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杜氏のたゆまぬ味への努力とこだわりが、口コミで人気急上昇
この時期、酒蔵では日本酒仕込みで忙しい。今回はほとんど知られていないが口コミで人気が出てきている日本酒をご紹介したい。何しろ、ある有名なお寿司屋さんの大将が「お客様に勧められて、メニューに入れたんです。」と語るほど、日本酒通しか知らない日本酒。それが「池月」だ。
メニューに、その希少価値の「池月」の純米と大吟醸があったため、さっそく飲み比べをしてみた。次の写真手前が純米、奥が大吟醸。どちらもそれぞれの美味しさはあるものの、今回は大吟醸の美味しさに感動をした。広告を一切しないで、口コミで広がりつつあるのも納得だ。精米具合が40%である大吟醸は色を見ただけで、すぐに純米との区別がつく。透明感のある純米に比べ、大吟醸は薄い上品な琥珀色。
この「池月」を醸造している『鳥屋酒造』さんでは、杜氏さんが毎年「どんな味にしていくか」を考えて仕込みをするというこだわりを持って日本酒作りに励んでいる。
地元の石川県だけでの販売が中心で、県外に出回ることはない。地元でもほとんど手に入らないほど、希少価値の高い日本酒なのだ。昔ながらの作り方を今でも守り続けている。広告は一切打っていない。つまり、本当に「池月」の味に惚れ込んだ日本酒通の間で口コミで広まっているのだ。探して買い求める人は多いものの、特に大吟醸は年に約1000本しか作らないため、手に入れるのが難しい。それでも、大量生産をすることなく、丁寧に日本酒作りに向き合っている酒蔵なのだ。
この大吟醸。冷酒の時は、辛口でさっぱりとしており、一瞬味が薄いように感じる。しかし、それはお寿司の味を味わうのにほどよいすっきり感。決して、お寿司の味を邪魔することなく、寄り添うような大吟醸だ。私は、鮪のづけなど、北陸のお魚の味を堪能した。
時間が経ち常温に近くなるにつれて一気に甘さが高まり、空腹が落ち着いた頃が「池月」の大吟醸を堪能できる瞬間。まろやかで、味わい深い甘みには、最後にさっぱりとした白身魚やおつまみが合い、今度は大吟醸を堪能する時間に。ここからは、まるで“贅沢な大人の時間”のように、ゆったりとした気持ちになってくる。
飲み比べをしていると、あっという間に大吟醸がなくなってしまった。しかし、ゆっくりと日本酒をいただく私には、味の変化を味わうのにちょうどよい至福の時間だった。
温度によって味の変化が楽しめるのが日本酒の醍醐味。その中でも、口コミで人気が出てきている「池月」の甘みの高まり方は、食後酒にもおすすめ。ほっこりとした気持ちにさせてくれる。ゴールデンウィークに石川に行ったら、日本酒通なら絶対に飲んでほしい逸品。
希少な「池月」の味比べは、とても贅沢な時間を過ごさせてくれた。
この大吟醸、日本酒通の方の手土産にいかがだろう。
※掲載情報は 2018/05/01 時点のものとなります。
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キュレーター情報
発酵料理研究家/観光連盟アドバイザー
高橋香葉
「日本人の体を健康できれいにするには、日本伝統文化の発酵食が一番良い」として発酵料理の研究に取り組む。テレビ、雑誌、書籍などを通じて、発酵食品の良さを伝える普及活動を行っている。
日本で初めて、米麹と醤油をあわせた新調味料「しょうゆ麹(醤油麹)」の作り方とレシピを公開し、発酵業界に新しい風を入れた。その活動は、フードアクションニッポンアワード販促部門を受賞。その後、読売新聞にて「オンリーワン」として掲載された。
現在は、日本全国を回り、全国の発酵食品だけでなく温泉巡りをし、日本の伝統文化を勉強している。
自治体の観光連盟アドバイザー、特産品開発審査委員などを歴任。市場調査から、販売戦略、プロモーションなどのマーケティング講師も行っている。フードアナリスト協会「食のなでしこ2016」。
主要著書:
◎「しょうゆ麹と塩麹で作る毎日の食卓」(宝島社)
◎リンネル特別編集「しょうゆ麹で作る毎日のごちそう」(宝島社)
◎「知識ゼロからの塩麹・しょうゆ麹入門」(幻冬舎)
◎おとなのねこまんま555(アース・スターブックス)等