンダ共和国で興味深い生産が行われていて、注目している。この植物、他の植物に絡んで育つもので、熱帯で栽培されるものながら日蔭を好み、授粉には人の手が必要というもので、他の植物と人間のお世話があって成り立つというなかなかの難物。しかも、小さな粒のような実(バニラビーンズ)は細長い莢(さや)の中に詰まっているのだけれど、収穫したままではただ青臭いだけ。この莢をボイルして台の上に広げ、何度も並べ直しながら3カ月もかけて乾燥・熟成させると、あの甘い香りを放つバニリンという物質が現れる。

 

熱帯での作物栽培は、とかく病害虫との闘いが問題になるもの。だから農薬を使う場合も多いし、丈夫に大きく育てようと化学肥料が使われる場合も多い。ところが、人手もかかる上にケミカルにもお金がかかるのでは経営的にたいへんだし、環境への影響も気になるところ。で、ウガンダで行われている興味深い栽培というのが、森を育てて、その生態系の中で作物を育てるアグロフォレストリーという農法。これは、他の植物に頼り、日蔭も欲しいバニラにはぴったりのやり方で、上手にやればケミカルの使用を回避できる。そして、ウガンダは赤道直下で森を育てる日光はたっぷりながら標高が高いので病害虫を抑えやすく、働く人にも優しい気候なのだとか。

お菓子だけでなく煮込み料理にも香りを付ける

森と人の手が育てたバニラビーンズ
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ウガンダでのバニラ栽培自体はイギリスの植民地時代からながら、ここでアグロフォレストリーによる栽培を推進しているのが、株式会社坂ノ途中という京都の会社。持続可能な農業生産の普及とその農産物の販売を行っている会社で、ウガンダではバニラの他にゴマ、シアバター、はちみつなどの生産にも携わる。そして今年5月、三越伊勢丹が展開した「グローバルグリーンキャンペーン」の中でこのバニラが取り上げられた(上の写真はそのキャンペーンで扱われたこのバニラ使用の紅茶)。このキャンペーンでは、バニラの製菓以外の用途も示されたのがまた興味深かった。オリーブオイルに漬けておいて、それを煮込み料理やスープに使うとよいとのこと。

※掲載情報は 2015/07/25 時点のものとなります。

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キュレーター情報

齋藤訓之

FoodWatchJapan 編集長

齋藤訓之

北海道函館市生まれ。1988年中央大学文学部卒業。レストランビジネスを志していたはずが、レストランビジネスに役立つ本を作る仕事にのめり込む。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、日経BPコンサルティングのブランド評価プロジェクト「ブランド・ジャパン」プロジェクト責任者、農業技術通信社「農業経営者」副編集長等を経て、フリーランスのライター・編集者として独立。2010年10月株式会社香雪社を設立し、農業・食品・外食にたずさわるプロ向けの情報サイト「Food Watch Japan」をスタート。著書に「入門 日本の七十二侯と旬の食」(洋泉社)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、「創発する営業」(共著、丸善出版)、「創発するマーケティング」(共著、日経BPコンサルティング)など。

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