【クローズアップ】 魚の美味しさを発信して、魚食を推進していきたい。是友麻希

【クローズアップ】 魚の美味しさを発信して、魚食を推進していきたい。是友麻希

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魚料理の研究家として各方面で活躍中の是友さん。予約が取れないことで知られる料理教室を主宰し、一般社団法人「日本発酵文化協会」の発起人という顔も持っています。そんな是友さんが魚料理に目覚めた背景や、現在の取り組み、これからの夢についても聞かせていただきました。

 

取材当日は、5月30日に丸の内の国際ビルにオープンした是友さんのお店「にっぽんのひとさら」のプレオープン日。テレビ取材の合間を縫って、インタビューをさせていただきました。この日の是友さんは着物姿。どんな質問にも歯切れよく答えてくださる姿が印象的でした。まずは是友さんに一番聞きたかった質問から……。

大好きな「魚」と「海」を結びつけて、その魅力を発信しよう

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【料理研究家として活躍している方はたくさんいらっしゃいますが、「魚料理研究家」の方はとても珍しいと思います。どうして魚を専門にしようと思ったのか、そのきっかけや背景を教えてください。】

 

一番は魚が好きだということ。小さなころから魚を食べて育ったというのもありますが、同じくらい海も大好きなんです。学生の頃はヨット部に入っていましたし、365日を海で過ごしたいと思うほど。だから大好きな魚と海を結びつけて、日本の豊かな資源をアピールできるようなことがしたいと思っていました。その手段として行き着いたのが魚料理研究家。まずは魚の美味しさを発信できる人になりたいという思いが先だったので、料理研究家として活動するなら、私には魚以外にないと思いました。

 

【魚料理研究家としての活動を本格的にスタートされる前に、お寿司屋さんでの修業をされていますが、なぜお寿司だったのでしょうか?】

 

私の育った家には、国内外からさまざまなお客様がいらっしゃいました。海外の方は、母が作る日本の家庭料理を喜んで召し上がってくださいましたが、ほとんどの方が「日本料理で何が食べたいか」と尋ねると「寿司」と答えるんですね。当然母はお寿司を握れません。そこに私はもどかしさを感じて、「もしホームパーティでお寿司が食べられたら、こんなに素晴らしいエンターテイメントな国際交流はないだろうな」……と思うようになりました。

 

大学卒業後、一度は企業に就職しましたが、魚に関係する仕事がしたいという思いは日ごとに強くなっていきました。そして、もともと料理が好きだったこと、魚料理といえば頭に浮かぶのがやはりお寿司だったことから、仕事を辞めて寿司屋へ修業に入りました。ホールでの接客にはじまり、魚の鱗をひたすら落とすだけ、骨を抜くだけ……という日々が続きました。でも、このときの経験が今でも私にとって大きな財産になっていますね。

「発酵」は魚を食べてもらうためのツールの一つ

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【是友さんは現在、魚料理研究家として幅広く活動をされていますが、麹や発酵にも力を入れている理由とは? また、レシピ開発や商品開発をする上で大切にしていることを教えてください。 】

 

魚と発酵は現在の活動の根本になっています。日本人の食生活において魚離れが進んでいる中、発酵というツールを使って、美味しい魚の食べ方というものを提案したいと思っているのが理由です。

 

魚って、食べたいと思うけれど臭みが気になるとか、値段が高いとか、処理に手間がかかるとか、いろんな理由で敬遠されがちですよね。かたや、発酵食品は「体に良い」と注目され話題になっています。でも、煮る・焼く・揚げると同じように、発酵させるのもあくまで調理法の一つ。だから、発酵の力で魚料理をどう美味しく食べるか、ということを提案していきたいと思っているんです。

 

一方で、イレギュラーでおつまみ系の商品開発のご依頼も多くいただいています。魚ではなく肴ですね。スイーツの開発をさせていただいたこともあります。いずれにしても共通しているのは、素材をどう活かすかということ。和食は引き算の食べ物だと言われていますが、それと同じ考え方。上塗りしていくのではなくて、食材を活かすことに特化したレシピ開発や商品開発を心がけています。

料理はエンターテイメント。ひと手間も楽しければ苦にならない

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【是友さんといえば、主宰されている料理教室が「予約が取れない」と言われているほど人気ですが、是友さんの料理教室の特徴とは?】

 

今は電子レンジで温めるだけで完成する冷凍食品など、料理はどんどん手間をはぶく方向に進んでいると思います。でも私は食いしん坊なので、手間を一つ加えてでも美味しい物を食べたい。手間を手間だと思うから面倒なのであって、その手間が楽しいものだったら、絶対にやると思うんですね。

 

子どもたちも「料理しましょう」と言うだけではやらなくて、工作や実験のような感覚で、それが楽しかったらやるようになる。それは大人も同じで、料理を美味しくするための手間にすごく楽しいパフォーマンスがあれば、やりたいはずなんです。そして、日本の魚料理における究極のエンターテイメントは何かと言えば、お寿司ですよね。

 

もし家でお寿司が握れたら、そんなに楽しいことはないはずです。でもお寿司を握るのって、準備も含めてとっても面倒なこと。でも楽しかったらやるじゃないですか。やはり料理はエンターテイメントだと思っているので、手間を面倒と感じさせず、楽しみながら手間をかけられるように。私が料理教室で一番ポイントを置いているのはそこですね。

魚食と発酵の発信基地として新しくお店をオープン!

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【このたび、東京丸の内に「にっぽんのひとさら」という和食のお店を開店されましたが、料理研究家が自らオーナーになってお店を出すケースは珍しいと思います。いつか自分のお店を出そうと以前から考えていたのですか?】

 

料理教室を始めた頃は、自分の店を出そうとは考えていなかったですね。料理教室という場で、魚のいろんな食べ方を提案していきたいと思っていたので。でも、いろいろな方たちと話をしていくうちに、料理教室という枠を超えてもっと広く魚料理を発信しなければ、魚離れは治らないと考えるようになりました。

 

私の料理教室に集まるのは、そもそも魚が好きな人たち。でもそうじゃない人たちが、魚料理も食べられる居酒屋で「魚ってこんなに美味しいの?!」という体験をしてくれることが、私の本当にやりたいことに近いのではないかと。そのことに十何年経ってやっと気がつきました。

 

もちろん料理教室をやめるつもりは全然なくて、魚好きの人たちをもっと奥深い魚の世界へ誘いたいと思っています。その次のステップとして、このお店を通して、もっと幅広く魚の魅力を伝えていきたいと思っています。

 

【お店で提供されるメニューについて、特徴やイチ押しがあれば教えてください。】

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「ふたくち発酵鯛茶漬」(637円)
鯛の形をした最中種のうしろには、新鮮な真鯛の刺身。ゴマだれ、わさびの柴漬けを添えたお椀に、発酵だしを注いでいただくという、〆にぴったりな一品

 

ここのメニューはすべて私が考えたものです。これまで自分がレシピ開発してきた中で特にお気に入りのものや、料理教室で生徒さんから人気の高かったものをラインナップしています。もちろん、この店のために新たに開発したレシピもあります。イチ押しは「鯛茶漬け」ですね。生徒さんにも人気が高くて私自身も大好きなメニューです。

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木桶でオリジナル発酵させたもろみを目の前で絞っていただく、フレッシュな生揚げ醤油。パイナップルのようなフルーティな香りに加え、バニラ、コーヒー、ヒヤシンス香も。新鮮な醤油には、ごまかしのきかない新鮮な魚が一番合う

 

そしてこの店の特徴として、ここでしか食べられないのが「生揚げ醤油」です。これは、醤油を絞る前のもろみを木桶でオリジナル発酵させて、お客様の目の前で絞り、味わっていただくというもの。市販の醤油は絞った後に加熱殺菌してボトリングされているのに対し、ここでは絞りたての醤油がお楽しみいただけます。

 

微生物も生きていますし、酵素も活性しています。火入れをしていないため、色も赤っぽく透明感がありますね。これが醤油のフレッシュな色なんですよ。ここではお刺身、湯葉刺し、お豆腐など、醤油の味と食材の味を楽しむような料理に合わせて召し上がっていただきます。

 

【今後、このお店をどのようなお店にしていきたいと考えていますか?】

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ここを「魚食の推進」と「発酵」の発信基地にしたいですね。例えば、料理のレシピが知りたいと言われたら喜んでお教えしますし、漁師さんとの繋がりができたら別の地域へ店舗展開できたらいいと思いますし、ここでも料理教室をやりたいし、ここで勉強した人たちが独立してもいいだろうし、ここで商品開発もしたいし、とにかくいろんな形で魚食と発酵の発信基地にしていきたいと思っています。

 

それと私は「魚の学校」という料理教室も運営していますが、そこで学んでくれた人たちや、いろいろ資格を取っても次のステップにつながらない人もいるので、そういう人たちに働いてもらうことや、活躍の場にしてもらえるような場所にしたいとも強く思います。

 

将来やってみたいことはたくさんありますが、ゆくゆくはこのお店を海外に展開したいですね。やはり、日本の食の素晴らしさを発信するために、エンターテイメントの世界でチャレンジしてみたいという思いがありますから。まずはパリでしょうか。

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【ippin記事を通して、ユーザーに伝えたいと思っているのはどんなことですか?】

 

ほかのキュレーターのみなさんは、見た目が華やかで、おもてなしや贈り物に最適なものをご紹介されていますよね。私の場合は、どちらかというと調味料など日常に密着するものや、あまり高価ではないもの、それでいて美味しいものをご紹介するようにしています。「これ美味しいから食べてみて!」と気軽に言える気遣いは素晴らしいと思うんです。

 

それと、サプライズの要素も大事だと思うので、相手が「おっ!」と驚いてくれるような意外性のあるものを選ぶようにしています。料理も同じで、一品ごとに必ず何かしら驚きや感動が欲しいと思うんです。「ふつうに美味しい」では納得できない性分なんですよ。

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「朝どれ野菜と3種の醤(ジャン)」 (950円)
古代の発酵調味料「醤(ジャン)」を付けていただく野菜を楽しむ一皿。醤はすべてオリジナルで全6種。新鮮な生野菜をディップのように醤につけて味わう

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「本日のなめろう盛り合わせ」(961円)
日替わりで3種類のなめろうの食べ比べが楽しめる。使う魚と味付けによって「同じ魚でもここまで味が変わることに驚いてほしい」と是友さん

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国際ビルの地下1階にオープンしたばかり。落ち着いた色合いの木のテーブルや椅子、温かみのある照明が、どこか懐かしく居心地の良い空間を演出

 

取材協力:にっぽんのひとさら
東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビルB1
03-3201-2878
公式サイト: http://nippon-hitosara.com

 

【プロフィール】
国内外からの客人の多い家庭で育ち、幼少より料理に慣れ親しむ。聖心女子大学日本史学部では「日本の食文化」を研究。卒業後、「銀座すしもと」で日本料理と魚料理の基礎を学ぶ。2005年より魚専門の料理教室「Ristrante 我が家」を主宰し、予約の取れない料理教室として多数のメディアに取り上げられる。2017年5月30日、東京丸の内に自身初の飲食店「にっぽんのひとさら」をオープン。

※掲載情報は 2017/06/08 時点のものとなります。

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