浮世絵と名物- 旅人に大人気!瀬戸の染飯(そめいい)

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東海道・藤枝宿 瀬戸の染飯(そめいい)

浮世絵と名物- 旅人に大人気!瀬戸の染飯(そめいい)

『東海道中五十三駅狂画 藤枝』
絵師:葛飾北斎
制作年:享和四年(1804)頃
藤枝市郷土博物館・文学館蔵
店の看板には「藤枝本町 瀬戸染飯」とあります。売り子には若い女性2人が描かれた優雅な販売風景。

瀬戸の染飯は、藤枝宿の西、瀬戸町(現在の藤枝市瀬戸、上青島付近)の立場(旅人の休憩場所)の茶店の名物でした。
戦国時代・天文22年(1553)の「参詣道中日記」に「せとのそめいゝ」という記録があるほど古い歴史があります。
染飯は十返舎一九の「東海道中膝栗毛」に登場したり、小林一茶も俳句を詠んでいるほど人気があったようです。

浮世絵と名物- 旅人に大人気!瀬戸の染飯(そめいい)

『東海道中膝栗毛 三編上』
作者:十返舎一九
刊年:享和四年(1804)
所蔵:静岡市東海道広重美術館
瀬戸の立場茶屋に弥次さん&喜多さんが登場するシーン

浮世絵と名物- 旅人に大人気!瀬戸の染飯(そめいい)

『東海道名所圖會 巻四』
作者:秋里籬島
刊年:寛永九年(1797)
所蔵:静岡市東海道広重美術館
茶屋の中でかまどの火を起こし、せいろで染飯を蒸す老婆と店先で染飯の品定めをする旅人

そもそも「染飯」って何?

聞いたことがない名前、それはもち米を蒸したものをクチナシの実で黄色く染め、せいろで蒸し、すりつぶして小判形に薄く伸ばして乾かしたもの。
クチナシは漢方薬として知られ、消炎、解熱、鎮痛などの薬効があるとされていました。クチナシの汁で染めた染飯は、旅人にとって、足腰の疲れをとる食べ物として評判が良かったそう。
西に大井川、東には宇津ノ谷峠の難所を控えていることから、染飯は携行食だったのではないかといわれます。

 

この地域では、クチナシで染めたおこわを晴れた日に炊く習慣が今も残っています。江戸時代、度重なる大井川の氾濫による重労働に耐えた農民が体を癒すのに食べたと言われています。

浮世絵と名物- 旅人に大人気!瀬戸の染飯(そめいい)

染飯(レプリカ)千貫堤・瀬戸染飯伝承館
「染飯や我々しきが青柏(そめいいや われわれしきが あおがしわ)」小林一茶(寛永4年/1792年)青々とした柏の葉に包まれた染飯。その季節感あふれる色彩の鮮やかさに一茶は心を打たれてこの句を詠んだのでしょう。

江戸時代の名物 復活

この名物を現代風にアレンジし、復活させたのが、JR東海 藤枝駅前の「喜久屋」さん。
竹の皮で包んだパッケージは瀬戸染飯伝承館で見たものとそっくりそのまま!
クチナシで染めたおこわで作ったおにぎりは、もちもちで素朴な味わいで、まるで江戸の旅人のような気分になります。

浮世絵と名物- 旅人に大人気!瀬戸の染飯(そめいい)

喜久屋の復刻染飯(左)。包み紙には「名物 瀬戸御染飯」の文字。
現在もその版木が残り、市有形文化財になっています。

※掲載情報は 2017/06/04 時点のものとなります。

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キュレーター情報

大森久美

学芸員/栄養士

大森久美

栄養学を学んだ後、武蔵野美術大学卒業。芸術学士、学芸員資格を取得。2006年特定非営利活動法人ヘキサプロジェクトを設立。2010年より現地法人ヘキサプロジェクト・ロンドン・リミテッドディレクター。美術館のキュレーションを行うかたわら、アート/デザインのワークショップなどの教育普及や、地方で伝統の技を守り続ける職人達との商品開発にも精力的に取り組む。日本文化の奥深さを伝えることをミッションに、食とアートのスペシャリストとして日本の美意識を国内外に発信中。

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