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ロンドン世界大会の奇跡から生まれたテキーラ
2018年11月22日から11月28日まで、テキーラフェスタ運営事務局(http://www.tequilafesta.jp)が企画するメキシコのテキーラ蒸留所を巡るツアーが開催され、12月からシリーズでメキシコの食や観光スポット、テキーラの情報をご紹介してきました。今回はツアーレポートの最終版としてテキーラ村のアレッテ蒸留所をご案内します。
1948年に開催されたロンドン世界大会の障害馬術でメキシコが見事に優勝を飾りました。優勝した馬は「アレッテ」という名前でした。片目が見えないので、当時のメキシコ大統領からも出場を止められましたが、「アレッテ」に乗ったハンブレト・マリレス将軍の説得により出場することとなり、見事に優勝を果たしたのでした。
その名馬の名前を冠するテキーラ蒸留所がテキーラ村にあります。「アレッテ」の情熱と強さをテキーラで表現したいという思いからこの名前が付けられました。
1986年に、5世代続くテキーラの名門オレンダイン家の創始者の孫にあたるハイメ・オレンダインによって設立されました。
現オーナーのエドゥアルド氏は、テキーラ村の元市長であり、CNIT(全国テキーラ産業会議所)の現会長でもあるそうです。 蒸留所の場所も、テキーラ村中心地のクエルボ、サウザ蒸留所のすぐ裏手にあり、あたり一面に広がる蒸したアガベの香りに包まれながら見学をさせていただきます。
ここでは、6年~8年栽培したアガベを使用し、2台あるアウトクラベ(圧力釜)で8時間アガベを蒸し上げ、その後10時間釜の中でアガベを冷ましたあと、5段階のローラーミルでゆっくりとすり潰すようにアガベジュースを搾汁して、ほとんど加水しないでテキーラを作るため、アガベ本来の味わいを楽しめます。
ちなみに、昨年11月の訪問のすぐあとに、アウトクラベは取り除かれ、現在は煉瓦製のオーブンに変わったそうなので、2019年に発売されるものは味わいも違う事でしょう。
日本でも話題になっていますが、アガベの値段が高騰してから、集団でアガベ泥棒をする窃盗団がでてきているそうで、残念な話なのですが、セキュリティをつけてアガベを守っているそうです。
ただ、このアガベ不足の問題も、実はかなり前から予想されていたところもあり、3年前くらいから先を見越してアガベを多めに植えたり、企業努力で値上げをせずにいるブランドがほとんどで、2020年には収穫量も落ち着き、アガベの値段も下がっていく傾向にあります。
発酵で使う酵母は、昔から変わらず使っているオリジナルの自然酵母で自然発酵しています。 海外輸出向けの商品は伝統的な製法のラインはコンクリートの発酵槽5日間、スーパーなどに並ぶレギュラーラインのものをステンレス製の発酵槽で4日間かけて発酵します。
収穫量によって、どちらを使うかを変えていますが、珍しいコンクリート製の発酵槽は約70年前から変わらない製法を使っています。
蒸留器は2種類のサイズを使い分けています。大きめサイズで1回目。続いて少し小さいサイズで2回目を蒸留します。以前使用していた古い蒸留器も残っていました。
メタノールや苦みのもとになるヘッドとテールは25%前後大幅にカットされ、もともと2500リットルのものが2回目の蒸留でテキーラとして商品になるのはたった160リットルのみ。
本当に美味しい部分だけ、贅沢に使われていて、ブランドへのこだわりと自信を感じました。
ちなみに、ヘッドとテールは近くにあるサウザ蒸留所に運ばれ、生活用水や蒸留所で使用する工業用水としてリサイクルされているそうで、アガベの搾りかすも、リサイクル業者に渡ります。
最近では当たり前になりつつある、リサイクルや環境保護。まだまだできていない蒸留所も多いらしく、きちんと対応しているところも高ポイント。
樽の貯蔵庫では、ジャックダニエルの中古樽を使って熟成しています。見学できるスペースはごく一部ですが、コンパクトながら清潔感もあり伝統と歴史を感じる場所でした。
貯蔵庫の中では、名馬「アレッテ」の模型と一緒に記念撮影することもできます。
蒸留所と貯蔵庫の見学の後は、テイスティングルームへ移動。国内向け商品と海外向け商品の両シリーズをフルラインナップで試飲ができるので、こちらのテイスティングルームで気に入ったシリーズをまとめて購入される人も多いそうです。非常にまろやかで飲みやすいテキーラですので、テキーラをあまり飲まない人にもおすすめです。
日本未発売のため手に入りにくいのは残念ですが、名馬の名にふさわしいプレミアムテキーラ「アレッテ」。作り手のこだわりと努力を感じることができます。メキシコに行ったら必ず買うべきテキーラです。
※掲載情報は 2019/03/29 時点のものとなります。
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キュレーター情報
メキシコ合衆国大使館
北・中央アメリカに位置するメキシコは、西は太平洋、東はメキシコ湾とカリブ海に面していて、国土の3分の1は平均高度約1700mのメキシコ高原が占めています。古代にはマヤやアステカ文明で栄え、16世紀にはスペインによって支配されます。1810年まで続いた300年ものスペインによる長い統治にもかかわらず、7000年という歴史を持つメキシコ料理はその影響を最小限にとどめ、トウモロコシ、マメ、唐辛子をベース にした伝統料理をベースにした独自の食文化を守り続けてきました。その結果、2010年にメキシコ料理はユネスコ世 界無形文化遺産として登録されました。日本人に馴染みの深い「タコス」以外にも、さまざまな絶品料理がありますので本場メキシコ料理の魅力を発信していきます。