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佃煮の手作りは楽しいのだ!
わが家では妻のことを「オクサマ」と呼び、妻の母は「オオオクサマ」と呼んでいる。
その「オオオクサマ」からいろいろな季節の食材が届くのだが、ある時に果物などが入った段ボールの隙間から“煮干し”の袋が出てきた。
最初は「なんで煮干しが」と思っていたが、袋には「手づくり佃煮セット『おふくろさん』」とあり、煮干しの他にかつお節、切昆布にごまが入っているではないか。「佃煮セットかぁ? 煮炊きしなきゃいけないし面倒だなぁ」と思って袋の裏を見ると、材料に調味液を混ぜるだけで簡単に出来ると書いてあった。
長崎産(あるいは瀬戸内海産)の煮干しいりこ、焼津産のかつお削りぶし、北海道産の味付け昆布に、ごまをボウルに全部入れて、付属の調味液タレをかけ、調味液を入れて、菜箸でかき混ぜること3分であっという間に佃煮が出来てしまった。
出来上がりをひと口食べてみると、意外に旨いではないか? 味は佃煮のような濃い味ではなく、少し酸味が利いた優しい味付けだった。燗酒の肴にしたが、酒が進む、進む。この味は後を引くのだった。
材料自体がイノシン酸やグルタミン酸のかたまりだし、熱々のご飯にのせても旨い。いつしか、わが家の冷蔵庫の中の常備菜になったのだった。
製造しているのは、福岡県春日市の佃煮メーカー『ヒラヤマ』で、あらゆる佃煮が取り寄せできる佃煮専門店『わそう』も展開している。この「手づくり佃煮セット」に感心したのは、本当に混ぜるだけで簡単に出来ることだが、実は以前から自家製の佃煮を作っていたのだ。ただ、この佃煮は廃物利用のもので、だしを取るたびに、だしを取ったあとの昆布やかつお節を冷蔵庫に保存していたものだ。そんなに頻繁にだしを取るわけでもないので、ある程度まとまるまで、2〜3ヶ月はかかるのだった。
このきっかけは、和食屋さんで、つきだしで出された昆布の佃煮が旨く、どこで購入したのか聞くと、「自家製」だと言う。作り方を聞いて実際に家でやってみたが、上手くいかない。まず、味も入らなければ、色も昆布の佃煮独特の黒さが出ない。また、和食屋さんに再度聞いてみた結果、(1)肉厚の良い昆布が望ましい (2)加熱して沸いてきたら一旦火を止めて保温してしばらくして、再加熱を繰り返す (3)昆布を煮る時は必ず鉄鍋を使う この3点だった。昆布は割と良いものだったのだが、ステンレス鍋で煮ていたのがダメだったようだ。鋳物のすき焼き鍋にだし昆布と塩、醤油、味醂、酒を入れて煮詰めて、汁がなくなったら、火を止めて蓋をする、この火を止めて大体65度に保ち約15〜20分ほどして、また、再加熱し、調味液を入れて煮る。これを6回ほど繰り返すと、確かに昆布は黒くなり味も入るが、量が少ないために効率が悪いので、自宅での昆布の佃煮作りは挫折したのだった。
やはり、専門店で買うのに限るが、だし昆布はその後,細く刻み、浅漬けの際に入れて活用している。しかし、自宅で簡単に佃煮作りが出来るのは楽しいのだ。
※掲載情報は 2017/11/17 時点のものとなります。
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キュレーター情報
アートディレクター・食文化研究家
後藤晴彦(お手伝いハルコ)
後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。