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「トレッタみよし」で見つけた広島県三次の夏の風物詩
鮎漁が解禁中の6月〜9月の夏の広島を訪れたらぜひ見ていただきたいのが、およそ400年の伝統を有する「三次鵜飼」だ。水に潜って魚を捕る鵜の習性を利用した漁法で、急流を進めるように工夫された笹の形をした細長い鵜舟に鵜匠が乗り、手綱を付けた5〜6羽の鵜を操って鮎を捕る。鵜の喉で瞬時に活き締めにされ歯形の付いた鮎は、一般的な漁で捕られたものよりも鮮度が良く、高級品として高値がつくという。鵜舟に平行する形で客が乗る屋形船が走り、手が届きそうなほどの近距離で鮎を追う鵜ち鵜匠の巧みな手綱捌きを見られるのが三次鵜飼いの特徴で、うっすらと夜霧がかかった馬洗川の川面で繰り広げられる鵜飼は、篝火と相まって実に幻想的で郷愁を誘う。
さぁ、鵜飼で視覚を癒された後は天然鮎を食する口福を味わいたいと、三次の美味しいものが集まる「トレッタみよし」で鮎の加工品を物色していた際、「これ美味しいのよねー」という地元の人の声に導かれて出会ったのがこの「鮎寿し」だった。
寿司といっても、鮎寿しはシャリ(米)の代わりに卯の花(おから)を使った、いわゆる「卯の花寿司」だ。絶妙な加減で酢締めにした鮎に、麻の実と生姜が入った卯の花が詰められている。三次は米どころではあるが、やはりその昔、米は貴重品だったということだろう。
今よりも鮎漁が盛んだった戦前は鮎寿しは各所で作られていたそうが、今では三次市の有限会社鮎共販でしか作られていないという。それでも、原料や作り方を何一つ昔と変えず、すべて手作業で手間ひまかけて作られる鮎寿しは全国に何十年来のファンを有する。
鮎寿しは冷蔵庫に入れて良く冷やしておき、4〜6切れほどの輪切りにしていただく。口の中で心地よく広がる酢締めの鮎の酸と、ほろほろとほぐれる卯の花を冷えた日本酒で流し込むと、鮎の身の締め加減は絶妙で、プチプチとした麻の実と生姜の風味を感じる卯の花はしっとりふわふわ、口の中で調和するその爽やかな夏の味に恍惚としてしまう。一緒に飲む酒は日本酒なら辛口のもの、良く冷えた薄にごりやビールでも具合がいい。
鮎漁が解禁になるのは6月〜10月頃。この時期にしか味わえない広島県三次の夏の風物詩と伝統の味をぜひ堪能してほしい。
鮎寿し(6〜8匹入り贈答用)
鮎共販
※掲載情報は 2015/07/24 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家・フードコーディネーター
平尾由希
長崎県生まれ。お茶の水女子大学卒業。
NHK報道局在職中に飲食に関する様々な資格を取得。料理専門学校エコールエミーズのプロフェッショナルコースで学びディプロマを取得した後に独立し、 2013年からフリーランスの料理家・フードコーディネーターとして本格的 に食に関する活動を開始する。
現在は雑誌やWEBでのレシピ連載、CMやテレビドラマのフードコーディネート、 企業の料理コンテンツや商品開発などを手がける他、食に関するコラム執筆や、テレビ、ラジオ、各種イべントなどへの出演も行う。また2013年より「食を通じた地域おこし」をテーマに総務省自治行政局過疎対策室の過疎地域自立活性化優良事例表彰委員会の委員を務め、地域の食のブランディングにも携わっている。