【クローズアップ】料理に秘められた歴史や文化も発信 青木ゆり子

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2015/06/08 公開

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【クローズアップ】料理に秘められた歴史や文化も発信 青木ゆり子

各国・郷土料理研究家 青木ゆり子

 

インターネットが今ほど普及していなかった2000年に、世界の料理の総合情報サイト「e-food.jp」を立ち上げた青木ゆり子さん。世界中のあらゆる国を網羅し、食で日本と世界をつなぐ幅広い活動を続けています。その取り組みはインターネットの世界だけに止まらず、各国の料理のレシピ開発や企業、レストラン等へのコンサルティング、エッセイ執筆、食講座の主催、世界規模のイベントにちなんだ料理の紹介、日本国内でも47都道府県の郷土料理を研究するなど、幅広いものとなっています。どんなところへも足を運び、人と出会う、リアルな体験を大切にする青木さんに、「e-food.jp」を始めることになった経緯や、これからの取り組みについて話をうかがいました。

世界の国々の「食」との出会い

【クローズアップ】料理に秘められた歴史や文化も発信 青木ゆり子

Q: 青木さんが現在取り組んでいる活動について教えてください。

 

青木さん:まず、世界の料理の総合情報サイト「e-food.jp」の運営を主軸にしつつ、各国の郷土料理のレシピ開発やコンサルティング、雑誌にエッセイやリポートを書くという仕事もさせていただいています。「e-food.jp」は2000年3月に立ち上げたので、今年でちょうど15周年になりました。

 

「e-food.jp」は当初、趣味のサイトとしてスタートしたんです。でも、根が凝り性ということもあって「やるならとことんやりたい!」と、10年くらい前に仕事として本格的に取り組むようになりました。世界中のあらゆる国を平等に取り上げたいという思いがはじめからあって、2015年5月現在の国連加盟国196カ国と、国連には加盟していない国も合わせて200強くらいの国々の情報を網羅しています。どんな小さな国にも暮らしている人たちの文化あるので、更新を重ねながら各国の基本情報とともに食文化やレシピを紹介しています。

 

Q:「e-food.jp」を立ち上げようと思ったきっかけは?

 

青木さん:私はもともと雑誌の編集やライターとして活動していましたが、海外演劇関連の記事に長く携わっていたので、年に数回、取材旅行でブロードウェイのあるニューヨークへ行く機会がありました。そこで初めて、日本では食べたことのないスパイスを使った料理に出会いました。「この味は何?」とびっくりしたその料理は、カリブ海に浮かぶ小さな国プエルトリコのものでした。ニューヨークには国連本部もあり、あらゆる国の人たちが暮らしています。当然、さまざまな国の料理店があるので、旅行の度に演劇を観る傍らで、様々なエスニックタウンを訪ねて、は食べ歩くのが楽しくなりました。

 

そうしているうちに、旅行が好きだったこともあり、今度はそれらの国々へ実際に行ってみたくなりました。まずは、ニューヨークの大きな中華街に触発されて香港へ行きました。そしてタイにも行きました。香港とタイにはその後何度も足を運んでいるほか、訪れた各国の土地で料理を習うのが、目的の一つでもあります。

 

Q:今まで何カ国くらいの国へ行かれたのですか?

 

青木さん:同じ場所へ何度もリピートするタイプなので、それほど多くはないのですが、50カ国くらいでしょうか。一応、五大陸全てに足を運んでいます。一番多いのはやはり、アメリカ(ニューヨーク)で、長期滞在も含めて40回くらいは行っています。言葉だって何カ国語も話せるわけではないんですよ。基本は英語ですが、中国は筆談で意思疎通できることが多いし、その他の国でもボディランゲージである程度通じてしまうものです。やはり実際に行ってみないと味わえない味が多く、当時のタイ料理のように、まだ日本であまり知られていない食文化を発見する喜びも大きかったです。

 

Q:行ったことがない国で、今一番行ってみたいのはどの国ですか?

 

青木さん:イランに行ってみたいです。長い歴史のある国だということと、古くから文明の栄えた土地なので食文化も素晴らしく、まだ日本では知られていない魅力がたくさんあると思うので。

「食」よりもまず、その国の歴史や民族性、宗教を知る

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Q:世界の国々の料理を紹介するとき、大切にしているのはどんなことですか?

 

青木さん:私が演劇から出発したということもあって、日頃から「食」以前にその国の「社会」と関わりを、つい意識してしまいます。歴史や民族性、宗教といったものは、その土地の食文化と密接な関係にあるので、「食」の情報を追うだけでは得られないエピソードが発見できるからです。

 

料理の美味しさや味、栄養の特徴を伝えることも重要なのですが、どういう歴史があって、どういう信仰をもつ人たちがいるのかといった、その料理を見ただけではわからないエピソードを理解して、尊重した上で食について知ってもらいたい。やはり食はどの国にも存在するものなので、食を通じた世界交流の一助になればという思いを抱きながら日々情報を集めています。

 

Q:麻布十番を拠点にされている理由は?

 

青木さん:事務所のある麻布十番から六本木にかけてのエリアには、各国の大使館があります。それに外国人が多く、しかもいろんな国の人たちが暮らしていて、外国料理店の種類も数も多いという特徴があります。どれも私にとっては大きなメリットなんですよ。

ゴールは、日本の魅力を日本人に再認識してもらうこと

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Q:今取り組んでいること、これからやってみたいことを教えてください。

 

青木さん:5年後の東京オリンピックに向けて、いろいろなプロジェクトが動いています。2002年のFIFAワールドカップが日本と韓国で開催された時にもイベントで関わらせていただきましたが、世界の人たちが日本を訪れるというのはすごいことだと思っています。私たち日本人も世界への理解を深めて、一歩近づける良い機会にしたい。今年はその前哨戦だと思っています。具体的には、今年の夏に山口県でボーイスカウトの世界ジャンボリーが開催予定で、150カ国近くの国の人たちが集まります。ここでは世界の料理が提供される予定です

 

私が世界規模のイベントをする時に特に大事だと思うのが、宗教のことです。ユダヤ教の「コシェル(コッシャー)」や、イスラム教の「ハラール」など、その信仰独自の食事規定というものがあるので、ユダヤ教やイスラム教の指導者に直接インタビューしたり、国際チェーン・ホテルのレストランの現場に携わらせていただく事で、クライアントに的確な情報を提供できるよう、宗教と食の関係について学んでいます。もともと日本は、相手を心地よくさせるホスピタリティに長けていると思います。でも、そういったお客様個人の哲学や生き方を反映した信仰のバックグランドを理解することで、それぞれの国の人へ向けたカスタムメイドな「おもてなし」ができるようになり、日本のおもてなしがより完璧に近づくのではないでしょうか。

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Q:このお仕事のどんなところに、やりがいや喜びを感じますか?

 

青木さん:やりがいは常に感じています。興味深いことは、接点がありそうにない場所の意外な共通点を発見することですね。例えば、モルジブというインド洋の小さな島国には、鹿児島や高知県が名産の「鰹節」とよく似た食べ物があるんですよ。現地では隣国スリランカに輸出されたりして、カレーなどの料理を作るときに使われています。調べたところ、昔、高知出身の漁師がモルジブに渡って鰹節を伝えたとも言われているそうで、実際に高知とモルジブのコラボイベントも開催されたようです。

 

また、喜びと言えば4月末に「e-food.jp」の15周年を祝うパーティを開催しました。その場に、週末の繁忙期にもかかわらず、つながりのある各国料理のシェフたちがお店を休んで駆けつけてくれるなど、いろんな人たちが集まってくれたんです。サイトを立ち上げた当初からお世話になっている人も多く、そのような人たちあってこその今なので、このご縁を大事にしたいと思いました。

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Q:世界の食を発信する一方で、日本の郷土料理を世界に発信する取り組みもされていますよね?

 

青木さん:はい。実は今年の始めまでで、およそ1年半かけて、暇を見つけてはで47都道府県を全て回っていました。日本の食は神社と深い関わりがあることが知り、場所によっては昔ながらの食文化が廃れつつあるのも目の当たりにしました。この経験から、日本の郷土料理が世界で評価されれば、日本国内でもっと注目されるようになるのではないかと考えるようになりました。例えば、東京を経由して世界と日本の地方をつなげるのも面白いなと思っています。福井県は鯖街道で有名ですが、同じように鯖の産地でもあるノルウェーとのコラボが実現できないかな、とか。このような共通点を発見してあれこれ考えるのもまた楽しいです。

 

実は、私が日本のみなさんに世界各国の料理を紹介している一番の理由は、最終的には日本の良さを再認識してもらいたい、という思いがあるんです。外国のことをそれなりに見て知っている私が「やっぱり日本っていいよね」と言えば、多少でも説得力があるのではないかと思っています。

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【プロフィール】

 

編集者・ライター等を経て料理に目覚め、土地の人々の愛着あふれる国内外の郷土料理の魅力を広めようと、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp」を創設。料理を通じた国際間の相互理解の向上と、食で日本と世界をつなぐための質の高い情報発信やイベント開催を目指す。郷土料理研究家としては、外資系ホテル内レストランでの修業のほか、世界7大陸の約50ヶ国をはじめ、国内47都道府県を往来して、シェフらと交流しながら現地の郷土料理を習得。2002年のFIFAワールドカップでは、出場全32ヶ国の料理とワインを供する料理会に関わり、2012年にはロンドンオリンピック全出場国の「国旗弁当」を制作。また、在日大使館・大使公邸で大使夫人の代理として調理を担当することや、雑誌等へのレシピ・記事執筆等も行っている。

現在は、2020年開催予定の東京オリンピック/パラリンピックを見据え、世界に通用するおもてなしの心とコミュニケーション能力を身に付けるための「世界の宗教と信仰×食の基礎・体験講座」「世界各国の郷土料理講座」シリーズや、健康を重視した地中海料理の知恵を学ぶ教室等を主催・企画中。

http://e-food.jp

※掲載情報は 2015/06/08 時点のものとなります。

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