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大正2年創業。今日も手作りを守り抜く
全国各地に蒲鉾店は数あれど、僕が日本一だと思っているのは、広島県尾道市の『桂馬』です。創業は大正2年。ゆえにもう創業以来100余年を有しています。何が日本一かというと、「魚本来の味を活かしきり」、「合成保存料などを使わず」、「天然昆布の出汁と天塩で調理し」、「季節に装い、四季折々に美しい蒲鉾を提供し」、「昔ながら、毎朝の手作り」という真剣さ。初代の村上桂造氏が19歳で、裏に魚市場があった当地で、小さな蒲鉾店を始めたそう。その当時は、他店も同じような製法だったそうですが、昭和30年代に冷凍すり身が登場し、全国的に蒲鉾の画一化が進んでいったみたい。でも、「桂馬」は、あえて往年の製法を守り続けたのです。保存料無添加などで蒲鉾を作るには、多くの蒲鉾店で使用しているような冷凍すり身は使用できないのだそう。よって、今でも毎朝4時から生魚のみを用いて作っています。原材料は、瀬戸内以西の底引きで上がるグチ、ハモ、エソ、紋甲イカ。
賞味期限は3日のみだけれど、柿天や駒焼などをぜひ
そんな『桂馬』の蒲鉾で特に有名なのが「柿天」です。農家の干し柿を参考に初代が考案した一品で、国産の白絞油でキツネ色にこんがりと揚がったそれは、香り高く軽やかな風味とほんのりとした甘みが楽しめます。また桂馬の刻印が押された「駒焼」などには卵も合わさり、ふわりとした食感。他にも「ごぼう天」「豆竹輪」「茶壺」など様々な個性派蒲鉾がラインナップされています。全体的に上品な味わいなので、最初にいただいた時はインパクトが薄いかもしれません。でも蒲鉾を追求するうちに、天然食材のみの味わいに気付き、そして旨味に驚きます。保存料不使用なので賞味期限は3日しかないですが、ぜひ。
※掲載情報は 2017/06/14 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードジャーナリスト
はんつ遠藤
東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方をひとりでこなし、取材軒数は8000軒を超える。全国のご当地グルメの知識と経験を活かし、ナムコのフードテーマパーク事業にも協力し、現在、東京・大手町のご当地やきとりテイスティングパーク「全や連総本店 東京」の名誉館長も務める。『日経トレンディ』にてトレンドリーダーにも選出。「週刊大衆」「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』(幹書房)、『おうちラーメンかんたんレシピ30』『おうち丼ぶりかんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』など25冊。