ばろう牡蠣
芭露カキ出荷組合
母のところへ毎年北海道から牡蠣を送ってくださる方がいて、毎度お相伴に与る。ありがとうございます。以前は厚岸産だったんだけれども、最近は「ばろう牡蠣」というものをくださる。「ばろう」っていうのは何も罵倒しているわけではなく、サロマ湖畔の芭露という地名で、アイヌ語のパロ=河口の意味である由。厳冬期には湖面に張った氷上をスノーモビルで走って行って、チェーンソーで氷を切って牡蠣を引き上げるという。何と豪快な。サロマ湖産も厚岸産も稚貝を宮城県から買って養殖している。東日本大震災では一時その入手が不可となるのではと心配されたけれど、幸い稚貝産地の被害は少なく、震災後も変わらずお付き合いが続いているという。
北海道の牡蠣産地は水温が低いために繁殖がうまくいかない。だから宮城県から稚貝を買うのだけれど、裏を返せば産卵のために身から栄養が抜けることになりにくいわけで、出荷期間が長いのが特徴。“R”の付かない月にレストランや居酒屋で思いがけず北海道産牡蠣にありつくというのはそういうわけらしい。殻付き牡蠣のおいしい食べ方は何と言っても電子レンジでチンでしょ、と思っていたら、サロマ湖産のしおりでは蒸し牡蠣を薦めている。鍋に日本酒を1カップほど入れて殻付き牡蠣を詰め、10分ほど酒蒸しにする。味がよい上に熱々ホコホコで体も温まる北国らしい食べ方だ。鍋に残った汁を軽く漉して雑炊にしてみたら、これがまたウマウマでした。
芭露カキ出荷組合
※掲載情報は 2015/01/14 時点のものとなります。
FoodWatchJapan 編集長
齋藤訓之
北海道函館市生まれ。1988年中央大学文学部卒業。レストランビジネスを志していたはずが、レストランビジネスに役立つ本を作る仕事にのめり込む。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、日経BPコンサルティングのブランド評価プロジェクト「ブランド・ジャパン」プロジェクト責任者、農業技術通信社「農業経営者」副編集長等を経て、フリーランスのライター・編集者として独立。2010年10月株式会社香雪社を設立し、農業・食品・外食にたずさわるプロ向けの情報サイト「Food Watch Japan」をスタート。著書に「入門 日本の七十二侯と旬の食」(洋泉社)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、「創発する営業」(共著、丸善出版)、「創発するマーケティング」(共著、日経BPコンサルティング)など。