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刺身より干物
港町に旅して朝の市場を訪ねるのが好きです。もつとも、朝早く行かないとたいていは閑散としていますね。朝から開いている食堂があればさらに申し分なしで、水揚げされた新鮮な魚介に舌包みを打つのですが、実は鮮魚も好きなのですが、干物の方が大好きなんです。魚は確かに鮮度が命ですが、本当に旨くなるのは少し熟成した味で、干物ならお土産でも買って帰れますしね。
先日からわが家では、「焼津 前浜産 ひもの 甘塩天日干し」にはまっています。上記写真はトロ箱で届いたばかりの時に開けたのですが、小川港から金目鯛、カマス、鰯、御前崎からサヨリ、焼津港はレンコ鯛、見事でしょう。このくらい入っていて2800円に消費税なのです(捕れる時期や魚種で価格は変わります)。この干物は焼津で50年続く魚屋さんが作っていて、現在は四代目の前田尚穀さんがやられています。ほとんど口コミで広がっているですが、注文は電話やFAX、ホームページや前田さんのフェースブックからも注文するとができるのです。ただ、海が時化(しけ)っていたりする時は、暫し待たなくてならないのですが、自然を相手にしているので仕方無いですね。
焼津港を中心に南に小川漁港、前田浜、御前崎と駿河湾の向うには遠州灘があり、日本でも有数の漁場が控えています。朝捕れの鮮魚を甘塩で天日したものが翌日には食卓へ届けられるのですが、1日前まで鮮魚だったので、よくあるカチカチになった固いだけの干物とは違い、身がほっこりとして、脂も残り魚は鮮魚と干物の微妙な旨味となっているのです。
まず、日本酒の当てに軽くサヨリを炙り、次にカマスで白ワインを開けて、レンコ鯛もいただき、〆にご飯で鰯をいただく。干物だけでメニューを組み立てるなんて、贅沢な気分です。さらに、身を食べ尽くした骨を再度炙り、丼に入れてお湯を注ぎ、白ゴマと三つ葉を散らして即席の汁ものにしますが、また、これが旨いのです。ちなみに、サスエ前田魚店は鮮魚も当然扱っているので、今度は刺身も注文したい所です。
※掲載情報は 2015/03/23 時点のものとなります。
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キュレーター情報
アートディレクター・食文化研究家
後藤晴彦(お手伝いハルコ)
後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。