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今までのイメージをくつがえす、持続可能な有機農法で作られるヘルシーなパームオイル。
パームオイルは、ヤシの仲間のアブラヤシという植物の果肉を絞って作られる植物油です。日本の家庭ではあまり馴染みがないかもしれませんが、世界各国で食用油をはじめ、マーガリンやショートニングの原料、加工品の油脂、工業製品にまで利用されているオイルです。アブラヤシは年間を通して大量に収穫で、油の大量生産も可能で安価なので、実は世界中で最も多く消費されている植物油なんだそうです。
パームオイルの主要原産国は、インドネシアとマレーシア。大量の需要に応じるため、このふたつの国では熱帯雨林を伐採しアブラヤシ畑の開墾が進められました。そのため、広範囲の熱帯雨林が破壊されて年々減少し環境汚染なども引き起こして、大問題になっているのをご存知な方も多いと思います。また、そこで働かされている現地住民の劣悪な労働条件も指摘されています。
食用オイルに関心がある方なら、パームオイルは、動脈硬化や心疾患のリスクを高めるトランス脂肪酸をたくさん含んでいる油だという認識をされているかもしれません。事実、私自身も、植物油なのに常温では固体のパームオイルは飽和脂肪酸だし、パームオイルが使われているマーガリンのトランス脂肪酸が身体に悪いことが指摘されてからは、積極的に使うことはありませんでした。世界的に、健康や環境に意識が高い人は、パームオイルを避ける傾向にあります。
ところが、世界第3位のパームオイル生産国であるコロンビアで、オーガニック食材や化粧品の製造・販売に取り組むダーボン・オーガニック社の「オーガニック・マウンテン・パームオイル&ショートニング」に出会い、パームオイルに対する認識がすっかり変わってしまったのです。
1975年にサンタマリア地区でアブラヤシ栽培を始めたダーボン社は、スタート当初から自然の生態系を守り環境に最大限に配慮したサステナブルな有機農法に取り組んでいます。森林伐採や焼畑はせず、農園内の生物多様性の調査や森林の土壌保護、廃水モニタリング、廃棄物管理など、生産工程のすべてで環境に負荷をかけないよう管理しているそうです。実の殻を肥料として使い、木に負担をかけないために収穫はすべて人の手で。バッファローにひかれたカートで実を運ぶという徹底ぶりです。
最適な熟度で収穫された実は、新鮮なうちに搾られ精製して出荷されます。圧搾の際に通常使われる溶剤などはもちろん一切使われていません。実はパームオイルのトランス脂肪酸は、精製の過程で水素を添加して加工する際に発生するのですが、ダーボンでは水素添加をしないので、トランス脂肪酸を含まない高品質なパームオイルができあがります。しかもコレステロールもゼロ。だから、パームオイルの悪いイメージが気になる人にこそ、試していただきたい油だと言えます。自然循環を生かしたオーガニック農法で、食べる人の健康、作る人の生活の向上、環境保全を第1に考えた姿勢が、地球環境に優しい油を作っています。
ダーボン・オーガニックのパームオイルは無味無臭です。オリーブオイルや胡麻油のように、オイルの風味や味わいを楽しむ料理には向かないかもしれません。でも、炒め物や揚げ物には最適!特に揚げ物は、カラッと軽く仕上がります。お菓子やパン作りのバターの替わりに使ってもOK。用途も幅広いこのオイル、ぜひ使ってみてください。
※掲載情報は 2015/10/09 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードジャーナリスト
斎藤理子
雑誌編集者を経てロンドンに6年半、ワシントンD.Cに5年半在住。その間、世界各国を食べ歩く。現在は国内外の生産者からシェフまで幅広く取材し、雑誌を中心に執筆。著書に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版)など。編著に『アル・ケッチァーノ』奥田政行シェフの連載をまとめた「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス)、「コッツゥオルズ」(ダイヤモンド社)。2011年英国政府観光庁メディアアワード受賞。