地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

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マダガスカルが生み出すアロマ

「マダガスカル」といえば?


アフリカの島、という以前に、私は、バニラビーンズを連想する。でも、意外にも、その生産量は、世界ナンバーワンではなく、インドネシアに次いで二位。とはいえ「~産」としての知名度でいえば、インドネシア産よりマダガスカル産の方が上をいくだろう。製菓店の香料売り場に行くと、「マダガスカル産バニラビーンズ」が目に付く。つい注目してしまうのは、堂々の一本売りなのに、けっこうな価格だからである。

 

そのマダガスカル産のバニラビーンズのさやを切って種を取り出すと、途端に濃厚な甘い香りが漂い、ふわ~っと心が軽くなって幸せな気持ちになれる。アロマって人々の癒しなのだなぁ、とつくづく実感する。

 

さて、冒頭でバニラビーンズを称賛してしまったが、今回、私が紹介するものは、癒しの香りを放つバニラビーンズではなく、まったく別物である。でも、近いもの。バニラと同じく、癒しの香りを放つものである。

 

それは、自然界からの賜物、マダガスカル産のアロマ食材だ。

 

貴重な野生の胡椒、ワイルドペッパー

今回紹介するものは、マダガスカル島が生み出したアロマ食材、ワイルドペッパー。

 

その名の通り、野生の胡椒だ。挿し木で増える他の胡椒類とは違い、マダガスカル島の自然の中でのみ存在する特別な胡椒である。島では、昔から漢方薬として大切に使われていた。

 

マダガスカル島に生息する動植物の80%は、マダガスカルのみに生息している珍しいものばかりなのだそうだ。ワイルドペッパーの原料の実も同様で、その特異な生態系に含まれるものである(ちなみに、小説「星の王子様」に登場するバオバブの木(さかさまの木)もマダガスカル島を代表する不思議な形の巨木である)。

 

ワイルドペッパーは、収穫方法がすごい。まずは、どんな風に実っているのか、説明しよう。ワイルドペッパーは、マダガスカルの熱帯雨林の高木に生い茂るツルに実っている。時には25メートルを超える巨木にツルが巻き付いている時もあるそうだ。「これは、機械を使うか、伐採して収穫するのだろう」…と思いきや、なんと、その巨木に人間がよじ登って手摘みするという原始的な収穫方法。これは、大変な労力を伴う上に危険な作業である。収穫したら、乾燥させて選別する。そうすると、商品となる実は、収穫された量の10%になってしまうのだそうだ。

 

うーん……これは、確かに希少価値の胡椒である。

 

大量収穫のために木を伐採する生産者もいたが、マダガスカル政府は、自然界の生態系と村の収穫者を尊重するために、そういった乱暴な収穫方法を制限している(拍手)。

 

地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

フランスのシェフたちが愛用

2000年に入り、マダガスカル島の野生の胡椒が他にはない香りと知られると、第一線で活躍するフランス料理のシェフたちがこぞって使うようになった。

 

その香りは、黒胡椒や白胡椒のように強烈な辛味ではなく、やわらかい。それなのに、後味が激しい。黒胡椒は、一気にスパイスを感じてガツン!とくるけれど、ワイルドペッパーは、スパイス感が深い。繊細で複雑なアロマ。

 

私は、地球の香りを感じる。木の香りと雨上がりの土の香りが混ざった感じなのだが、森の香りなのではなく、高原の別荘の木の香り。あと、墨汁の香りにも似ている。うまく表現できないのだが、外で雨が降っていることに気づく時、ほのかに墨汁の香りを感じた経験はないだろうか。どこかほっとするこの心落ち着く芳香は、まさに癒しのアロマである。

 

どことなくゆかしさを感じる繊細なスパイシー感。ゆかしい、という単語を使ったのは、和的なものを感じるからだ。アフリカのものなのに?……「この感覚はなんなのだろう……」と、思い出そうとしたのだが、一致する表現が見つからなかった。

 

そんなある日のこと、私の疑問を解消する出来事があった。私が牛の赤身肉を焼いた時のことだった。少々レアに焼いて、ソースは地芽を使った。地芽を叩いて香りを出し、醤油、わさび、オイルで和のスパイシーさを出した。味見をして、山椒を足した。そこで「あっ……!」とひらめいたのだった。

 

アフリカの野生の胡椒なのに、和テイストを感じるわけは、そのアロマが地芽や山椒に似ていたからなのだ。これに気づいた時、ワイルドペッパーの香りは、食材というよりも香料なのだな、と思った。他の食材の美味しさを引き立てる上品なアロマ。

 

地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

調理)中尾明美


まずは、自家製パテドカンパーニュで試してみた(この時はミルで挽いたが、包丁でつぶすことをお勧めする)。

 

あらためて、胡椒の使い方

ワイルドペッパーに限らず、胡椒は調理の仕上げとして、すべての工程の最後に香りを出すために使うもの、と私は思う。肉を焼く際、フライパンに入れる前の生肉に胡椒をする調理法もあるが、熱々のフライパンでは胡椒が焦げてしまう。胡椒は香りを楽しむものだから、肉料理に使う場合は、肉が焼き上がってから挽きたてをかけることをお勧めする。きっといつものより美味しく感じるはずだ。

 

他の胡椒よりも甘く、ウッディーなアロマと繊細な風味、そして、スパイシーな後味を楽しめるワイルドペッパーは、挽きたての香りを楽しんでほしい。もしくは、包丁やスパイスクラッシャーでつぶしてお使いいただきたい。

 

地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

相性のよい食材と料理

相性のよい食材と料理の提案。マダガスカル料理は、ハニーマスタードソースを使った料理など、甘く塩辛いものが多い。そんな料理にワイルドペッパーが合うそうだ。あと、グリルやロースト料理にはもちろん、蒸し野菜や煮込み料理の仕上げにもよい。特にジャガイモや卵との相性は抜群! レバー料理、特にフォアグラにもよさそうだ。そして、日本人の味覚に合うかわからないが、メロン、イチゴ、チェリー、リンゴ、ナシ、ライチ、マンゴーなどの果物にもかけるようだ(私は未体験)。チョコレートを使ったスイーツには絶対的にあうはず!

 

変わったものでは、ウォッカに漬けこみ完熟トマトに合わせたカクテルもある(『Bar石の華』(東京都)のオリジナルカクテル)。

 

あと、シジミの赤だし味噌汁に薄く切った葱を乗せて、ミルでひいた細かいワイルドペッパーをさっとふりかけても美味しいと思う。お碗に口をつけた瞬間の上品なアロマを想像するとわくわくしてしまう。

 

私は、カルボナーラやカチョエペペで!

 

地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

調理)中尾明美

 

南イタリア風カルボナーラ

 

カルボナーラ…「炭火焼職人風」という意味。炭焼き職人が手についた炭を黒胡椒に見たてたのが始まりである。

 

地球を感じるアロマ「マダガスカルのワイルドペッパー」

調理)中尾明美

 

そら豆を使ったカチョエペペ

 

カチョエペペ…カチョはチーズ、ペペは胡椒を意味するイタリア語。スパゲッティをペコリーノロマーノとからませ、胡椒を多めに加える。

 

ワイルドペッパーが購入できる店舗

 

●DEAN&DELUCAマーケットストア品川

東京都港区港南2-18-1アトレ品川2F

TEL 03-6717-0935

営業時間(マーケット) 10:00 - 23:00

 

●DEAN&DELUCAマーケットストア六本木

東京都港区赤坂9-7-4東京ミッドタウンB1

TEL 03-5413-3580

営業時間11:00 - 21:00

 

●DEAN&DELUCAマーケットストア渋谷

東京都渋谷区道玄坂1-12-1渋谷マークシティB1

TEL 03-3477-4795

営業時間10:00 - 21:00

 

※上記以外の店舗の在庫については、下記にお問い合わせください。

 

≪商品問い合わせ先≫

株式会社ウェルカム ディーンアンドデルーカ事業部

150-0001東京都渋谷区神宮前2-4-11 Daiwa神宮前ビル4F

TEL 03-5771-0460

※掲載情報は 2018/04/24 時点のものとなります。

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キュレーター情報

中尾明美

料理家、ライター

中尾明美

東京都生まれ。一男一女の母であり、孫も持つ。五代続く医者の家に育った生い立ち、健康食品製造販売会社の代表を務めた経緯やがん克服経験から、医食同源を目指した食生活を推奨している。「DEAN & DELUCA」キッチンスタッフ、「リストランテアロマクラシコ」キッチンスタッフを経て、イタリアフィレンツェの料理研究家に師事し、現在も厨房に立ちつつ、会費制食事会「プライベートダイニングRoom A’s Tokyo」、料理教室「Class A’s Kitchen」、出張料理「A’s Kitchen」を主宰。食材・調理器具と波動を合わせた調理、化学調味料を使わない優しい味にはファンが多い。2018年4月よりELLEgourmetフードクリエイターメンバー。

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